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あなたは動物型か人間型か?滝行で教わった飲食店の繁盛哲学【診断つき】

あなたは動物型か人間型か|勝光寺の滝行

2026年8月27日、私は大阪府河内長野市の山の中にいました。

滝に打たれるためです。

こう書くと「社長がまた変わったことを始めた」と思われるかもしれません。実際、出発前に何人かに話したら、全員に同じ顔をされました。修行、精神論、根性論——そういう言葉が頭に浮かぶのだと思います。

しかも、8月です。「滝行って8月でしょ。水浴びしに行っただけじゃないの?」——これも、みんなに言われました。

先に言い返しておきます。滝の水は、8月でも十分に冷たかったです。そして何より、勢いがすごい。肩に落ちてくる水には、はっきりと重みがありました。水浴びではありません。

そもそものきっかけは、私が所属している一般社団法人 これからの時代の・飲食店マネジメント協会——通称「これマネ」のイベントでした。

これマネは、飲食ビジネスの課題に向き合う経営者・専門家・コンサルタントが集まり、知見と経験を持ち寄って、実践を通じて課題を乗り越えていく共創型のプラットフォームです。勉強会もあれば、視察もある。そのラインナップのなかに、「滝行」が出てきたわけです。

でも、正直に申し上げると、私の本当の目当ては滝ではありませんでした。

滝行の前に、座学があります。そこで配られたたった2枚のプリント。これが、私がこの10年で見た「飲食店経営の教科書」のなかで、いちばん本質を突いていました。

帰りの車の中で、私はずっと同じことを考えていました。これ、うちのお客様である飲食店さんに、そのままお伝えしたい。

この記事は、その2枚のプリントと1時間半の座学を、飲食店の現場の言葉に翻訳したものです。そして記事の後半には、「あなたは動物型か人間型か?」がその場で分かる20問の診断テストを用意しました。スマホでそのままできます。所要2分です。

長い記事になりますが、飲食店を経営されている方、店長として人を預かっている方には、必ずどこかで「うっ」と刺さる箇所があるはずです。どうぞ最後までお付き合いください。

目次

河内長野の山奥にある「人間繁盛応援寺」

伺ったのは、真言宗 松尾山 勝光寺(しょうこうじ)。大阪府河内長野市日野1379。大阪市内から車で1時間ほど、細い山道を上がった先にあります。

このお寺、看板に掲げているのが少し変わっています。

人間繁盛 仕事繁昌
人間繁盛応援寺/寺修行・寺子屋塾

お寺なのに「仕事繁昌」。しかも「人間繁盛」が先に来ている。この順番に、この日1日の答えが全部入っていました。

住職は井本全海(いもと ぜんかい)さん。今回私たちが受けたのは半日コースで、当日のスケジュールは玄関のホワイトボードにこう書かれていました。

勝光寺 寺修行の当日スケジュール(人間繁盛学)
当日のホワイトボード。9:00座学/10:30読経・座禅/11:30滝行。
時間 内容
9:00〜10:30 座学(人間繁盛学)
10:30〜11:30 読経・座禅
11:30〜12:30 滝行

講座の名前は「人間繁盛学」。この日のテーマは「命と家族の尊さ」。

そして「お席に着かれましたら」として、①申し込み用紙のご記入 ②護摩木をお書き下さい ③名札(ご苗字のみ)、その後は静かにお待ち下さい——と。この最後の一行が、いい。

この日は、5人の貸切でした。上限は21名まで受け入れられるそうで、「だいたい15〜16人集まった時点で申し込みを止めている」とのこと。5人というのは、かなり贅沢な回だったわけです。

先に、この日のことをお断りしておきます

実は、私が伺った当日、井本住職は暑さで体調を崩されており、お会いすることができませんでした。座学を教えてくださったのは、副住職です。

ですのでこの記事では、プリントや資料に書かれていることは「住職は〜と書かれています」、その日その場で伺った話は「副住職は〜」と、分けて書きます。「人間繁盛学」という教えそのものを組み立てられたのは井本住職で、副住職はそれを、住職に代わって私たち5人に手渡してくださいました。

ちなみに、ホワイトボードの横に掛かっていた日めくりには、こうありました。

批判はしたけれど 自分にできるだろうか

このあと座学で出てくる「他人には検事、自分には弁護士」の話と、見事に呼応しています。まだ何も始まっていないのに、もう始まっていました。

副住職が、この寺と縁を結んだ理由がまた面白い

座学の合間に、副住職がご自身の来歴を話してくださいました。これがもう、経営者としては聞き逃せない話でした。

副住職が初めてこのお寺に来られたのは平成12年。最初は檀家でも修行者でもなく、単なる手伝いだったそうです。石を一輪車で運び上げる作業を手伝った。それが縁の始まり。

