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オリオンビールの歴史と全銘柄年表|1957年沖縄の創業から東証プライム上場まで

オリオン THE DRAFT の缶が並ぶ壁と、ひまわり

沖縄の居酒屋の暖簾をくぐって、いちばん最初に口をつくのは「とりあえずオリオン」。あの一杯には、戦後の沖縄が背負ってきた事情と、七十年近く積み上げてきた商品開発の履歴が、まるごと溶け込んでいます。

私は飲食店の集客支援を仕事にしていますので、酒の話は「うまいか、まずいか」だけでは終われません。一本のビールの値段は、税制と資本と物流の合計で決まるからです。とくに2026年10月1日は、沖縄の酒類にとって半世紀に一度の分岐点になります。沖縄の酒に長く適用されてきた酒税の軽減措置が、ビールについて完全に終わるのです。この記事を公開する2026年8月28日から数えて、あと1か月あまりしかありません。

そこで今回は、オリオンビールという会社を、創業から今日まで、銘柄の年表とセットで徹底的に追いかけます。会社史だけを並べても仕方がないので、記事の背骨には「どの年に、どんな名前のビールが、どんな種類で出て、いまどうなっているか」の一覧表を据えました。あわせて、ラガーとエールの違い、発泡酒と新ジャンルという言葉の正体、暑い土地のビールがなぜスッキリしているのかまで、一気に整理します。

そしてもう一つ、最初にはっきりさせておきたいことがあります。「オリオンビールはアサヒビールの子会社」というのは、事実ではありません。この一点だけでも、読んでいただく価値があると思っています。

目次

この記事で分かること

  • オリオンビールの資本関係が「いつ・誰が・何パーセント」だったのか、創業から2026年3月末までの年表
  • アサヒビールとの関係は資本支配ではなく包括的業務提携であること、その中身
  • 2019年のMBO(野村キャピタル・パートナーズとカーライル)と、2025年9月の東証プライム上場までの6年間
  • 1957年、米国統治下の沖縄でなぜビール会社が生まれたのか
  • 「オリオン」という名前が公募で決まった経緯と、三ツ星の由来
  • 1972年の本土復帰にともなう酒税軽減措置の中身と、2026年10月1日の廃止まで
  • 2026年10月の全国的な酒税一本化(ビールは減税、発泡酒・新ジャンル・チューハイは増税)
  • オリオンが発表した2026年10月1日からの価格改定と、飲食店が今やるべき確認
  • ラガーとエール、ピルスナー、黒ビール、クラフトビールの違い
  • 酒税法上の「ビール」「発泡酒①②③」「新ジャンル」「その他の発泡性酒類」の区分
  • 暑い土地のビールがどう設計されているか、やんばるの水と沖縄県産大麦の話
  • 主要銘柄の発売年表(1957年〜2026年・6つの時代別テーブル)
  • ザ・ドラフト、ザ・プレミアム、ザ・ダーク、いちばん桜、75BEER、麦職人、サザンスター、WATTA、クリアフリーなど個別ブランドの成り立ち
  • 消えていった銘柄たち
  • 県内シェア83.8%という数字の中身と、飲食店5,800店のサーバー網
  • 樽生をおいしく出すための5原則(飲食店の方向け)
  • 台湾・米国・英国へ、沖縄ブランドをどう外へ持ち出しているか
  • 名護工場とオリオンハッピーパーク、ホテル事業とジャングリア沖縄
  • 直近の連結業績と中長期経営方針

まず結論から。オリオンビールは「アサヒの子会社」ではない

スーパーの棚で「アサヒオリオン ザ・ドラフト」という缶を見た方は多いはずです。あるいは、沖縄の居酒屋で「アサヒスーパードライ」を頼んだら、缶や樽に「オリオンビール株式会社製造」と書いてあって驚いた、という方もいるでしょう。この二つの光景があるので、「オリオンはアサヒの傘下なのだろう」と思ってしまうのは、まったく無理のないことです。

しかし、事実は違います。オリオンビール株式会社は2025年9月25日に東京証券取引所プライム市場へ上場した独立の上場会社(証券コード409A)であり、アサヒビール株式会社はその大株主の一社にすぎません。連結子会社でも持分法適用会社でもありません。

2026年6月18日に提出された第69期(2025年4月1日〜2026年3月31日)の有価証券報告書によれば、2026年3月31日現在の大株主上位は次のとおりです。

順位 株主名 所有株式数 持株比率
1 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 4,172,900株 9.87%
2 アサヒビール株式会社 4,125,200株 9.76%
3 近鉄グループホールディングス株式会社 4,119,200株 9.74%
4 株式会社沖縄銀行 588,200株 1.39%
5 株式会社琉球銀行 588,200株 1.39%
6 琉球海運株式会社 588,200株 1.39%
7 オリオンビール従業員持株会 505,500株 1.19%
8 ドウガン パトリック ジョン 380,200株 0.89%
9 株式会社プレミアムウォーターホールディングス 366,900株 0.86%
10 株式会社日本カストディ銀行(年金特金口) 359,400株 0.85%

1位の信託銀行は、投資信託などの名義上の受け皿です。実質的な事業パートナーとしての大株主は、2位のアサヒビール(9.76%)と3位の近鉄グループホールディングス(9.74%)ということになります。9.76%は、会社を支配できる比率ではありません。

ついでに言えば、沖縄銀行・琉球銀行・琉球海運という県内企業が肩を並べて名を連ねているのがこの会社の特徴です。オリオンビールは、沖縄の中で育ち、沖縄の資本と関係を保ちながら、東京市場に出ていった会社なのです。

「アサヒオリオン ザ・ドラフト」の正体

では、あの「アサヒオリオン」という表記は何なのか。これは2002年から続く包括的業務提携にもとづく、二本立ての取り決めです。有価証券報告書には、この提携に関する重要な契約として次の二つが明記されています。

  1. 沖縄県および鹿児島県奄美群島を除く日本において、アサヒビール株式会社が「アサヒオリオン ザ・ドラフト」等を販売する契約
  2. 沖縄県において、オリオンビール株式会社が「アサヒスーパードライ」等の製造販売ライセンスの供与を受ける契約

つまり、本土ではアサヒの販売網がオリオンを運び、沖縄ではオリオンの工場がスーパードライを造るという、相互乗り入れの関係です。資本の上下ではなく、販路と製造能力の交換なのです。オリオン側から見れば、全国に張りめぐらされた大手の量販店ルートを、自前で作らずに使える。アサヒ側から見れば、沖縄という距離の遠い市場に、鮮度の高い商品を届けられる。互いに合理的な取引です。

なお、沖縄県外のオリオンブランドでも、業務用(飲食店向け)のビール類とRTD(チューハイなど)は、オリオンが自社で販売しています。アサヒを通すのは「県外の量販店向け」です。ここは細かいようで、飲食店を経営されている方には効いてくる違いなので、覚えておいてください。

会社の基本データ(2026年8月時点)

項目 内容
社名 オリオンビール株式会社(ORION BREWERIES, LTD.)
設立 1957年5月18日(前身:沖縄ビール株式会社)
本社 沖縄県豊見城市字豊崎1番地411(オリオン美らSUNオフィス/豊崎ライフスタイルセンターTOMITON内)
代表者 代表取締役社長 兼 執行役員社長CEO 村野 一
資本金 5億6千万円
上場 東京証券取引所プライム市場(証券コード409A、2025年9月25日上場)
事業 酒類清涼飲料事業/観光・ホテル事業
工場 名護工場(沖縄県名護市東江2-2-1、敷地面積229,467平方メートル)
連結従業員数 352名(臨時雇用者251名は外数/2026年3月31日現在)
連結売上高 29,713百万円(2026年3月期)
連結子会社 オリオンホテル株式会社、株式会社石川酒造場、オリオン沖映合同会社
持分法適用関連会社 アサヒオリオン飲料株式会社

ミッションは「沖縄から、人を、場を、世界を、笑顔に。」。コアバリューには「なにくそやるぞ」「共存共栄」「まくとぅそーけーなんくるないさー」「いちゃりばちょーでー」「チャンプルー文化」「報恩感謝」が並びます。企業理念に方言がそのまま入っている会社は、そう多くありません。「まくとぅそーけーなんくるないさー」は「正しいことをしていれば、なるようになる」という意味の言葉です。

資本関係の年表──いつ・誰が・何パーセント

ここが今回いちばん丁寧に調べた部分です。オリオンビールの資本構成は、時期によってまるで別の会社かと思うほど動いています。公式発表・適時開示・有価証券報告書で確認できたものだけを、年表にしました。

時期 出来事 誰が何パーセント
1957年5月18日 沖縄ビール株式会社を設立 資本金5,000万円(軍票B円)。有価証券報告書では「資本金42万ドル」と表記
1959年6月 オリオンビール株式会社へ商号変更
1968年9月 増資 資本金90万ドル
1973年5月 増資(本土復帰後・円建てへ) 資本金3億10万円
1982年6月 増資 資本金3億6千万円
2002年4月 アサヒビール株式会社と包括的業務提携覚書を締結 アサヒビールが株式を取得。2019年1月時点で72,000株・所有割合10.00%の筆頭株主
2018年8月3日 買収の受け皿会社オーシャン・ホールディングス株式会社を設立 野村キャピタル・パートナーズ第一号投資事業有限責任組合が51.0%、CJP MC Holdings, L.P.(カーライル)が49.0%
2019年1月23日 MBO(マネジメント・バイアウト)の一環として公開買付け(TOB)を公表。オリオンビール取締役会は賛同・応募推奨を決議 買付価格1株79,200円。買付予定数の下限は418,504株(所有割合58.13%)
2019年3月 TOB成立。オーシャン・ホールディングス株式会社の子会社となる アサヒビールは保有全株72,000株をTOBに応募したうえで、買収会社に発行済株式総数の10%程度を出資
2022年9月 株式会社石川酒造場の株式を追加取得し完全子会社化
2022年12月 オーシャン・ホールディングス株式会社などを吸収合併(オリオンビールが存続会社) 持株会社が消え、オリオンビール本体に株主が直接ぶら下がる形に
2023年2月 従業員持株会への第三者割当増資 資本金378.2百万円
2024年6月10日 近鉄グループホールディングス株式会社と資本業務提携 近鉄GHDが両ファンドから株式を取得し、発行済株式の約10%を保有
2024年6月10日以降(上場申請書類記載) 提携直後の株主構成 NCAPファンド39.70%/CJP MC Holdings 38.15%/アサヒビール10.13%/近鉄GHD 10.12%
2025年8月21日 上場承認・株式売出しの取締役会決議 NCAPファンド39.61%/CJP MC Holdings 38.06%/アサヒビール10.11%
2025年9月25日 東京証券取引所プライム市場へ上場。両ファンドは売出しにより主要株主から外れる NCAPファンド0%/CJP MC Holdings 0%/アサヒビール10.11%で筆頭株主に
2026年3月31日 第69期末の大株主 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)9.87%/アサヒビール9.76%/近鉄GHD 9.74%

この表を一言でまとめるなら、「創業家と県内資本の会社 → アサヒが1割を持つ会社 → 投資ファンド2社の完全子会社 → 上場して分散株主の会社」という四段階です。約70年のあいだに、所有のかたちが根本から三度書き換わっています。