決定的だったのは平成14年の6月。「イノシシ除けのトタンを張るのを手伝いに来い」と呼ばれて汗だくになった。そうしたら先代に「滝で汗を流してこい」と言われた。

入ってみたら、めちゃくちゃ気持ちよかった。

「こんな気持ちのいいものはやめられん」と、それから毎朝、滝を受けてから仕事に出るようになった。ただし「ただ受けているだけでは水遊びになる」と作法を教わり、やがて得度し、今に至る——。

私はこの話を聞きながら、商売のことを考えていました。

トタンを張る手伝いに行っただけの人が、28年後、その寺で修行者を迎える側に立っている。

縁というのは、狙って作れるものではない。でも、呼ばれたときに行くかどうかは自分で決められる。汗をかきに行くかどうかは、自分で決められる。私たちの商売も、たぶん同じです。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」——ここでいう敵とは、人間のことである

座学は、孫子の一節から始まりました。

敵を知り己を知れば百戦危うからず
すべての原点は人であり、すべての源は人間関係である

副住職はこう続けます。「生き方や自己を変革するためには、まず人間という生き物の本質・本性(動物性)をよく知ることである」と。

そのうえで、こう投げかけられました。

「人間ほど、よく分からないものはない」

理由は5つ挙げられていました。

  1. 二面性がある
  2. 本音と建前を使い分ける
  3. よく見せようとカモフラージュする
  4. 理屈より気分を優先する
  5. 人によって価値観(個性)が違う

飲食店をやっていれば、この5つは全部、思い当たるはずです。面接では「長く働きたい」と言った子が3日で来なくなる。常連さんが理由も言わずに来なくなる。あんなに褒めてくれたお客様が、ネットには辛口のクチコミを書く。

人が分からないから、商売が難しい。

そして、井本住職はここで一つの提案をされています。プリントには、こう書いてあります。

そこで、これは私のアイデアですが、有機的で一体のモノである人間という生きものを、無理に動物性人間性とに分けて、動物性のモノサシで人間をみると、意外に良く見えてくる。

これが、この日いちばんの発明でした。

あなたはエンジンか、ハンドルか

住職の物差しは、とてもシンプルです。人間を、2つに割る。

動物性 人間性
由来 先天的(生まれつき) 後天的(習慣・高める努力)
正体 本能・本質・本性 意識・価値観・心
身体でいうと 肉体 精神
車でいうと エンジン ハンドル・アクセル・ブレーキ

ここが肝心なところです。

エンジンだけの車は、暴走します。ハンドルだけの車は、動きません。

プリントには、こう言い切ってあります。

動物性と人間性が共に大きく、そしてバランスがとれている人が、器も大きく存在感があり魅力的です。その様な真の自己を実現している人こそ「人間繁盛」で、最終目標は「人間立派」です。

プリントには、縦軸に人間性、横軸に動物性をとったグラフが載っています。両方が10なら100。片方が5、もう片方が5なら25。掛け算なんです。足し算ではない。

だから、どんなに謙虚で優しくても、エンジンが弱ければ商売は伸びない。逆に、どんなに数字を追いかける力があっても、ハンドルが効かなければ、人が離れて商売は続かない。

そして、この2つを45組の対比で並べたのが、2枚目のプリント——「あなたは動物型か人間型か」という一覧表でした。

ほんの一部だけご紹介します。

動物性 人間性 住職の解説
6 自利(じこちゅう) 利他(たこちゅう) 自分さえ良ければという自己中心から、他人も良かれという「他こうちゅう」になることが課題
10 生存本能 存在願望 最も強いものが生存欲、最も満たされていないのが存在感
18 検事 弁護士 人は誰でも、他人には検事、自分には弁護士になる
24 他責 自責 動物性は責任転嫁(他責)、人間性は自己の責任にする(自責)。自責が成功の鍵
33 店主体 客主体 店は客の為にあるか、店は己の為にあるか。さてあなたの店は?
35 儲ける商人 儲かる商人 お金を追いかけるか、人を追いかけるか。お金は人の後についてくる