1957年〜2001年──同族と県内資本の時代

創業から半世紀近く、オリオンビールの株式は金融商品取引所に上場しておらず、しかも譲渡制限が付いていました。2019年のTOB公表資料には「当社株式は創業から今日に至るまで金融商品取引所に上場しておらず」「譲渡制限付株式であったことから、その売却機会が極めて乏しく」という趣旨の記述が残っています。

これは、地方の有力企業にはよくある構造です。株主は創業家、その資産管理会社、取引先、県内の金融機関、従業員。株を売りたくても買い手を自由に探せない。逆に言えば、外部から買収される心配がない。安定と引き換えに、資本の流動性を捨てた形です。

2019年の資料からは、創業者の親族6名が全株を持つ資産管理会社「株式会社幸商事」が61,496株(8.54%)を保有し、その幸商事がオリオンビールの本社不動産や倉庫を所有して賃貸していたことも読み取れます。会社と創業家の資産が、不動産を通じて絡み合っていたわけです。

2002年──アサヒビールとの包括的業務提携

2002年4月、アサヒビールと包括的業務提携覚書を締結。同年11月には「アサヒオリオン ザ・ドラフト」が全国展開を開始し、翌2003年5月からは名護工場での「アサヒスーパードライ」ライセンス生産が始まります。

この提携が、オリオンにとってどれほど大きかったか。1990年に首都圏、1992年に関西へと自力で缶ビールを送り出してきたものの、全国の量販店の棚を地方の一社が自前で取りにいくのは、途方もない体力を要します。アサヒの営業網に乗ることで、その壁を一気に越えたのです。

一方の沖縄県内では、オリオンがアサヒ商品も扱う総合酒類の売り手になりました。県内のビール販売シェアが83.8%という数字(後述)には、このライセンス商品や仕入商品の販売分が含まれています。「オリオンか、他社か」ではなく「オリオンの営業車が両方運ぶ」という構図が、沖縄では成立しているのです。

なお、有価証券報告書はこの提携について、契約が失効した場合のリスクも正直に書いています。契約1が失効すれば県外でのアサヒオリオンブランドの販売が減り、契約2が失効すればスーパードライの製造販売による利益が減る、と。20年以上続く関係ですが、契約は契約です。会社側も「マネジメント層から担当者層まで階層ごとに対話の場を定期的に設定し、二社間の良好な関係の維持に努める」と明記しています。

2019年──MBOとファンド傘下入り

2019年1月23日、オリオンビールは「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」を公表しました。買付者は、前年8月に設立されたオーシャン・ホールディングス株式会社。その株主は、野村キャピタル・パートナーズ株式会社が運営する「野村キャピタル・パートナーズ第一号投資事業有限責任組合」が51.0%、カーライル・グループが運用する「CJP MC Holdings, L.P.」が49.0%でした。

買付価格は1株79,200円。買付予定数の下限は418,504株(所有割合58.13%)で、これは発行済株式総数720,000株の3分の2にあたる480,000株から、応募しない予定の幸商事保有分61,496株を差し引いた数です。買付上限は設定せず、完全子会社化を目指す設計でした。

この案件で特徴的なのは、少数株主の意思を尊重する仕掛けが明示されていたことです。下限株数は、利害関係のない株主が持つ株式の過半数(いわゆるマジョリティ・オブ・マイノリティ)を超える応募が必要になるよう設定されていました。上場していない会社のTOBで、ここまで手続きを整えるのは丁寧なやり方だと思います。

資金面では、NCAPファンドから110億6,700万円、カーライル・ファンドから106億3,300万円の出資に加え、みずほ銀行と野村キャピタル・インベストメントから合計477億円を上限とする買収ローンを受ける計画でした。報道ベースでは、買収総額は最大約570億円とされています。

アサヒビールは「売って、また買った」

ここが誤解されやすいところなので、丁寧に書きます。

アサヒビールは、TOBに際して保有していたオリオン株72,000株(10.00%)の全部を応募する契約を結び、いったん手放しました。そのうえで、同じ日付で株式引受契約を結び、取引実行後に買付者(オーシャン・ホールディングス)に対して発行済株式総数の10%程度に相当する出資を行うことに合意しています。さらに、NCAPファンド・カーライル・ファンドとのあいだで株主間契約を結び、取締役の指名権についても取り決めました。

つまり、「いったん現金化して、新しい器に10%で入り直した」のです。オリオンとの提携関係を続ける意思が明確に示された動きでした。だからこそ、2025年の上場でファンドが全株を売り切ったあと、アサヒビールが自動的に筆頭株主になったわけです。

2019年〜2022年──持株会社の解体

ファンド傘下に入ったあとの動きは、教科書どおりの再編でした。

  • 2020年4月 子会社オリオンサポート株式会社を吸収合併
  • 2020年5月 本社を浦添市から豊見城市の自社所有不動産(豊崎ライフスタイルセンターTOMITON)へ移転
  • 2020年7月 自社ECサイトを開設
  • 2022年9月 石川酒造場を完全子会社化
  • 2022年12月 オーシャン・ホールディングス、オーシャン・ウェーブズ・ホールディングス、そしてあの株式会社幸商事を、オリオンビールを存続会社として吸収合併

2022年12月の三社同時吸収合併が、この6年間のハイライトだと私は見ています。買収の受け皿会社を消して株主を本体に直付けし、同時に創業家の資産管理会社も飲み込んで本社不動産と会社を一体化した。上場に向けて、資本と資産のねじれを全部ほどいたわけです。

2024年6月──近鉄グループホールディングスとの資本業務提携

2024年6月10日、近鉄グループホールディングスが、NCAPファンドとCJP MC Holdingsからオリオン株の一部を取得し、発行済株式の約10%を保有しました。新株の発行ではなく、既存株主からの譲り受けである点がポイントです。ファンドにとっては出口の一部、オリオンにとっては事業パートナーの獲得でした。

提携の中身は、観光・ホテル事業が中心です。プレスリリースには次の4本柱が挙げられています。

  1. 両社が沖縄で保有するアセットの活用についての協働(不動産の共同事業開発の検討)
  2. 近鉄グループが持つホテル運営ノウハウの提供(専門人材の派遣、予約システムの活用検討、会員プログラムの導入検討)
  3. 観光客の送客・受入に関する協働(近畿日本ツーリスト、クラブツーリズムなどとの連携)
  4. 近鉄グループの流通・ホテル販売チャネルを通じた協働(近鉄百貨店などでの取扱い拡大、グループのホテル・レストラン・ビアガーデンでの取扱い)

近鉄グループは1974年に「沖縄都ホテル」を那覇市首里丘陵に開業し、2018年まで40年以上その経営に当たってきました。「沖縄で長くホテルをやってきた会社」を相手に選んだということです。2025年5月には、オリオンホテル モトブ リゾート&スパが「都ホテルズ&リゾーツ」への加盟を発表しています。

2025年9月25日──東証プライム上場

2025年9月25日、オリオンビールは東京証券取引所プライム市場に上場しました。証券コード409A。沖縄県内の製造業としては初の新規株式公開とされています。

同日付の「主要株主である筆頭株主及び主要株主の異動に関するお知らせ」によれば、株式売出しにより、NCAPファンド(39.61%)とCJP MC Holdings(38.06%)はいずれも保有ゼロとなり、アサヒビール(41,252個の議決権、10.11%)が第3位から第1位の筆頭株主に繰り上がりました。2025年8月21日現在の発行済株式総数は40,813,400株です。

報道によれば、公開価格850円に対して初値は1,863円、初日終値は1,950円。初日終値ベースの時価総額は約795億円でした。2019年の買収総額が最大約570億円と報じられたことを思えば、ファンドの6年間はきちんと結果を出した、ということになります。

【要確認】として残しておきたい点

  • 【要確認:アサヒビールが2002年に取得した株式の比率と取得時期の正確な数字】 2019年1月のTOB資料では「72,000株・所有割合10.00%」と確認できますが、2002年時点で何株をいくらで取得したのかは、今回の調査では一次資料に当たれませんでした。
  • 【要確認:2019年TOBの最終的な応募株数と成立日の正確な日付】 沿革では「2019年3月」とだけ記載されています。公開買付報告書に当たる必要があります。
  • 【要確認:近鉄グループホールディングスの取得価額】 プレスリリースに金額の記載はありません。
  • 【要確認:2026年3月末より後の株主構成】 本記事の株主データは2026年3月31日現在です。それ以降の大量保有報告書の提出状況は確認していません。

1957年、なぜ沖縄にビール会社が生まれたのか

ここからは時計の針を戻します。オリオンビールの前身、沖縄ビール株式会社が設立されたのは1957年(昭和32年)5月18日。沖縄がまだアメリカの施政権下にあった時代です。

沖縄県公文書館の解説によれば、1950年代の沖縄は「朝鮮戦争の特需と、軍事基地建設などの基地収入、スクラップブームなどの影響で好景気」にあり、住民の生活水準の向上にともなって「ビールや洋酒などの嗜好飲料の輸入も増加」していました。

つまり、ビールの需要はすでにあった。ただし、そのビールは全部よそから運ばれてきていたのです。稼いだお金が、飲むたびに島の外へ出ていく。ここに問題意識を持った人がいました。

具志堅宗精という人

創業者は具志堅宗精(ぐしけん・そうせい)。オリオンビールの公式サイトは、この会社の始まりを次のように記しています。

当社は、昭和32年5月18日、具志堅宗精氏(故人)が中心となり、資本金5,000万円(軍票B円)で創立しました。戦後沖縄の社会経済復興には第二次産業を興さなければいけないという創設者の強い意志が実を結び、今では沖縄を代表する製造業へと発展を遂げました。

沖縄県公文書館の記述はもう少し具体的で、「宮古群島政府知事を経て、実業界入りしていた具志堅宗精氏は、沖縄の社会経済復興には第2次産業を興すべきであるという志から、沖縄初となるビール会社を創立」したとあります。有価証券報告書の事業説明では、「郷土の若者に勇気と希望を与えたい」との思いから立ち上げた会社、と書かれています。

「観光と基地と輸入で回っている経済に、ものづくりの柱を一本立てる」。これが創業の動機でした。会社のコアバリューの筆頭に「なにくそやるぞ」が入っているのは、この出発点があるからです。

資本金5,000万B円とは、いくらだったのか

「資本金5,000万円(軍票B円)」という表記は、いまの感覚だとピンときません。B円(B型軍票)は、当時の沖縄で流通していた通貨です。

実は、公式サイトの記述から換算比率を逆算できます。ビール名の公募で出された懸賞金は「1等B軍票1万円(83ドル40セント)」でした。1万÷83.4≒120。つまり1ドル=120B円です。これを資本金5,000万B円に当てはめると約41.7万ドル。有価証券報告書の沿革が「資本金42万ドル」と記しているのと、きれいに符合します。

ちなみにB円は1958年9月にドルへ切り替えられ、1972年の本土復帰で円に変わります。創業から15年のあいだに、この会社は通貨を二度またいだのです。1968年9月に「資本金90万ドル」、1973年5月に「資本金3億10万円」と沿革に記されているのは、その名残です。

なぜ名護だったのか

工場の建設地は、沖縄本島北部の名護(当時は名護町、現在の名護市)に決まりました。1958年11月、名護工場が竣工します。

ビールは、原料の9割以上が水です。仕込みにも、洗浄にも、冷却にも、大量の良質な水が要ります。オリオンビールの公式サイトは、名護工場を「山紫水明の地」と表現し、製造工程の説明では「やんばるの良質な水」を使うと明記しています。水を求めて北へ行った、という単純明快な理由です。

結果として、この立地は思わぬ副産物を生みました。名護工場は「毎年大勢の方が来場する名護のランドマーク」になり、2011年に開業した見学施設オリオンハッピーパークは2018年11月に来場者100万人を達成します。工場が観光資源になったのです。

沖縄県名護市にあるオリオンビール名護工場の外観
オリオンビール名護工場。出典: ウィキメディア・コモンズ「File:Orionbeer.jpg」(ライセンス: PD-author/作者による著作権放棄。クレジット表示は「沖縄発!役に立たない写真集」)取得日 2026-08-18

「オリオン」という名前は、公募で決まった

社名の由来は、この会社を語るうえで欠かせないエピソードです。公式サイトの記述を、順を追って整理します。

  • 1957年11月1日、「大衆に親しみやすく呼びやすい名称を」という方針で、新聞紙上に懸賞金付きの募集広告を掲載
  • 賞金は1等がB軍票1万円(83ドル40セント)、2等が3,000円(25ドル)、3等が2,000円(16ドル70セント)。それぞれ1名
  • 賞金が高額だったこともあり、応募は2,500通あまり、名称は823種類
  • そのうち810種類がふるいにかけられ、審査の結果「オリオン」が1位に
  • 1958年1月、ビール名を「オリオン」に決定
  • 1959年6月、会社名も「沖縄ビール株式会社」から「オリオンビール株式会社」へ変更

選定理由として公式サイトが挙げているのは、次の三点です。

  1. オリオン座は南の星であり、沖縄のイメージに合っていること
  2. 星は人々の夢やあこがれを象徴すること
  3. 当時沖縄を統治していた米軍の最高司令官の象徴が「スリースター」であったこと

三つ目が、あの三ツ星のロゴにつながります。オリオン座の三ツ星と、当時の統治者の階級章の三ツ星。二重の意味を持たせた命名だったわけです。時代を映す、なんとも重層的なネーミングだと思います。

ここで私が飲食店の経営者の方にお伝えしたいのは、「名前を客に決めてもらった」という事実そのものです。1957年の段階で、まだ一滴も売っていない商品の名前を、これから買ってくれる人たちに決めさせた。2,500通の応募は、そのまま2,500人の当事者意識になります。オリオンビールが「県民のビール」と呼ばれる土台は、発売より前にできていたのです。

この発想は、いまも生きています。2025年7月にリニューアルした「オリオン ザ・プレミアム」は、パッケージデザインを一般公募しました。約600点の応募から最終候補10点を選び、県民投票を実施。合計約16,000票が集まり、最多得票のデザインが採用されています。公式サイトはこの取り組みを、「オリオンビール」の名前もかつて一般公募で決まったという原点に立ち返ったものだと説明しています。70年近く前のやり方を、そのまま現代に持ってきたわけです。

1959年5月17日、沖縄全島一斉発売

オリオンビールが世に出たのは1959年5月17日。公式の「ドラフトビールの歴史」ページには、こう書かれています。

オリオンビールは1959年5月17日に沖縄全島一斉に発売されました。季節は若夏、ビールにとって最高のシーズンの到来。名護工場から那覇へ華やかに出荷されました。普段は静かな名護の街も一躍ビールの街の変貌しお祭り気分に沸きかえりました。

記念すべき第一号はゴールドに輝くラベルだったそうです。

「島ぐゎー」を覆したローラー作戦

ところが、船出は順風満帆ではありませんでした。同じページには、続けてこう書かれています。

「島ぐわー」のイメージを払拭するための打開策として桜坂を中心に店を一軒ずつ回るローラー作戦が行われ徐々に消費者の皆様に受け入れられるようになりました。

「島ぐゎー」は、島でつくった小さなもの、という含みのある言い方です。輸入品のほうが上等だという空気のなかで、地元産のビールは最初、格下に見られた。それを覆したのが、那覇の歓楽街・桜坂を一軒ずつ回る営業でした。

私はこの一行を、飲食店支援の仕事をしている人間として、何度も読み返しました。ブランドは広告で立つのではなく、一軒ずつの現場で立つ。1959年のオリオンがやったことは、2026年のあなたのお店がやるべきことと、本質は何も変わりません。うちの店の名物を、まず近所の10人に飲ませる。感想を聞く。翌週また行く。それしかないのです。

1961年の雑誌に掲載されたオリオンビールの広告
1960年ごろのオリオンビール広告(雑誌「オキナワグラフ」1961年2月号/オキナワグラフ社)。出典: ウィキメディア・コモンズ「File:Advertisement of Orion Breweries circa 1960.jpg」(ライセンス: PD-Japan-organization/日本国内でパブリックドメイン)取得日 2026-08-18

1960年、びん詰め生ビールという発明

創業3年目の1960年7月、名護工場はびん詰め生ビールを発売します。ここが、いまの「オリオン ザ・ドラフト」の起点です。有価証券報告書にも「1960年に誕生した『オリオン・ザ・ドラフト』」と明記されています。

公式サイトの解説によれば、名護を中心に販売してみたところ「新鮮さ」が評判となり、そこから各地域の歓楽街へ広がっていきました。面白いのは初期の販売方法で、びん詰め生ビールは当初、ラベルを貼らず、輪ゴムのついた商標シールをびんの首につけて売っていたそうです。しかもそのシールを1枚2セントで買い取ることで、回収と販促を同時にやった。1960年の沖縄で、すでに販促キャンペーンの原型がありました。ラベル付きのびん詰め生ビールが登場するのは1962年です。

なお、ここでいう「生ビール」とは熱殺菌をしていないビールという意味です。公式サイトも「生ビールとは『熱殺菌をしていない』という意味です」とわざわざ注記しています。「樽から出てくるから生」ではありません。缶でも瓶でも、熱処理していなければ生ビールです。この誤解、飲食店の現場でもいまだに根強いので、ぜひスタッフ教育の小ネタに使ってください。

ついでに、「ドラフト(draft)」という言葉の意味も押さえておきましょう。オリオンビールの公式ページは「『樽からビールを引き出す』という意味です」と説明しています。ドラフト=引き出す。樽から引き出して注ぐ、あの動作そのものが商品名になっているわけです。

ビアフェストは1962年から

1962年8月、「第1回 レディに贈るオリオンビールの夕べ」が開催されます。1967年以降は「オリオンビアフェスト」に改称され、1989年6月には初の屋外開催へ。いまや沖縄の夏の風物詩です。

2023年には4年ぶりの開催が実現し、2024年、2025年、2026年と続いています。2026年は9月5日・6日に沖縄市のコザ運動公園で「オリオンビアフェスト2026 in コザ」が予定されています。さらに2014年10月には「オリオンビアフェストIN台湾」、2024年6月には高雄でも開催されました。60年以上続く自社イベントを、そのまま海外進出の入口にしているのは見事な資産活用です。

2026年4月には、沖縄・瀬長島の野外特設会場で「Orion Island Waves -Beachside Music Festival-」も初開催されました。ビアフェストとは別軸の、音楽フェス型のイベントです。

1972年5月15日、沖縄が日本に復帰した

オリオンビールの歴史を語るうえで、避けて通れないのが酒税です。ここは推測を交えず、国税庁と内閣府と財務省の公表資料に沿って書きます。飲食店を経営されている方には、この章がいちばん実利のあるところだと思います。

1972年5月15日、沖縄が日本に復帰しました。オリオンビールの沿革にも「昭和47年5月 沖縄が日本に復帰」の一行が、商品や工場の記録と並んで刻まれています。同年12月、本社を浦添市城間へ移転しています。

復帰前の沖縄の酒税は、なぜ低かったのか

国税庁の税務大学校が公開している「沖縄復帰と酒税」(NETWORK租税史料)に、明快な説明があります。

酒税について見ると、復帰前の沖縄経済は、現在と同じく観光が中心のため、観光客を誘致し、あるいは米軍関係者の消費を促すためにも、他の間接諸税と同様に本土よりも低く設定されていました。

つまり、観光客と米軍関係者に飲んでもらうために、酒の税金が安く設定されていたのです。これが復帰前の前提です。

復帰時に設けられた5年間の軽減措置

同じ資料は、復帰にあたっての判断をこう記しています。

いきなり本土の酒税法をそのまま適用することは、沖縄の酒類産業だけでなく、小売店や飲食店などの経営を圧迫し、ひいては沖縄経済の発展にも大きな影響を与えかねないという懸念から、復帰後、五ヶ年にわたる軽減措置が取られることとなりました。

根拠となったのは「沖縄の復帰に伴う国税関係法令の適用の特別措置等に関する政令」です。軽減率の推移は次のとおりでした。

期間 本土の酒税に対する軽減
復帰の日(1972年5月15日)〜1973年5月14日 60%軽減
その翌年 50%軽減
その翌年 40%軽減
その翌年 30%軽減
その翌年 20%軽減

ここで重要なのは、この軽減が「沖縄県内で消費される酒」に限られていたという点です。国税庁の資料はこう書いています。

ただし、本土へ販売する酒類に関しては、沖縄の酒類産業保護の目的から外れること、及び本土の酒類業者を圧迫する可能性があることから、軽減の対象とはなりませんでした。

この線引きは、その後ずっと維持されます。県外に出荷するオリオンビールには、軽減措置は効いていません。後で見る「県外・海外の売上比率を上げてきた」という経営戦略の意味が、ここで分かります。県外を伸ばすということは、軽減がなくても戦える体質をつくるということだったのです。

余談ですが、酒税証紙という制度がありました

同じ国税庁の資料には、いまではほとんど知られていない仕組みの記録も残っています。

復帰にともない、「沖縄の復帰に伴う国税関係法令の適用の特別措置等に関する省令」によって、沖縄県内の酒類製造場から出荷されるビール以外の酒類には酒税証紙を貼ることになりました。証紙は開栓部の封印として使われ、正規に課税された酒かどうかを見分ける手段でした。しかも、県内流通用と本土移出用で様式が違ったのです。

製品一つひとつに証紙を貼る作業はあまりに煩雑で、1974年にまず本土での貼付が廃止。翌年には沖縄でも焼酎乙類以外が廃止され、1976年には焼酎乙類も廃止されました。本土復帰の直後、沖縄の酒瓶には、県内向けと本土向けで違う証紙が貼られていた。この事実だけで、当時の複雑さが伝わってきます。

5年で終わるはずが、50年続いた

国税庁の資料は、その後の経緯をこうまとめています。

酒税証紙制度は廃止されますが、軽減措置は五ヶ年の軽減期限を迎えた時に、酒造業者への影響を考慮して延長されました。以後、酒税の軽減措置は軽減期限が迫るたびに延長されましたが、令和4(2022)年に復帰から50年が経つのを機に、沖縄の酒造業界の自立を促すため、ビールは5年後、泡盛は10年後に、段階的に廃止されることが決まりました。

5年間の経過措置として始まったものが、期限が来るたびに延長され、50年続いた。これが事実関係です。良い悪いの評価は、この記事の役目ではありません。ただ、50年という時間の長さは、制度が経済にどれだけ深く組み込まれるかを物語っています。