「18 検事と弁護士」のところで、会場が少しざわつきました。

他人のミスは厳しく裁くのに、自分のミスには必ず事情がある。

心当たりのない経営者は、たぶんいません。私にも、あります。

この日いちばん救われたのは「動物性を大肯定しなさい」だった

座学が進むなかで、私がいちばん深く息を吐いたのは、ここでした。

プリントにはこう書いてあります。

動物性 大肯定 ⇒ 自己嫌悪・自己否定・罪悪感からの開放。元気が出る

つまり住職は、動物性を悪者にしていないのです。むしろ「大いに肯定しなさい」と言う。

これ、経営者にはものすごく効きます。

私たち経営者は、自分の中の欲深さを、どこかで恥じています。もっと儲けたい。人に認められたい。あの店には負けたくない。人手が足りない日に「なんで自分ばかりが」と思ってしまう。そういう自分を、夜中に思い出して落ち込む。

住職の答えは明快でした。

それがあなたのエンジンです。消すな。

本能の方が理性より圧倒的に強く、本能の生かし方が人生のカギ

必要なのは、エンジンを止めることではなく、ハンドルとブレーキを付け足すこと。人間性は後天的、つまり習慣と努力で後から大きくできるもの。ここに希望があります。

飲食店に置き換えるなら、こうなります。

  • 「儲けたい」——大肯定。だからこそ原価と人件費を1円単位で見る
  • 「負けたくない」——大肯定。だからこそ隣の店ではなく去年の自分に勝ちにいく
  • 「褒められたい」——大肯定。だからこそ、まずスタッフを褒める側にまわる

エンジンはそのまま。ハンドルを、あとから足す。

貯金型か、借金型か——この日いちばん実務に効いた話

さて、ここからが本題です。座学のなかで、私が最もメモを取ったのがこの話でした。

住職の定義は、たった一行です。

相手の気分を良くしたら貯金、悪くしたら借金。

人と会う。話す。すれ違う。そのたびに、私たちは相手の心の口座に、貯金しているか、借金しているかのどちらかである、と。

そして人間は2種類に分かれる。

借金型人間(take型) 貯金型人間(give型)
姿勢 先に求める 先に与える
口ぐせ 自分は何を得られたか 相手の気分を良くできたか
結果 味方が減る 味方と応援者が増える

プリントの言葉で、私が手帳に書き写したのがこれです。

魅は与によって生じ、求によって滅する。
自力は有限、他力は無限。

自力は有限。ここ、飲食店の社長さんには痛いほど分かる話だと思います。自分ひとりが厨房に立てる時間は決まっている。自分ひとりが回れる店舗数は決まっている。自力には天井がある。

でも、他力には天井がない。応援してくれる人が増えれば、その分だけ商売は伸びる。そして応援してくれる人を増やす唯一の方法が、先に相手の気分を良くしておくことだというわけです。

副住職は、これを商売の場面に落とし込んでくれました。

  • お客様に喜んでいただけたら貯金。だからリピーターになる
  • 気分を悪くさせたら借金。だから1回で終わる
  • 良いものを安く売ることも貯金である

これを聞いて、私は自社のことを思いました。当社はぐるなびさんの運用代行をはじめ、飲食店さんのWeb集客のお手伝いをしています。集客とは、要するに来店前に貯金をしておくことではないか、と。

写真1枚、クチコミ返信1本、営業時間の1文字。あれは全部、まだ会っていないお客様に対する事前の貯金です。逆に、営業時間が古いままのページは、来店前に借金を作っている。

一円もかけずにできる貯金——「無財の七施」(勝光寺では九施)

では、どうやって貯金するのか。

ここで出てくるのが、仏教でいう無財の七施(むざいのしちせ)です。お金がなくてもできる7つの施し。勝光寺では、住職が独自に2つ足して「九施」にしています。この2つが、また実に経営者向けでした。

順にご紹介します。飲食店の現場の言葉に置き換えながらいきます。

① 眼施(げんせ)——まなざしの施し

思いやりのある、温かく優しい眼差しで相手を見つめること。

目は口ほどにものを言う。目は心の状態を最も表している。心の窓とも呼ばれ、目はごまかしが利かず、嘘はつけません。人間立派な人の目は澄んでおり、ピカッと光って輝いています。

ホールに立ったときの目つき。厨房からホールを見るときの目つき。言葉より先に、目が届いています。

② 和顔悦色施(わがんえっしきせ)——笑顔の施し

資料の言葉を借りれば「笑顔こそ人間関係の最高の潤滑油」。

ここで、飲食業の人間なら誰もが知っている例が出てきました。

マクドナルドの「スマイル0円」。コストがかからず、なおかつ最先端である。

さらに、こう続きます。何の武器も持たない赤ちゃんが、教えられてもいないのに、にこっと笑う。あの笑顔があるから、親は愛情が湧いて、必死に育てようと思う。笑顔は、人間にとって最初にして最強の生存戦略なのだ、と。