2022年、段階的廃止が決まった

令和4年度税制改正で、沖縄県産酒類に係る酒税の軽減措置は、延長後の適用期限の到来をもって廃止することが決まりました。内閣府沖縄振興局の資料(2024年度行政事業レビュー)に、軽減率の引き下げスケジュールが図示されています。

制度の対象は、次の三つをすべて満たす酒類です。

  1. 沖縄県の区域内にある酒類の製造場のうち
  2. 復帰前から酒類を製造していた製造場において製造された酒類で
  3. 当該区域内にある酒類の製造場から移出されるもの(県外へ移出する目的のものを除く)

「復帰前から酒類を製造していた製造場」という条件があるので、新設の醸造所には適用されません。1958年に竣工した名護工場だからこそ、対象だったわけです。

内閣府の資料によれば、この軽減措置の適用対象事業者は48者(泡盛46者、ビール・その他2者)でした(2023年8月時点)。ビール・その他はたった2者です。

ビールの軽減率は、こう下がった

時期 ビール等の軽減率
〜2023年9月30日 20%軽減
2023年10月1日〜2026年9月30日 15%軽減
2026年10月1日〜 廃止(軽減なし)

オリオンビールの有価証券報告書は、この件を「酒税の変更により業績が影響を受けるリスク」として、発生可能性:高、発生時期:短期(2026年、2032年)、影響度:中と自ら評価しています。上場企業が自社の最大級の外部要因を、こうして数値付きで開示しているわけです。

泡盛については、事業者の規模に応じて段階的に軽減率が下がり、2032年5月15日に廃止となります。オリオンの連結子会社である株式会社石川酒造場は泡盛メーカーですから、こちらの時計も動いています。

同じ日に、全国の酒税も一本化される

ここが今回いちばんややこしいところです。2026年10月1日には、沖縄の軽減措置の廃止と、全国的なビール系飲料の税率一本化が同時に起こります。

国税庁が2023年8月に公表した「発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き」から、350ミリリットル換算の税額推移を整理します。

区分 〜2020年9月 2020年10月〜 2023年10月〜 2026年10月〜
ビール(および麦芽比率50%以上の発泡酒) 77.00円 70.00円 63.35円 54.25円
発泡酒(麦芽比率25%以上50%未満) 62.34円 62.34円 58.49円 54.25円
発泡酒(麦芽比率25%未満) 46.99円 46.99円 46.99円 54.25円
いわゆる新ジャンル 28.00円 37.80円 46.99円(品目が発泡酒に) 54.25円
チューハイ等(その他の発泡性酒類でホップ等を原料としないもの) 28.00円 28.00円 28.00円 35.00円

1キロリットル当たりで言えば、ビール系飲料はすべて155,000円に統一されます。チューハイ等は80,000円から100,000円へ引き上げ。あわせて、その他の発泡性酒類の税率を適用できるアルコール分の上限が、10度未満から11度未満に変わります。

この一本化は、平成29年度の税制改正で決まったものです。「味も見た目も似ているのに税負担がまるで違う」という状態を解消するため、3段階の経過措置を経て、2026年10月に着地する。2026年10月1日は、日本の酒税にとって10年がかりの改革のゴールなのです。そこに、沖縄の50年がかりの経過措置の終わりが重なる。歴史的な日と言っていいと思います。

オリオンビールは2026年10月1日から価格を改定する

2026年6月11日、オリオンビールは「酒税改正及び酒税軽減措置終了に伴う商品価格改定について」を発表しました。原文はごく短いものです。

オリオンビール株式会社は、酒税改正ならびに酒税軽減措置終了に伴い、ビール類(当社がライセンス製造するアサヒスーパードライ含む)およびRTD各商品の生産者価格を改定させていただくこととなりましたので、お知らせいたします。
1. 改定日 2026年10月1日(木)
2. 主な対象商品 ビール類・RTD各商品
※なお、一部商品は価格改定の対象外となっております。

方向性については、地元紙が報じています。琉球新報および沖縄タイムスの報道によれば、ビールは値下げ、発泡酒や新ジャンル、RTD(チューハイなど)は値上げ。対象は約50品目で、酒税の減税相当分は350ミリリットル当たり約9円、増税相当分は約7円とされています。上の税率表と突き合わせると、ビールが63.35円→54.25円で9.1円の減、チューハイ等が28.00円→35.00円で7.00円の増ですから、報道の数字とぴたりと合います。

そして、飲食店の方に知っておいていただきたいのはここです。琉球新報の報道によれば、オリオンは復帰特別措置の終了によるコスト上昇分を自社で吸収し、価格に反映させない方針だとされています。

沖縄県内向けビールの税額を、単純計算してみる

ここは私の試算であることを明示したうえで書きます。公表されている税率と軽減率をそのまま掛け合わせると、こうなります。

  • 2026年9月まで(県内向けビール):181,000円/kl × (1−0.15)=153,850円/kl = 350ml当たり約53.85円
  • 2026年10月から(県内向けビール):155,000円/kl = 350ml当たり54.25円

差し引き、県内向けビールは350ml当たり約0.4円の増。一方、県外向けビールは軽減がもともと効いていないので、63.35円→54.25円で9.1円まるまるの減となります。「全国は減税、沖縄県内はほぼ横ばい」という構図です。それでもオリオンが県内でもビールを値下げするのであれば、その差は自社負担ということになります。

【要確認:この試算の前提】 軽減率を経過的な税率に対して掛けるという前提で計算しています。実際の課税計算の詳細は、所轄税務署または取引のある卸売業者にご確認ください。本記事の数字を根拠に価格を決めないでください。

飲食店の方へ。10月1日までに確認すべき5つのこと

ここは実務です。あなたのお店では、次の5点を9月中に片づけておいてください。

  1. 卸からの新しい価格表を取り寄せる。「ビールは下がる」と聞いて安心してはいけません。あなたの店の主力がハイボールやサワーなら、原価は上がります。品目別に見てください。
  2. ドリンクメニューの原価を品目単位で引き直す。生ビール、瓶ビール、発泡酒・新ジャンル、缶チューハイ、店で作るサワー。それぞれ動きが逆方向です。
  3. 値付けを「据え置き」で逃げない。ビールが下がった分でチューハイの上がり分を吸収する、という判断はあり得ます。ただし、それを意識してやるのと、気づかず放置するのはまったく別物です。
  4. メニューの表記を点検する。「発泡酒」「新ジャンル」といった表示が変わる商品があります。オリオンの「サザンスター」は、本来の表示が「発泡酒②」ですが、税務署の承認を受けて「リキュール(発泡性)②」と表示された商品が流通しています。承認期間は2026年9月30日まで。10月以降は表示が切り替わります。
  5. 10月1日をまたぐ在庫の扱いを決める。9月末に大量に仕入れるべきか、絞るべきか。値下がりする品目は10月以降に、値上がりする品目は9月中に。単純ですが、規模によっては効きます。

この5点は、オリオンに限らず、すべてのビールメーカーの商品に共通します。2026年の秋は、日本中の飲食店にとってメニューを見直す年です。やらない理由がない。ぜひ、この機会に丸ごと組み直してください。

ここで整理。ビールの「種類」とは何のことか

年表に入る前に、言葉を揃えておきましょう。「ラガー」「エール」「ピルスナー」「発泡酒」「新ジャンル」「クラフト」。全部よく聞く言葉ですが、実はまったく別の物差しで分けられた言葉です。ここを混ぜると話が通じなくなります。

物差しは大きく三つあります。

  1. 発酵のしかたで分ける物差し(ラガー/エール)
  2. ビアスタイルで分ける物差し(ピルスナー、ペールエール、IPA、ヴァイツェン、セゾンなど)
  3. 酒税法の区分で分ける物差し(ビール/発泡酒/その他の発泡性酒類)

順番に見ていきます。

ラガーとエールは、酵母と温度の違い

いちばん大きな分け方が、これです。

ラガーは「下面発酵」。低い温度(およそ5〜10度前後)でゆっくり発酵させ、酵母が最後にタンクの下のほうに沈む性質を持ちます。時間をかけて低温で熟成させるため、雑味が少なく、クリアでキレのある味になりやすい。ドイツ語の「lagern(貯蔵する)」が語源です。日本の大手ビールの大半、そしてオリオン ザ・ドラフトも、このラガーです。

エールは「上面発酵」。高めの温度(およそ15〜25度前後)で短期間に発酵させ、酵母が液面に浮き上がってきます。発酵中に生まれる香り成分(エステル)が残りやすいので、果実のような香り、複雑な風味が出やすい。イギリスやベルギーの伝統的なビールの多くがエールです。

ものすごく雑にまとめれば、ラガーは「引き算のビール」、エールは「足し算のビール」です。ラガーは余計なものを取り除いてクリアさを追い、エールは香りや個性を積み上げる。オリオンの主力がラガーで、クラフトシリーズ「75BEER」にエールが多いのは、この性質の使い分けです。

ピルスナーは、世界でいちばん飲まれているスタイル

ラガーのなかで圧倒的多数を占めるのがピルスナーです。19世紀にボヘミア(現在のチェコ)のピルゼンで生まれた、淡い黄金色のラガー。世界のビールの大半はこの系統です。日本で「ビール」と言われて頭に浮かぶ、あの色と味がピルスナー系だと思ってください。

オリオンは2026年7月7日に「オリオン 75BEER ピルスナー」を発売しました。公式の商品説明によれば、オーストラリア産ホップと相性の良い特別麦芽を使い、特別麦芽由来の自然な褐色を活かして名護湾に沈む夕日をイメージした液色に仕上げたとのこと。同じ「ピルスナー」でも、素材と設計で色も香りも変わるという良い実例です。

エールの世界──ペールエール、IPA、ヴァイツェン、セゾン

飲食店のメニューでよく見る名前を、ざっと押さえておきましょう。

  • ペールエール モルトのコクとホップの香りのバランスが良い、エールの王道。オリオンの「オリオン ザ・クラフト <Pale Ale>」は、アメリカ原産ホップを主体にしたトロピカルで爽やかなアメリカンスタイルで、アルコール分5.5%、IBU(苦味価)30と公表されています。
  • IPA(インディア・ペールエール) ホップを大量に使い、アルコール度数を高めた、力強い苦味とドライな味わいが特徴。オリオンは2025年9月に「75BEER 島香るIPA」、2026年3月に「島旅トロピカルIPA」を出しています。
  • セッションIPA IPAの香りはそのままに、度数を抑えて何杯も飲めるようにしたもの。2026年7月発売の「75BEER アイランドセッションIPA」がこれで、沖縄県産アセロラのピューレを使っています。
  • ヴァイツェン(白ビール) 小麦麦芽を多く使う、ドイツ発祥のスタイル。バナナやクローブのような香りが立ちます。オリオンは2024年10月に「75BEER WEIZEN」を数量限定で出しました。
  • セゾン ベルギーの農家が夏に備えて仕込んだ、ドライでスパイシーなエール。オリオンのクラフトシリーズ第5弾が2017年9月の「Ryukyu Saison(琉球セゾン)」でした。
  • アルト ドイツ・デュッセルドルフの、銅色をした上面発酵ビール。2024年4月に「75BEER ALT」が数量限定発売されています。

IBUという単位が出てきましたが、これは苦味の強さを示す数値(International Bitterness Units)です。数字が大きいほど苦い。ピルスナーはおおむね20〜40、IPAは60を超えるものも珍しくありません。メニューに書いてあげると、お客さまの選択がぐっと楽になります。

黒ビールは「焦がした麦芽」でできている

黒ビールの黒さは、着色料ではありません。麦芽を高温で焙煎した「濃色麦芽」を使うことで、色と、コーヒーやカカオのような香ばしさが出ます。ラガーの黒(シュヴァルツ)もあれば、エールの黒(スタウト、ポーター)もあります。「黒ビール」はスタイル名ではなく、色の呼び方だということです。

オリオンは1997年6月に「オリオン黒生ビール」を出していますが、いま販売しているのは「オリオン ザ・ダーク」です。公式サイトの説明が面白いので引用します。

「オリオン ザ・ダーク」は、“いわゆる黒ビール”とはちがう。「オリオン ザ・ドラフト」のようなスッキリ飲みやすい味わいをベースに、濃色麦芽を一部使用することで、飲みやすいながらも焙煎したような豊かな香り・コクを感じられる味わいに仕上げた、新感覚のスタンダードビールです。

「濃色麦芽を一部使用」。ここに設計思想がはっきり出ています。黒くて重いビールを作るのではなく、スッキリしたラガーに焙煎の香りを足す。暑い土地で飲むことを前提にした黒、というわけです。

クラフトビールとは何を指すのか

「クラフトビール」には、日本の法律上の定義がありません。一般には、小規模な醸造所が個性を出して造るビールを指します。オリオンの場合は、名護工場内にある小規模醸造設備「Co-Labo75(コラボナゴ)」で造られるものを「特別醸造ビール」と呼んでいます。

公式サイトの説明によれば、この設備は2021年3月に「オリオンクラフトラボ co-labo75」として始動した500リットルプラント。小ロットで、仕込みから樽詰めまで醸造家が手作業で管理します。大量生産ラインでは採用が難しい製法や、こだわりの沖縄県産原料を使えるのが強みです。

特筆すべきは沖縄県産ホップへの挑戦です。オリオンは琉球大学との共同研究を進め、2022年8月に県産ホップの栽培・収穫に初めて成功しました。生産量はまだ極めて少ないものの、Pale Ale、IPA、Weizenや一部の期間限定品に一部使用されています。ホップは本来、冷涼な地域の作物です。亜熱帯でホップを育てるというのは、相当な挑戦だと思います。

なお、公式サイトは「※一部商品は酒税法上の『発泡酒』がございます」と注記しています。副原料に果汁やスパイスを使うと、酒税法上はビールではなく発泡酒になるためです。次にその話をします。

酒税法から見た「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」

ここからは三つ目の物差し、法律の区分です。味の話ではなく、税金の話だと割り切って読んでください。

麦芽比率50%の壁

酒税法上、ビールと名乗るには主に二つの条件があります。

  1. 麦芽の使用割合が50%以上であること
  2. 副原料が、政令で定められた範囲内のものであること

麦芽比率は、2018年4月の改正で67%以上から50%以上に引き下げられました。同時に副原料の範囲も広がり、果実や一定の香味料が使えるようになりました。この改正で、フルーツを使ったクラフトビールが「ビール」を名乗れるようになったのは大きな変化です。

オリオンの「SHIKUWASA BEER」は、麦芽・ホップ・大麦・米・コーン・スターチに加えてシークヮーサー果汁とシークヮーサー粉末を使っていますが、品目は「ビール」です。一方、2026年7月発売の「BEACH CHILL」は、シークヮーサー・オレンジピール・ベルガモットエキスを使っており、品目は「発泡酒②」。同じ柑橘系でも、原料の組み合わせと比率で区分が変わるのです。

発泡酒①②③という表示の意味

缶の側面に「発泡酒②」と書いてあるのを見て、「②って何だ」と思ったことはありませんか。あれは税率適用区分を示す番号です。

国税庁の手引きによれば、2023年10月の改正で、それまで「その他の醸造酒」や「リキュール」に分類されていた、いわゆる新ジャンル(第三のビール)が品目としては「発泡酒」に統合されました。ただし税率はまだ違ったので、区別のために番号を付けたわけです。

  • 発泡酒(番号なし) 従来からの発泡酒
  • 発泡酒② いわゆる新ジャンル由来のもの
  • 発泡酒③ ホップ等を使ったその他の発泡性酒類だったもの

そして2026年10月に税率が一本化されると、この番号は役目を終えます。手引きには「令和8年10月以降は『発泡酒』」と明記されています。あの謎の丸数字は、2026年秋から順次消えていく運命なのです。

ただし、ラベルの貼り替えコストを抑えるため、税務署の承認を受ければ従来どおりの表示を続けられる制度があります。オリオンの「サザンスター」の商品ページには、まさにその注記が載っています。

※この商品については、税制改正による税率等の改正を受けて、酒類の品目が本来の表示と異なる表示となっている商品が流通している場合があります。
本来の表示:発泡酒②/異なる表示:リキュール(発泡性)②/承認期間:令和8年9月30日まで

承認期間が2026年9月30日まで。つまり税制改正の前日までです。飲食店でメニューに酒類の品目を書いている場合は、10月以降の表示切り替えに注意してください。

新ジャンルは、なぜ生まれ、なぜ消えるのか

新ジャンル(第三のビール)は、税率の差から生まれた商品群です。ビールに77.00円かかっていた時代に、新ジャンルは28.00円でした。350ミリリットルあたり49円の差があれば、そこに商品が生まれるのは当然です。

作り方は大きく二つ。麦芽を使わず大豆やえんどうを発酵させるもの、そして発泡酒に大麦や小麦を原料とするスピリッツを加えるものです。オリオンの「サザンスター」「ゼロライフ」の原材料表示に「スピリッツ(大麦)」とあるのは、後者の方式だからです。

そして、この税率差が2026年10月に消える。新ジャンルという商品カテゴリーが存在する経済的理由が、なくなるわけです。各社が中身を作り替えているのは、そのためです。オリオンの場合、麦職人もゼロライフもサザンスターも、いまや品目は「発泡酒②」に揃っています。

RTD(チューハイなど)の区分

RTDは「Ready to Drink」の略で、栓を開ければそのまま飲めるアルコール飲料のことです。缶チューハイ、缶ハイボール、缶カクテルが該当します。有価証券報告書でもこの言葉が使われています。

酒税法上は「その他の発泡性酒類」のうち、ホップ等を原料としないものに当たり、品目は原材料によって「リキュール(発泡性)」「スピリッツ(発泡性)」などに分かれます。オリオンの「島チュー」を例に取ると、面白いことに同じブランドで品目が違います

  • 島チュー無糖シークヮーサー → スピリッツ(発泡性) アルコール分7%
  • 島チューシークヮーサー → リキュール(発泡性) アルコール分7%

違いは糖類の有無です。糖類を加えるとリキュール、加えなければスピリッツ。甘いか甘くないかで、法律上の名前が変わる。知っておくと、お客さまへの説明に厚みが出ます。

ノンアルコールビールテイスト飲料の話

アルコール分1%未満の飲料は、酒税法上の「酒類」ではありません。ですから正確には「ノンアルコールビールテイスト飲料」と呼ばれ、食品表示上の名称は「炭酸飲料」になります。オリオンの「クリアフリー」も、公式サイトの商品概要では名称が「炭酸飲料」です。

作り方には、発酵させてからアルコールを除去する方法と、はじめから発酵させずにビールらしい味を組み立てる方法があります。クリアフリーの原材料は「果糖ぶどう糖液糖、食物繊維(大豆食物繊維、難消化性デキストリン)、大麦、ホップ/炭酸、香料、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンC)、酸味料、苦味料、甘味料(アセスルファムK)」。アルコール分0.00%と明記されています。

公式サイトは「苦味を抑えたスッキリとした飲みやすさと、伊江島産大麦によるほのかな麦の旨みが特長」と説明し、クリアフリーとしては初の沖縄クラフトとして県産素材使用に取り組むとしています。2024年6月には第76回「ジャパン・フード・セレクション」でグランプリを受賞しました。

飲食店の方へ。ノンアルコール飲料は「運転される方」「妊娠中・授乳期の方」「体質的にお酒を受け付けない方」が同席するテーブルの単価を落とさないための商品です。4人組の1人がウーロン茶しか頼めない状態と、ビールと同じグラスでノンアルを楽しめる状態では、テーブルの空気も客単価も変わります。冷蔵庫に一種類は必ず置いてください。なお、クリアフリーは製品特性上アルコールを含まないため凍結しやすく、0度以下での保管は避けるよう公式に案内されています。

暑い土地のビールは、どう設計されているのか

ここが、この記事でいちばん書きたかった技術の話です。

「スッキリ」は結果ではなく、狙って作られている

オリオン ザ・ドラフトの公式ページは、味づくりをこう説明しています。

沖縄県産大麦を使用し、世界遺産やんばるの水で仕込むことで、爽快さと麦の旨味が両立した味わいです。ビールにとって余分な雑味の元となる成分をより多く取り除くろ過製法で、スッキリさに磨きをかけています。

注目していただきたいのは「余分な雑味の元となる成分をより多く取り除くろ過製法」という一文です。足すのではなく、引く。これが暑い土地のビール設計の中心思想です。

理屈はこうです。気温が高いと、人は喉の渇きを癒やすために飲みます。1杯目を一気に飲み干し、2杯目、3杯目といきたい。このとき、口の中に残る苦味や渋味、モルトの重さは邪魔になるのです。逆に寒い土地では、体を温め、腰を落ち着けて味わうので、複雑さやコクが歓迎されます。

本土の定番ビールと飲み比べると、オリオンは「軽い」と感じる方が多いはずです。それは物足りないのではなく、32度の屋外で、汗をかきながら、脂の乗った沖縄料理と一緒に飲むことを前提に設計されているからです。ラフテー、ソーキ、テビチ、天ぷら。沖縄の料理は油と旨味が強い。そこに濃いビールを合わせると、口の中が重くなって進まなくなります。

公式サイトが載せている消費者の声も、方向がきれいに揃っています。「喉越しが良く、飲みやすくて味もあっさりしていて飲みやすかった」「凄く飲みやすく喉越しが爽やかで美味しいです」「ごくごく飲め、爽快感があり飲みやすかった!」(2023年6月・オリオンビール調べ)。「喉越し」「爽快」「ごくごく」。この三つが、この商品の評価軸そのものです。

「一県一工場」という言い方

オリオンビールは自社の製造環境を、こう表現しています。

オリオンビールは、一県一工場というビールづくりに理想的な環境のもと、厳選した原料と確かな技術、徹底した品質管理でお客様に喜んでいただける味わいを追求。地元生まれの最高の鮮度と爽快な喉ごし、こころ解き放つうまさをお楽しみください。

「一県一工場」。うまい言い方です。全国に複数の工場を持つ大手と違い、オリオンは名護工場ひとつで沖縄県全域をまかないます。距離が近い。だから鮮度で勝てる。名護から那覇まで、車でおよそ1時間半です。