「スマイル0円」を、単なるネタではなく戦略として説明されたのは、私は初めてでした。

③ 言辞施(ごんじせ)——言葉の施し

あなたのこの言葉で、私は結婚しました。
社長のあの言葉で、私はこの会社に決めました。

一言で人が変わることは、しばしばある。人生を変えてしまうこともある。

資料は、ここで耳の痛い質問を投げてきます。

奥様が洋服を新調したり、新しいバッグや靴を買ったり、髪型を変えたときに、すぐ気づいて言葉をかけているでしょうか。

会場の男性陣が、一斉に下を向きました。私も、その一人です。

そして続く一言が、この日の急所でした。

人間は、存在感に飢えています。

声をかけるという行為は、「私はあなたを意識していますよ」「あなたは私にとって大切な人ですよ」という意思表示なのだ、と。

——これ、そのままスタッフの離職対策です。人が辞める理由は、給料やシフトだけではない。「ここにいる自分は、誰にも見られていない」と思ったときに、人は辞めます。

④ 身施(しんせ)——体を使った施し

体を使って手伝う、お世話をする、困っていることを助ける。準備や後片付けに協力する。ボランティアはその最たるもの。

忙しい日に、社長が皿を下げに動いているか。それだけの話です。

⑤ 心施(しんせ)——心の施し

相手を思いやる心そのもの。プリントでは、ここが四角で囲まれていました。他の施しは、すべてここから出てくるからでしょう。

⑥ 床座施(しょうざせ)——席を譲る施し

自分の席を、必要としている人に譲る。

飲食店なら、これは席の采配そのものです。ご高齢のお客様をどこに通すか。お子様連れをどこに通すか。予約で埋まった日に、どの席を空けておくか。

⑦ 房舎施(ぼうしゃせ)——場所を提供する施し

雨宿りの軒先を貸す。場所を開く。

私はここで、地域のお店のことを考えました。町内会の会合に部屋を貸す。学生に自習の場を貸す。すぐ売上にはなりません。でも、それが根になる。

⑧ 耳施(じせ)——住職が加えた「聞く」施し

ここからの2つが、住職ご自身が加えられたものです。

耳施は、しっかりと相手の話を聞くこと。相手の意見や考えを、じっくり聞く。

そして住職は、資料のなかでこう告白されています。

私はいまだに、この施しが苦手です。
これができていなかったので、社員や息子のやる気を失わせてきました。

会場が静まりました。

何十年もこのテーマを説いてこられた住職ご本人が、「自分はこれが苦手だ」と書く。しかも、その結果として社員と息子のやる気を奪ってきた、と。

最後まで相手の話を聞くことなく、途中で口を挟んで自分の意見を主張してしまう。

——ここで手が止まった経営者は、私だけではなかったと思います。

住職は、こうまとめておられます。話を聞くという行為は、相手の存在を認めるという行為である。人は、悩みや主張を「聞いてもらえただけ」で納得することがある。だから、人の上に立つ者ほど、この施しが重要なのだ、と。

⑨ 頭施(とうせ)——住職が加えた「知恵」の施し

もう一つ、住職が加えられたのが頭施。適切な知識・ノウハウ・情報を、惜しみなく与えることです。

そして、この説明が私にはいちばん刺さりました。

お金や物とは違い、これは使っても減ることがありません。逆に、使えば使うほど増えるものなんです。

私たちの仕事は、まさにこれです。飲食店さんに、Web集客のノウハウをお渡しする。出し惜しみするほど、自分の中でも古びていく。渡すほど、磨かれて増えていく。

知恵は、出しても減らない唯一の在庫です。

金儲けより、人儲け

座学の後半、プリントに大きな木の絵が出てきます。

実(み)が金銭。根っこが人間。

住職の言葉はこうです。

根っこづくりがしっかりできたら、木が茂って、実がたくさんなる。金儲けしようと思ったら、まず人儲け

そして、この日いちばん有名(らしい)フレーズが出てきます。

知人 十万円/友人 百万円/親友 千万円/信者 一億円

人的財産を、金額に置き換えたものです。名刺交換しただけの知人が10万円分の資産だとすれば、あなたのことを本気で信じてくれている「信者」は1億円の資産である、と。

飲食店に翻訳すると、こうなります。

住職の分類 飲食店でいうと
知人 一度来店してくれたお客様
友人 数回来てくれるお客様
親友 月に何度も来てくれる常連さん
信者 友人を連れてきて、勝手にお店を宣伝してくれる人

新規客を1人増やすコストと、信者を1人育てるコスト。どちらが安いかは、飲食店をやっていれば身に染みているはずです。

住職はこう締めています。

お金を追いかけるか、人を追いかけるか。お金は、人の後についてくる。
金儲けを手段とし、人儲けを目的にする会社が栄え続ける(継栄)。

「経営」ではなく「継栄」。継いで栄える。この当て字も、その場でメモしました。

職場は「四つの大きな場」である

もうひとつ、私が持ち帰りたかった型がこれです。会社・職場・お店は、4つの場である、と。

意味 飲食店では
道場 鍛えて高める場 技術も人間性も、ここで鍛える
漁場 欲しいものが獲れる場 収入も、やりがいも、外ではなくここにある
劇場 主役として演じる場 スタッフ一人ひとりが主役になれる舞台
愛場 いたわり、励まし合う場 しんどい日に、声をかけ合える場所

住職は「苦労の山 ⇒ 宝の山」と書かれていました。

飲食店は、しんどい仕事です。立ち仕事で、土日が休めなくて、クレームもある。でも、その4つが揃っている職場は、実は世の中にそう多くありません。うちの店は、この4つのうちどれが弱いか。そう考えると、明日やることが変わってきます。

商売繁昌の5大条件

経営の話は、こう整理されていました。まず前提として——

経営(継栄)は至難の技、格闘技である。
人間は、利他より自利の方が圧倒的に強い。

そのうえで、近江商人の「三方よし」(売り手よし・買い手よし・世間よし)。さらに、会社・社員・顧客・取引先・株主の「五方よし」まで広げると、これはそもそも成り立ちにくい、と、住職は正直に書かれています。

だからこそ、プリントにはこう書いてあります。

経営(仕事)は成り立ちにくい事なので、苦痛 ⇒ 快感(成功)

成り立ちにくいことを成り立たせるから、成功したときに快感がある。逆に言えば、苦痛のない商売には、快感もない。

そのうえで示されたのが、商売繁昌の5大条件です。

  1. 熱くなるものに特化する——全員が熱くなれる商品に絞る
  2. オンリーワンの構築——「ここにしかない」を作る
  3. 貯金型商法——相手に喜んでもらう。だからリピーターになる
  4. 右腕の確保——経営者にとって、これが一番大事で一番大変
  5. 人材育成——社員も幹部も経営者も、育て続ける

3番目に「貯金型商法」が入っているのが、この教えの一貫したところです。集客テクニックではなく、人間関係の貯金が商売の条件として並んでいる。


【診断】あなたは動物型か人間型か?

ここまでお読みいただいたところで、ひとつ、お試しください。

住職がプリントで示された45項目の対照表を、当社が飲食店の現場の場面に置きかえて20問にした「お試し版」です。スマホでそのままできます。所要は約2分。回答はあなたの端末の中だけで計算され、どこにも送信されません。

先に、正直に申し上げておきます。これは本物ではありません。

45項目そのものと、その一つひとつに住職がつけられた解説は、あの座敷で、直接受け取るものです。ここにあるのは、その入口の入口。「ちょっと気になるな」と思っていただくためのお試しだと思ってください。

そして繰り返しますが、動物型が悪くて人間型が良い、という話ではありません。動物性はあなたのエンジンです。ここで見ているのは、いまのあなたのハンドルの効き具合だけです。

お試し20問・約2分

あなたは動物型人間型か?

大阪・勝光寺の井本全海住職が説かれる「動物性と人間性」の物差しを、飲食店の現場の場面に置きかえたお試し版です。本物は45項目あり、住職の解説つきで座学のなかで受け取ります。どちらが良い・悪いではありません。正直に、直感で選んでください。

※回答はあなたの端末の中だけで計算されます。どこにも送信されません。

ちなみに、私自身の結果はこうでした。

55%|プラマイ型(振り子の真ん中)

動物性と人間性が拮抗している、いちばん人間らしい位置です。調子がいい日は与えられて、疲れている日は求めてしまう。それが普通です。住職の「振り子の法則」でいえば、大きく振れる人ほど大きく戻れます。調子の悪い日に何をするかを決めておくだけで、ここから一気に貯金型へ寄ります。

ど真ん中でした。正直に言うと、もう少し貯金型に寄っているつもりでいたので、これはこたえました。

そして刺さったのが、最後の一行です。「調子の悪い日に何をするかを決めておく」。忙しい日、疲れている日ほど、人は与える側から求める側にまわります。私はそこに、何を置いておくかを決めていませんでした。これが、いまの私の宿題です。