この鮮度という武器は、アサヒスーパードライのライセンス生産にも使われています。公式サイトの説明はこうです。

工場できたてのビールは本当にうまい。このうまさを沖縄の皆様に味わっていただくために、オリオンビールとアサヒビールは力を合わせ、今日もあらゆる活動を通じて鮮度の向上に取り組んでいます。オリオンビール名護工場においてアサヒスーパードライをライセンス生産しているのもその一環です。

本土から船で運ぶより、名護で造ったほうが新しい。この一点が、2003年5月から続くライセンス生産の合理性です。2025年と2026年には「オリオン ザ・ドラフト 鮮度実感パック」という数量限定商品まで出しています。鮮度を商品名にしてしまったわけです。

やんばるの水、伊江島の大麦、県産の酵母

原料の話も整理しておきます。

  •  やんばるの水。世界自然遺産に登録された地域の水です。
  • 麦芽 公式の製造工程説明によれば、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダなどから厳選したものを使用。オリオン ザ・ドラフトの原材料表示は「麦芽(外国製造)」です。
  • ホップ 主にチェコ、ドイツ産。加えて、琉球大学との共同研究で栽培に成功した沖縄県産ホップを一部のクラフトに使用。
  • 大麦 沖縄県産大麦を一部使用。2021年7月には、完全循環栽培した伊江島産大麦を使った「オリオン ザ・ドラフト 初仕込」を発売しました。クリアフリーにも伊江島産大麦が使われています。
  • 酵母 「オリオン ザ・プレミアム」には、沖縄に自生する花や草木から3年かけて集めた3,000サンプルの中から選び抜いた、シロツメクサ由来の酵母「OB-001」を使用。

麦芽は輸入、水と大麦と酵母とホップの一部は沖縄。「沖縄でしか造れないビール」を、現実的な範囲で組み立てているのがよく分かる構成です。オリオン ザ・ドラフトが2020年6月のリニューアル時に「オリオンビール史上初の沖縄クラフトと呼べるビール」と打ち出されたのは、伊江島産大麦とやんばるの水という組み合わせが揃ったからでした。

製造工程を、8ステップで

公式サイトの説明にもとづいて、名護工場の工程を整理します。工場見学に行かれる方は、この順番を頭に入れておくと10倍楽しめます。

  1. 原料・粉砕 麦芽(モルト=大麦を発芽させたもの)を粉砕する。ホップは香りと苦味、泡持ちを与える。
  2. 仕込 粉砕した麦芽を仕込槽で加熱して糖化させ、甘い麦汁を作る。ろ過して煮沸釜へ移し、ホップを加えて煮込み、冷却して発酵タンクへ。工程はすべてコンピュータ管理。
  3. 発酵 冷却した麦汁に酵母を加える。糖分が酵母の働きでアルコールと炭酸ガスに分解され、約7日間で若ビールになる。
  4. 貯酒 若ビールを十数日間かけてゆっくり成熟させる。
  5. ろ過 酵母と余分なタンパク質を取り除く。植物プランクトンの化石である珪藻土を使ってろ過。
  6. びん・缶・たる詰 自動化ラインで容器へ。公表能力はびん19,200本/時、缶72,000缶/時、たる720本/時
  7. 製品検査 各種検査機、化学検査、微生物検査を経て、最後は訓練された香味パネリストが官能検査。
  8. 出荷 沖縄県内、県外、海外へ。

缶が1時間に72,000缶。1秒に20缶です。そして最後の関門が人間の舌である、というのがビールづくりの面白いところです。

主要銘柄の発売年表──この記事の背骨

お待たせしました。ここからが本題です。オリオンビールが世に出してきた銘柄を、時代ごとに6つの表に分けて並べます。定番だけでなく、消えていった銘柄、季節限定、記念缶、清涼飲料まで拾いました。

出典は、オリオンビール公式サイトの「会社沿革」「ドラフトビールの歴史」、各ブランドページ、ニュースリリース、および新規上場申請のための有価証券報告書です(いずれも2026年8月18日取得)。終売の年が公式に確認できないものは、正直に【要確認】と書きました。

年表① 創業〜本土復帰前(1957年〜1971年)

発売年 銘柄名 種別 どんなビールか 現況
1959年5月 オリオンビール(第一号製品) ラガー(ビール) 1959年5月17日、沖縄全島一斉発売。記念すべき第一号はゴールドに輝くラベル 系譜は「オリオン ザ・ドラフト」へ
1960年7月 びん詰め生ビール ラガー(生=非熱処理) 名護工場で開発。当初はラベルではなく輪ゴム付き商標シールを瓶の首に装着。1962年からラベル付きに 現「オリオン ザ・ドラフト」の直系
1971年5月 オリオンサイダー 清涼飲料 酒類以外への最初の一歩 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)。2024年5月に「WATTA オリオンサイダー味」として味が復活

年表② 本土復帰後〜昭和の終わり(1972年〜1989年)

発売年 銘柄名 種別 どんなビールか 現況
1973年4月 缶入り生ビール(オリオンドラフト) ラガー(生) スチール缶350ml。地の利を生かした新鮮な缶ビールとしてレジャーブームに乗る 缶商品の起点。現在に継承
1975年7月 沖縄国際海洋博記念缶 記念デザイン缶 沖縄国際海洋博覧会にあわせた記念商品 終売(記念商品)
1977年 アルミ缶入り生ビール「オリオンドラフト」 ラガー(生) 350ml缶をスチールからアルミへ変更。品質保持と軽量化に寄与 現在に継承
1981年4月 オリオントマトジュース 清涼飲料 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
1981年6月 500ml缶ビール ラガー(容量追加) 500ml缶は現在も主力サイズ
1981年6月 オリオンライトビール ビール(軽いタイプ) 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
1983年 缶入りビール デザイン一新/1000ml缶新発売 ラガー コバルトブルーの空と海に、サーフィンとヨットを描いた爽快感のあるデザイン。350ml・500ml・1000mlのトリオ展開 1000ml缶は現在の公式ラインナップになし
1988年7月 オリオンドライビール ビール(ドライ) 当時の全国的な「ドライ」ブームに対応した商品 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
1988年7月 オリオンレモンティー 清涼飲料 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
1989年6月 CI導入にともなう新ロゴマーク/全商品デザイン統一 ブランド刷新 コーポレートカラー、ロゴ、スローガンを決定し、全商品・看板を新デザインで統一

年表③ 1990年代(1990年〜1999年)

発売年 銘柄名 種別 どんなビールか 現況
1990年7月 首都圏で缶ビール販売開始 販路拡大 沖縄を出て、本土の家庭市場へ
1992年5月 オリオンピルスビール ビール(ピルスナー) 関西地域での缶ビール発売と同月。缶デザインも亜熱帯の自然と文化をテーマに大幅リニューアル 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
1993年5月 「琉球の風」記念デザイン缶 記念デザイン缶 NHK大河ドラマにちなむ記念商品 終売(記念商品)
1995年8月 茶願寿(ちゃがんじゅ) 清涼飲料(茶) 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
1996年5月 鹿児島県奄美地域でビール販売開始 販路拡大 奄美群島は現在も沖縄県と並ぶ「オリオン圏」
1997年6月 オリオン黒生ビール 黒ビール(生) 濃色麦芽を使った黒系ビール 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)。系譜は「オリオン ザ・ダーク」へ
1997年6月 オリオンアロマトーン ビール 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
1999年2月 6缶マルチパック販売開始 パッケージ 家庭用市場向けの標準形 現在も主力形態
1999年10月 九州・沖縄サミット記念デザインビール 記念デザイン缶 2000年開催のサミットにちなむ。県外出荷が前年比2倍近くに伸びる契機となった 終売(記念商品)

年表④ 2000年代(2000年〜2009年)

発売年 銘柄名 種別 どんなビールか 現況
2000年12月 オリオンスペシャル辛口生 ビール(辛口) 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2001年1月 ドラフトビール 21世紀記念デザイン ラガー 沖縄の美しい海と太陽をモチーフに、躍動感のあるデザインへ 後継商品へ
2002年8月 オリオン鮮快生 発泡酒 オリオン初の発泡酒 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2002年9月 オリオンアクアビート 【要確認:酒類区分】 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2002年11月 アサヒオリオン ザ・ドラフト ビール(県外向け) アサヒビールとの包括的業務提携にもとづき、沖縄県および奄美群島を除く全国で展開 販売中(2024年にリニューアル)
2003年4月 オジー自慢のオリオンビール 記念デザイン缶 記念デザイン缶 沖縄で愛される楽曲にちなんだ記念商品 終売(記念商品)
2003年5月 アサヒスーパードライ(名護工場ライセンス生産) ビール 沖縄県内向けの缶350ml・缶500ml・樽10L・樽20Lをオリオンが製造販売 製造・販売中
2004年2月 オリオン麦職人 発泡酒 沖縄県産大麦を一部使用し、時間をかけて麦の味わいを引き出す「職人仕込製法」 販売中(現在の品目は発泡酒②、アルコール分5.5%)
2004年12月 オリオンいちばん桜 ビール(季節限定・冬) 沖縄県産の桜「寒緋桜」を使用。日本一早い春を届ける冬季限定ビール 毎年秋から冬に季節限定発売
2005年7月 オリオンサザンスター 新ジャンル 沖縄県産米を使用した飲みやすい設計。のちに清涼ホップを一部使用 販売中(現在の品目は発泡酒②)
2007年5月 新・ドラフトビール(創立50周年) ラガー 沖縄の気候風土に合わせ、飲みやすさと飲みごたえを追求。パールホワイトのボディに南風をイメージしたデザイン 後継商品へ
2009年7月 オバァ自慢のさんぴん茶 清涼飲料(茶) 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2009年9月 オリオンゼロライフ 新ジャンル(糖質ゼロ) 糖質ゼロ設計。のちに麦芽量を従来の3倍にリニューアル 販売中(現在の品目は発泡酒②、アルコール分4%)

年表⑤ 2010年代(2010年〜2019年)

発売年 銘柄名 種別 どんなビールか 現況
2010年7月 オリオンスペシャルⅩ(エックス) 新ジャンル 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2013年4月 オリオンクリアフリー ノンアルコールビールテイスト飲料 アルコール0.00%。苦味を抑えた爽快さが特徴 販売中(2026年8月にパッケージリニューアル)
2013年6月 オリオン夏いちばん ビール(季節限定・夏) 「いちばん桜」の夏版として登場 現在の公式ラインナップになし(【要確認:直近の発売有無】)
2015年7月 オリオンドラフトビール(ブラッシュアップ) ラガー 誕生55年目のリニューアル。シャンパンゴールドをベースに、太陽の赤・空の青・海の紺を配したデザイン 後継商品へ
2015年9月 琉球ペールエール(クラフトシリーズ第1弾) エール(ペールエール) オリオンのクラフト挑戦の第1弾 現在の公式ラインナップになし
2015年10月 オリオンスタイル 新ジャンル 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2017年1月 Ryukyu Mild(琉球マイルド)/クラフト第4弾 クラフト 現在の公式ラインナップになし
2017年3月 オリオンゼロスター 糖質ゼロ・プリン体ゼロ オリオン初の糖質ゼロ・プリン体ゼロ商品 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2017年5月 オリオン ドラフトエクストラ ビール 創立60周年の記念商品 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2017年9月 Ryukyu Saison(琉球セゾン)/クラフト第5弾 エール(セゾン) ベルギー発祥のドライでスパイシーなスタイル 現在の公式ラインナップになし
2017年10月 オリオン贅沢気分 新ジャンル 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2018年3月・7月 オリオントロピカルコレクション「マンゴーのビアカクテル」 ビアカクテル 現在の公式ラインナップになし(終売年【要確認】)
2018年10月 75BEER(ナゴビール) クラフト(ビール) 「名護でしか飲めない」数量限定として登場 2019年12月に沖縄県内全域へ拡大。現在はシリーズ展開中
2019年5月 WATTA(ワッタ) RTD(チューハイ) オリオン初のチューハイ。沖縄果実を使用 販売中(2025年11月にリニューアル)
2019年12月 75BEER 沖縄県内全域で販売開始 クラフト プレミアムクラフトビールとして本格展開 継続中