やってみると分かりますが、同じ人でも、時期によって結果が変わります。副住職も「何ヶ月かしてまたチェックすると、違う答えが出てくる」とおっしゃっていました。忙しい時期ほど動物性に振れる。当たり前です。だから定期的に測る価値があります。

そして——たった20問のお試しでこれだけ考えさせられるなら、本物は、行って確かめてみてください。

45項目を上から順に、自分の鉛筆で丸をつけていく。その一項目ずつに、解説を入れていただける。あの時間だけは、この画面では再現できません。


そして、滝に打たれた

座学が終わり、本堂へ移動して読経、そして座禅。

座禅は1回20分が基本だそうです。「20分だと短いと言う人が多いので、30分やったこともある」と副住職。私はその20分のあいだ、言われたとおり、生まれてから死ぬまでの自分の時間を眺めていました。

副住職は、人の一生をロウソクに例えられました。火がついた時が生まれた時、火が消えた時が死ぬ時。いま自分は、そのロウソクのどのあたりを燃やしているのか。

そして、いよいよ滝です。

大阪・勝光寺の滝行の滝(お多福大神)
勝光寺の滝。石柱には「お多福大神」。(2026年8月27日 筆者撮影)

これが、実際に打たれてきた滝です。左右の石柱にしめ縄が渡してあり、右の柱には「お多福大神」。右手の岩の上には不動明王がお祀りされていて、灯明がともっています。写真で見ると細く見えますが、下に立つと音がまったく違います。

作法は、想像よりずっと丁寧でした。

  1. まず、不動明王の前で手を合わせ、小皿の塩で身体を清める
  2. 一段下がったところで、水を足元から順にかけて身体を慣らす
  3. 滝の前に立ち、願い事を声に出して宣言する(家内安全、商売繁昌——なんでもいい)
  4. 気合を入れるため、「やるぞ!」と声を出す。何度でもいい
  5. 右手 → 右足 → 左手 → 左足の順に、水へ入れていく
  6. 身体の向きを変え、足元に気をつけながらゆっくり下がる
  7. 肩に滝が当たった瞬間から、合掌して般若心経を一巻

副住職が何度も注意されていたのが、「頭から突っ込むな」でした。

たまにいるそうです。「俺はすごいことをやっているんだ」と、いきなり頭から滝に入ろうとする人が。危ないので、副住職が身体を張って止める。

私は、この注意がいちばん経営の話に聞こえました。

気合と無謀は違う。作法を守った上で全力を出すから修行になるのであって、作法を飛ばして頭から突っ込むのは、ただの事故です。新しい業態、新しい出店、新しい設備投資。私たちは、しばしば頭から突っ込みます。

そして——実際に滝に入ってみて分かったこと。

冷たいのは、最初の数秒だけです。

肩に落ちてくる水の重さと音で、頭の中の言葉が全部止まります。売上のことも、来週の予定も、考えられなくなる。ただ「いま」しかなくなる。

上がった後、身体の芯から熱が戻ってきて、笑いが出ました。苦痛 ⇒ 快感。プリントに書いてあったあの矢印を、身体で理解した瞬間でした。

住職の「振り子の法則」も、同じ話でした。

  1. 左に振れたら右に振れる
  2. マイナスに振れたらプラスに振れる
  3. 大きく振れたら、大きく振れる
  4. ものごと総て両振(対)で存在し、片振りなし

大きく苦しんだ人は、大きく喜べる。振れ幅が、そのまま人間の器になる。滝の下でこれを言われると、理屈ではなく身体で入ってきます。

帰り際のサプライズ──「本棚から一冊、選んでください」

滝から上がって着替え、温かい飲み物をいただいて、そろそろ帰り支度かというところで、副住職からひと言。

「あちらの部屋に本がたくさんあるので、好きなものを1冊、選んで持って帰ってください」

勝光寺の図書室の本棚
壁一面の本棚。ここから1冊、選ばせていただける。

行ってみて、声が出ました。壁一面です。人間学、心理学、生き方、教育、経営——このお寺に集められてきた本が、びっしり並んでいます。座学であれだけの話が出てくる理由が、この一部屋で分かりました。

そのなかで、私の目に飛び込んできたのがこれでした。

プロデューサーは次を作る(小室哲哉×中谷彰宏)
いただいた一冊。中身も見ずに即決した。

『プロデューサーは次を作る ビジネス成功22の方程式』小室哲哉 × 中谷彰宏。

当社はちょうど、自社レーベルを立ち上げたところです(強火 -TSUYOBI-|リリース曲はこちらから聴けます)。そこへ、私が心から尊敬している小室哲哉さんが書かれた、ビジネスの本。