年表⑥ 2020年代(2020年〜2026年8月)

発売年月 銘柄名 種別 どんなビールか 現況
2020年2月 オリオン ザ・ドラフト「首里城再建支援デザイン缶」 記念デザイン缶 首里城再建の支援を目的としたデザイン缶 終売(記念商品)
2020年6月 オリオン ザ・ドラフト ラガー(ビール) 「オリオンドラフト」から改称。伊江島産大麦とやんばるの水で仕込む、同社が「史上初の沖縄クラフトと呼べるビール」と位置づけた主力 主力商品として販売中
2021年7月 オリオン ザ・ドラフト 初仕込 ラガー(限定) 完全循環栽培した伊江島産大麦を使用 限定商品
2022年1月 オリオン ザ・ドラフト「沖縄・奄美 世界自然遺産登録記念デザイン缶」 記念デザイン缶 終売(記念商品)
2022年3月 オリオン ザ・ドラフト「沖縄復帰50周年デザイン缶」 記念デザイン缶 本土復帰50年の節目 終売(記念商品)
2022年7月 泡盛ハイボール RTD 沖縄の伝統酒・泡盛をベースにしたハイボール 2024年12月に再登場
2022年7月 natura(ナチュラ) RTD(チューハイ) 沖縄の素材とストレート果汁にこだわったブランド 販売中(2025年5月リニューアル)
2022年10月 オリオン ザ・プレミアム ビール(プレミアム) 沖縄に自生するシロツメクサから採取した県産ビール酵母「OB-001」を使用 販売中(2025年7月リニューアル)
2022年11月 オリオン ザ・ダーク ビール(濃色麦芽使用) 海外・公式通販限定で発売。台湾・香港・豪州・ニュージーランドなど計7か国で展開 2025年4月に沖縄県・奄美群島で国内通年販売を開始
2024年2〜3月 オリオン ザ・ドラフト(リニューアル) ラガー 県民により愛されるブランドを目指したブランドリニューアル 販売中
2024年3月 Southern Cross Winery パッションフルーツ フルーツワイン オリオン初のワイン。糸満市観光農園内の酒造施設で製造。発酵後期のもろみに果実を漬け込む「マセラシオン・フリュイ製法」 販売中
2024年4月 75BEER ALT エール(アルト) ドイツ発祥の古典的スタイル。数量限定 限定商品
2024年4月 WATTA メロン&マンゴー RTD(限定) 「どさんこしまんちゅプロジェクト」から誕生した北海道とのコラボ 限定商品
2024年5月 WATTA オリオンサイダー味 RTD(限定) 1971年発売の「オリオンサイダー」の味をチューハイで再現 限定商品
2024年6月 オリオン ティーダレッド/オリオン コーラルブルー ビールテイスト飲料(限定) 沖縄の太陽と海をイメージした赤と青のカラフルな商品 数量限定
2024年8月 WATTA シークヮーサー Alc.7%/WATTA 無糖シークヮーサー Alc.7% RTD アルコール分7%の高アルコール版
2024年8月 75BEER AMERICAN PALE ALE エール(ペールエール) 数量限定 限定商品
2024年10月 75BEER WEIZEN エール(ヴァイツェン) ドイツ発祥の伝統的な白ビール。数量限定 限定商品
2024年11月 WATTA タンカン/WATTA エンダーオレンジ RTD(限定) 沖縄の南国みかん、そして5年連続の人気コラボ 限定商品
2025年3月 75BEER 島風ピルスナー/75BEER 島空ホワイトエール ラガー/エール 75BEERシリーズを「もっと沖縄色に」リニューアル 販売中
2025年4月 75BEER 島色ペールエール エール(ペールエール) 沖縄のサンセットを思わせる一杯
2025年4月 WATTA サンティーサワー RTD(限定) 沖縄の懐かしの味を再現 限定商品
2025年5月 オリオン ザ・ドラフト 鮮度実感パック ラガー(限定) 名護工場できたての味わいを自宅で。2026年2月にも実施 数量限定
2025年6月 Southern Cross Winery シークヮーサー フルーツワイン 第2弾。県産シークヮーサーの香りと軽やかな酸味の辛口タイプ 販売中
2025年6月 オリオン パッションフルーツとあの日の告白/オリオン シークヮーサーと君とみた空 ビールテイスト飲料(限定) 沖縄の「色」を楽しむカラフルなシリーズ 数量限定
2025年7月 オリオン ザ・プレミアム(リニューアル) ビール(プレミアム) 県民公募・県民投票で選ばれた新パッケージを採用 販売中
2025年7月 75BEER 島星シトラスエール エール(限定) 沖縄の夏を爽やかに彩る季節商品 限定商品
2025年7月 WATTAソーダセブンサワー/ソーダセブンWATTAシークヮーサー味 RTD(限定) 沖縄県内限定で同時発売 限定商品
2025年9月 沖縄香るクラフトジンソーダ RTD(スピリッツ系) 月桃とシークヮーサーを主軸に、沖縄県産の植物素材を使用
2025年9月 75BEER 島香るIPA エール(IPA・限定) 力強い苦味と爽やかな香り 限定商品
2025年10月 オリオン ザ パーティー ビールテイスト飲料(限定) シャンパン気分の新感覚 数量限定
2025年11月 オリオン いちばん桜(2025年版) ビール(季節限定・冬) やんばる三大桜名所の寒緋桜を過去最大量使用。カスケードホップ100%のシングルホップ製法 季節限定
2025年11月 WATTA 南国イチゴ RTD(限定) 沖縄県産イチゴ由来エキスを使用 限定商品
2026年1月 島チュー(無糖シークヮーサー/シークヮーサー) RTD(アルコール分7%) 青切りシークヮーサーだけを厳選使用。甘さを抑えた辛口設計の新ブランド 販売中
2026年1月 75BEER 島光琥珀エール エール(限定) 香ばしさと豊かなコク 限定商品
2026年2月 WATTA 沖縄バヤリースオレンジサワー RTD(限定) 沖縄限定飲料とのコラボ 限定商品
2026年3月 オリオン SHIKUWASA BEER ビール(季節限定・春) 県産シークヮーサー果汁と県産ドライシークヮーサー粉末の2種類を使用 数量限定
2026年3月 75BEER 島旅トロピカルIPA エール(IPA) 南国フレーバーと奥行きある苦味 限定商品
2026年3月 WATTA トロピカルファジーネーブル RTD(限定) 沖縄産タンカン×ピーチ。アルコール分4% 限定商品
2026年5月 WATTA 沖縄パッション&愛媛みかん RTD(限定) 全国の果実とつながる新シリーズ「MEET! WATTA」の第1弾 限定商品
2026年5月 オリオン ザ・プレミアム 夕なぎの波音 ビール(限定) ザ・プレミアム シリーズ初の限定品。小麦麦芽・オレンジピール・コリアンダーシードを使用 数量限定
2026年6月 natura 南国グァバ RTD(限定) グァバのストレート果汁に加え、名護工場製造の沖縄県産グァバ浸漬酒を使用 限定商品
2026年7月 オリオン 75BEER ピルスナー ビール(ピルスナー) オーストラリア産ホップと特別麦芽。名護湾に沈む夕日をイメージした琥珀色 販売中
2026年7月 75BEER アイランドセッションIPA/75BEER 真夏のラガー エール/ラガー(季節限定) セッションIPAは沖縄県産アセロラピューレを使用。真夏のラガーはアルコール分5.5% 季節限定
2026年7月14日 オリオン BEACH CHILL 発泡酒②(アルコール分5.5%) 15度以下になると缶にエメラルドグリーンが浮かぶ温度可変仕様。ベルガモットエキス、県産シークヮーサー、オレンジピールを使用 販売中
2026年7月31日 WATTA 沖縄パイン&長野シャインマスカット RTD(限定) 「MEET! WATTA」シリーズ 限定商品

年表を並べて見えてくること

約90銘柄を時系列で眺めると、この会社が何をしてきたかがはっきり浮かびます。私が読み取ったのは、次の5つです。

  1. 最初の40年は「容器」の歴史だった。1959年の瓶、1960年の生ビール、1973年のスチール缶、1977年のアルミ缶、1981年の500ml缶、1983年の1000ml缶、1999年の6缶マルチパック。中身より先に、入れ物と売り方を進化させています。
  2. 1990年代後半から2010年代半ばまでは、迷いの時期だった。黒生、アロマトーン、辛口生、鮮快生、アクアビート、スペシャルX、スタイル、ゼロスター、贅沢気分。多くが定着せずに姿を消しています。全国の税制と大手の商品戦略に振り回された時代でした。
  3. 2019年が明確な転換点。WATTAの登場でRTDという柱ができ、75BEERで高付加価値の柱ができた。この年、ファンド傘下に入っています。資本が変わると商品が変わるという、教科書のような事例です。
  4. 2022年以降、上位商品が一気に整った。ザ・プレミアム(2022年10月)、ザ・ダーク(2022年11月)、Southern Cross Winery(2024年3月)、島チュー(2026年1月)。「安いから売れる」から「良いから選ばれる」への組み替えが進行中です。
  5. 沖縄の素材が、年を追うごとに増えている。県産大麦、伊江島産大麦、県産米、県産酵母、県産ホップ、寒緋桜、シークヮーサー、アセロラ、グァバ、パッションフルーツ、タンカン、カーブチー、月桃。ブランドの根拠を、土地に埋め直しているのです。

オリオン ザ・ドラフト──66年続く、この会社の背骨

ここからは主要ブランドを一つずつ見ていきます。まずは主力の「オリオン ザ・ドラフト」から。

1959年に発売され、1960年に生ビール化し、2020年6月に現在の名前になりました。有価証券報告書は「1960年に誕生した『オリオン・ザ・ドラフト』」と表現しています。現在の商品概要は次のとおりです。

項目 内容
品目 ビール
原材料名 麦芽(外国製造)、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ
アルコール分 5%
ラインナップ 缶350ml/缶500ml/小瓶334ml/中瓶500ml/大瓶633ml/中瓶500ml祝いラベル/樽10L/樽20L
特徴 沖縄県産大麦を使用し、やんばるの水で仕込む。雑味の元となる成分をより多く取り除くろ過製法

注目してほしいのが「中瓶500ml 祝いラベル」です。沖縄では祝いの席でビールを配ります。そのための専用ラベルが定番ラインナップに入っている。商品が地域の風習と一体になっている証拠です。