中身も見ずに、即決しました。

読み終えたら、このブログで感想を書かせていただこうと思います。

——そして、帰りの車の中で気づきました。これ、座学で教わった頭施そのものです。

知識やノウハウは、お金や物とは違い、使っても減ることがない。逆に、使えば使うほど増える。

このお寺は、それを本ごと手渡してこられる。最後の最後まで、貯金型でした。

「余生を楽しむ」ではなく「与生を愉しむ」

最後に、住職の資料にあった言葉をご紹介して終わります。

まず、人生は三毛作である、と。

時期 呼び名 役割
0〜20歳 勉強人 学ぶ
20〜60歳 仕事人 働く
60歳〜 使命人 人生の本番

60歳からが本番。しかも住職は、そこで一文字を入れ替えます。

余生を楽しむ ⇒ 与生を愉しむ

余った生ではない。与える生である。

そして、こう言われました。人は誰でも、お父さんとお母さんから、二百五十兆分の一という確率で選ばれてここにいる。それだけの可能性を、全員が最初から持っている。あとは、それに気づいて、生かすかどうかだけだ、と。

締めくくりに引かれたのが、マザー・テレサの言葉でした。

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか人格になるから。
人格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。

思考 → 言葉 → 行動 → 習慣 → 人格 → 運命。

このつながりは、人間性が後天的であるという最初の話と、きれいに一本でつながります。生まれつきは変えられない。でも、言葉と習慣は、今日から変えられる。

そして、いちばん実行しやすい一言も、座学で教わりました。

「ありがとう」の反対語は、「当たり前」です。

友達がしてくれたこと、家族がしてくれたこと、スタッフがしてくれたこと。全部「当たり前」だと思っていたら、感謝の気持ちは一生出てこない。難しいことは何もない。「当たり前」と思いかけたら、「ありがとう」に言い換える。それだけです。

おわりに——社長ひとりで行くか、スタッフ全員で行くか

1時間半の座学と、数分の滝行。持ち帰ったものを、先に3つだけ整理しておきます。

  1. 自分の動物性を、まず大肯定する。儲けたい・負けたくないは、あなたのエンジンです。恥じる必要はありません。
  2. 今日会う人の気分を、ひとつだけ良くする。眼施でも、笑顔でも、「髪切りました?」の一言でも。それが貯金です。
  3. 話を、最後まで聞く。住職ですら苦手だと書かれた施しです。これができるだけで、店は変わります。

この3つは、滝に行かなくても今日からできます。

ただ、実際に行ってきた人間として正直に申し上げると——行った方が、圧倒的に速いです。

経営者ひとりで行く

社長業は孤独です。相談する相手がいないまま、最終判断だけが毎日降ってくる。

あの滝の下では、頭の中の言葉が全部止まります。売上も、来週の予定も、辞めそうなあの子のことも、数秒間だけ考えられなくなる。その静けさは、机の上では絶対に手に入りません。

そして座学の45項目は、自分の器を測る物差しです。誰にも見せなくていい。ひとりで丸をつけて、ひとりで下を向いて、ひとりで帰りの車で決意すればいい。それだけの価値があります。

スタッフみんなで行く

そしてもうひとつ、私が強くおすすめしたいのがこちらです。お店のスタッフ全員で行く。

飲食店の研修というと、接客ロープレか衛生管理になりがちです。でも本当に効くのは、同じ体験と同じ言葉を全員が持つことではないでしょうか。

この1日は、研修として見ると、実によくできています。

プログラム 研修として得られるもの
座学 「貯金型/借金型」「無財の九施」という、全員が使える共通言語が手に入る
読経・座禅 20分、自分とだけ向き合う。普段いちばん省略されている時間
滝行 全員が同じことを「やり切った」という共有体験が残る

とくに大きいのは、滝の前では役職が消えることです。社長も、店長も、入って3か月のアルバイトも、同じように冷たくて、同じように「やるぞ」と声を出す。あの数秒間に上下関係はありません。

そして翌日から、店で「それ、借金型やで」と笑いながら言い合えるようになる。共通言語を持ったチームは強いです。

参加人数の上限は21名。一店舗のスタッフ全員が、ちょうど入る規模です。

勝光寺(しょうこうじ)のご案内

寺院名 真言宗 松尾山 勝光寺(人間繁盛応援寺/寺修行・寺子屋塾)
住職 井本 全海(いもと ぜんかい)
所在地 〒586-0085 大阪府河内長野市日野1379
電話/FAX TEL 0721-60-0021 / FAX 0721-60-0028
公式サイト www.syokoji.jp
半日コースの流れ 9:00 座学 → 10:30 読経・座禅(20分) → 11:30 滝行(12:30 終了)
定員 21名(15〜16名集まった時点で締め切られることが多いので、お申し込みはお早めに)

持ち物は、タオルとバスタオル、着替えがあれば十分です。滝行のあとは軽く走って身体を温めてから着替える流れになっていて、そのあとは温かい飲み物をいただきながら休憩できます。本がずらりと並んだ部屋もあり、そこから1冊選んで持ち帰らせていただけます。

なお、私が伺ったのは8月末でした。参加者の方に聞いたところ、冬場の滝行はまるで別物だそうです。最初に体験するなら、暖かい時期をおすすめします。

日程や参加条件は変わることがありますので、お申し込みの前に必ず公式サイトかお電話でご確認ください。

【余談】帰りに寄った、地元で評判の蕎麦屋「万作」

滝を上がり、身体の芯まで温まったところで、河内長野の「麺坊 万作」へ。地元で名の知られたお蕎麦屋さんです。

麺坊 万作の暖簾(大阪府河内長野市)
「ようこそ ようこそ」。入る前から、もう始まっている。

暖簾を見た瞬間、私は思わず笑ってしまいました。

「ようこそ ようこそ」

一日じゅう「言辞施」の話を聞いてきた、その直後です。まだ一言も交わしていない相手に、暖簾の一枚で先に声をかけている。これ以上ないくらい分かりやすい、"入る前の貯金"でした。

麺坊 万作の二八そば
二八そば。細く角が立っている。

いただいたのは二八そば。細く角の立った麺を手繰ると、滝行のあとの身体にすっと入ってきます。堪能しました。

麺坊 万作のカツ丼
カツ丼。滝行のあとの身体に、ちょうどよかった。

そして、カツ丼も。玉子でとじたカツに青葱がのって——あの日の消耗には、これくらいがちょうどよかった。

飲食店のお手伝いを仕事にしていると、こういうお店に出会うたびに思います。繁盛しているお店は、必ずどこかで先に与えている。万作さんの場合、それは暖簾に染め抜かれた、あの六文字でした。

河内長野まで足を運ばれるなら、滝と一緒に、ぜひ。


商売は、住職の言葉を借りれば「至難の技、格闘技」です。成り立ちにくいことを、それでも成り立たせようとしているのが、私たち飲食店に関わる人間です。

だからこそ、苦痛のあとに快感がある。

もし少しでも心が動いたなら、ぜひ一度、あの水の下に立ってみてください。ひとりでも、全員でも。頭の中の言葉が全部止まる数秒間は、経営者にとって、たぶん一番贅沢な時間です。

最後に──この滝行を企画してくださった方へ

今回の滝行を企画し、私たちを河内長野まで連れて行ってくださったのは、株式会社杉の屋 代表取締役の杉野原佑治さんです。

大阪・堺で炭火焼鳥「杉の屋」を営まれています(深井本店・なかもず店・百舌鳥八幡駅前店・北花田店)。焼き鳥ひとすじ、20年。

杉野原さんが書かれているnoteは、「調べても出てこなかったことを、全部書いていく」という一文から始まります。炭、蓄熱、輻射熱といった火入れの技術から、飲食店経営のリアルまで。20年、炭と火と鶏を相手にしてきた人にしか書けない文章が並んでいます。飲食店に関わっておられる方は、一度のぞいてみてください。

思えば、こういう場を「やりましょう」と言い出して、日を組んで、人を集めてくださる方こそ、いちばん先に与えている人です。この記事に書いてきた貯金型とは、こういう方のことを言うのだと思います。

杉野原さん、ありがとうございました。


取材協力・出典: 真言宗 松尾山 勝光寺(大阪府河内長野市日野1379/住職 井本全海)
本記事は、2026年8月27日の寺修行(半日コース)に参加した際の座学および配布資料の内容を、参加者である筆者が飲食店経営の文脈で再構成したものです。当日、井本住職は体調を崩されてご不在で、座学は副住職にご担当いただきました。「動物性と人間性」の対照表および「無財の九施」は勝光寺・井本全海住職によるものです。診断テストの設問は、その考え方をもとに当社が独自に作成しました。記事中および記事上部の写真は、いずれも当日に筆者が撮影したものです。


㈱デリシャスノーツでは、飲食店さまのWeb集客(ぐるなび・食べログ・Googleビジネスプロフィールの運用代行、ホームページ制作)をお手伝いしています。「うちの店の"貯金"が、お客様にちゃんと届いているか見てほしい」というご相談は、お問い合わせフォームよりお寄せください。

あなたは動物型か人間型か|勝光寺の滝行

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