デザインの変遷が、そのまま沖縄の時代を映している

公式の「ドラフトビールの歴史」から、デザイン変更の年を並べます。

できごと デザイン・味の狙い
1959年 発売 ゴールドに輝くラベル
1960年 びん詰め生ビール発売 輪ゴム付き商標シール(1枚2セントで買い取り)
1973年 缶入り生ビール発売 スチール缶350ml。レジャーブームに乗る
1977年 アルミ缶へ変更 品質保持、軽さ、冷えやすさ、空き缶処理のしやすさ
1983年 缶デザイン一新/1000ml缶新発売 コバルトブルーの空と海、サーフィンとヨット。「若者や観光客に広く親しまれる、華やかで爽快感のあるもの」
1989年 CI導入・ロゴと味を一新 「社会に向けて企業の顔をつくる」。翌1990年に首都圏販売開始
1992年 デザイン大幅リニューアル 亜熱帯の自然と文化がテーマ。太陽、海、祭り(太鼓)、植物を幾何学模様でシンボル化
2001年 21世紀記念デザイン 沖縄の美しい海と太陽をモチーフに、おおらかな躍動感
2007年 新・ドラフトビール(創立50周年) パールホワイトのボディに柔らかな南風
2015年 誕生55年目のブラッシュアップ シャンパンゴールドに三ツ星とORIONロゴ。太陽の赤、空の青、海の紺
2020年6月 「オリオン ザ・ドラフト」へ改称 伊江島産大麦とやんばるの水。「澄みと旨み。」。原色系カラーウェーブに麦のアイコン
2024年2〜3月 ブランドリニューアル 県民により愛されるブランドを目指して
2025年7月 ブランドメッセージ刷新 「OUR HAPPY HOUR 飲んで、笑って、またあした。」
2026年6月9日 パッケージリニューアル ブランドメッセージ「OUR HAPPY HOUR」をデザインに採用

1983年のサーフィンとヨット、1992年の太鼓と植物、2020年の麦。「観光地としての沖縄」を売っていた時代から、「土地の産物としての沖縄」を売る時代へ。デザインの変遷が、そのままブランド戦略の変遷になっています。

そして2025年7月のブランドメッセージ「飲んで、笑って、またあした。」。私はこの言葉が非常に好きです。ビールの味の話を一言もしていない。ビールを飲む「場面」だけを言っている。飲食店の集客を仕事にしている人間としては、これほど正しいコピーはないと思います。お客さまが買っているのは液体ではなく、その夜の時間なのですから。

2025年7月には「0次会屋 by オリオン ザ・ドラフト」というイベントも実施されています。飲み会の前の1杯、という文脈を作りにいっているわけです。2026年4月には「0次会やらん?キャンペーン」も展開されました。「0次会」という言葉を市場に植えつけて、消費機会そのものを増やす。これは飲食店にとってもそのまま使える発想です。

オリオン ザ・プレミアム──3年かけて酵母を探した

2022年10月に発売された、上位ブランドです。公式サイトの説明が印象的なので、そのまま引きます。

沖縄のプレミアムにふさわしい酵母とは? 沖縄じゅうに自生する花や草木から最高の酵母を探して駆けまわる日々。3年の月日をかけ、集めた酵母は3000サンプル。その中から見つけだしたのが、シロツメクサから採った酵母 “OB-001” です。

3年、3,000サンプル、たどり着いたのはシロツメクサ。酵母はビールの香りと味わいを決める最大の要素のひとつですから、これを自前で持つということは、他社に真似できない味を持つということです。

商品概要は、品目がビール、アルコール分5%、原材料は「麦芽(外国製造)、ホップ、大麦」。米もコーンもスターチも使わない、麦芽中心のシンプルな構成です。ザ・ドラフトとの設計思想の違いが、原材料表示にはっきり出ています。

2025年7月のリニューアルでは、前述のとおりパッケージを県民公募・県民投票で決めました。採用されたのは沖縄のグラフィックデザイナー・比嘉隼斗氏の作品で、夕日にも朝日にも見える「マジックアワー」と、シロツメクサの酵母にちなんだ四葉のクローバーが織り込まれています。酵母の由来がデザインに戻ってくるという、きれいな循環です。

2026年5月には、シリーズ初の限定品「オリオン ザ・プレミアム 夕なぎの波音」が登場しました。大麦麦芽に小麦麦芽を加え、オレンジピールとコリアンダーシードを使った、いわゆるベルジャンホワイト系の構成です。

オリオン ザ・ダーク──海外で評価されて、沖縄に帰ってきた

この商品の来歴が、私は一番面白いと思っています。

2022年11月、海外と公式通販だけで発売。台湾、香港、オーストラリア、ニュージーランドなど計7か国で展開し、気候が温暖なアジア・オセアニア圏で特に支持を集めました。そして2025年4月30日、「世界を虜にしたうまさが堂々凱旋」というコピーとともに、沖縄県・奄美群島地区での通年販売を開始します。

地方メーカーが、海外で作った評価を国内に逆輸入した。これは相当に珍しい成功パターンです。ふつうは国内で売れたものを海外に持っていく。順番が逆なのです。

中身は前述のとおり、ザ・ドラフトのスッキリさをベースに濃色麦芽を一部使った設計。原材料は「麦芽(外国製造、国内製造)、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ」、アルコール分5%。2026年1月には「龍が如く」シリーズとのコラボデザイン缶も出ています。

いちばん桜──日本でいちばん早い桜のビール

2004年12月に登場した季節限定商品です。使っているのは沖縄県産の寒緋桜(かんひざくら)

沖縄の桜は、本土のソメイヨシノとは違います。濃いピンクで、下向きに咲き、しかも日本でいちばん早く、1月から2月に咲く。やんばるの桜の名所では毎年、日本一早い桜まつりが開かれます。「いちばん桜」という名前は、この事実にまっすぐ乗っかっているわけです。

2025年11月11日発売の最新版は、内容がかなり進化しています。公式リリースによれば──

  • 沖縄島北部・やんばる地域の三大桜名所から採取した寒緋桜を、過去最大量使用
  • ホップを見直し、桜との相性を考えてカスケードホップを100%使用したシングルホップ製法
  • 琥珀色の液色と華やかな香りはそのままに、後味はすっきり軽やかに
  • 原材料は「麦芽(外国製造)、ホップ、大麦、乾燥桜花」、アルコール分5%、350ml缶
  • 販売エリアは沖縄県内および奄美群島地区・公式通販サイト

原材料に「乾燥桜花」と書いてあるのが、この商品のすべてです。香料ではなく、実際の桜の花を使っている。

飲食店の方に申し上げたいのは、「11月に春の商品を出す」という発想です。年末年始の宴席とお祝いの席に、桜色の缶が並ぶ。沖縄では1月に本当に桜が咲くので、嘘がない。季節限定商品の設計として、非常によくできています。あなたのお店にも、「まだ誰も季節商品にしていない、地元の一番早い何か」はありませんか。

なお、夏版として2013年6月に「オリオン夏いちばん」も登場していますが、現在の公式ラインナップには見当たりません(【要確認:直近の発売有無】)。

75BEER──名護でしか飲めなかったビールが、沖縄の顔になるまで

2018年10月、「名護でしか飲めない」数量限定商品として登場したのが「75BEER」です。名前の由来は、名護(ナゴ)の語呂合わせ。名護工場内の小規模醸造設備は「Co-Labo75(コラボナゴ)」と名付けられています。

2019年12月に県内全域へ拡大し、2021年3月には500リットルプラント「オリオンクラフトラボ co-labo75」が本格始動。2025年3月には「もっと沖縄色に」というコンセプトでシリーズをリニューアルし、定番を「75BEER 島風ピルスナー」「75BEER 島空ホワイトエール」に整理しました。

そこからの展開が非常に速い。季節ごとに、新しいビアスタイルを次々に投入しています。

  • 2025年4月 島色ペールエール
  • 2025年7月 島星シトラスエール
  • 2025年9月 島香るIPA
  • 2026年1月 島光琥珀エール
  • 2026年3月 島旅トロピカルIPA
  • 2026年7月 アイランドセッションIPA/真夏のラガー
  • 2026年7月 75BEER ピルスナー(新定番)

すべて「島◯◯」で名前が揃えられている点にご注目ください。シリーズとしての統一感を、ネーミングルールで担保している。これは中小の飲食店でも真似できる手法です。看板メニューに共通の接頭辞をつけるだけで、店の世界観が一段揃います。

75BEERは、オリオンホテル 那覇の「THE ORION BEER DINING」、オリオンホテル モトブ リゾート&スパの「THE ORION BEER BAR」、そしてオリオンハッピーパークでしか飲めない特別醸造クラフトビールも展開しています。ラカンセア酵母と沖縄県産アセロラ果汁を使った、白ワインを想わせる一杯まであるそうです。

オリオン75BEERピルスナーの缶
オリオン 75BEER(ピルスナー)の缶。出典: ウィキメディア・コモンズ「File:Orion 75 Pilsner Beer.jpg」撮影者: Sgroey(ライセンス: CC BY-SA 4.0)取得日 2026-08-18

麦職人・サザンスター・ゼロライフ──「エコノミー」の三銃士

オリオンの中長期経営方針には、沖縄県内戦略の一項目として「エコノミービールの強化」という言葉が入っています。ここを担うのがこの3ブランドです。3つとも、いま品目は「発泡酒②」に揃っています。

麦職人(2004年2月〜)

公式サイトの説明では、麦芽を「ビールに近い量まで増量」しており、これは税法上の『発泡酒②』の上限値に近い麦芽使用量だと注記されています。つまり、この区分でできる限界まで麦芽を入れているわけです。沖縄県産大麦を一部使用し、同社の発泡酒②商品の中で最長の仕込み時間をかける「職人仕込製法」。アルコール分5.5%。

公式サイトが「しっかりとした飲みごたえがあるので、居酒屋料理のような味の濃い料理との相性も抜群です」と、はっきり居酒屋を名指ししているのが印象的でした。

サザンスター(2005年7月〜)

沖縄県産米を使用した飲みやすさが売り。新たに清涼ホップを一部使用し、爽快感に磨きをかけたとされています。前述のとおり、税制改正の関係で「リキュール(発泡性)②」と表示された商品が2026年9月30日まで流通します。

ゼロライフ(2009年9月〜)

糖質ゼロ設計の商品です。リニューアルで麦芽量を従来の3倍にし、爽快さの中にビールらしい麦の旨みを持たせました。アルコール分4%、350ml缶・500ml缶・樽10L。樽があるということは、飲食店で生として出せるということです。公式サイトも「お店でも、ゼロライフ。」と業務用展開を打ち出しています。

糖質を気にされるお客さまに、ウーロン茶ではなく樽生を出せる。これは客単価の話として無視できません。

WATTA・natura・島チュー──RTDという新しい柱

有価証券報告書によれば、オリオンのRTD売上高は過去6年の年平均成長率(CAGR)が36.8%。これは急成長という言葉で足ります。

WATTA(2019年5月〜)

オリオン初のチューハイです。ブランドメッセージは「沖縄果実で、パッと気分アガッタ!」。定番フレーバーは、シークヮーサー、パイナップル、パッションフルーツ、カーブチー、無糖シークヮーサー、無糖アセロラ。

カーブチーは沖縄固有の柑橘です。2025年2月には「大好評につき通年販売へ」と発表されました。限定フレーバーの回転も速く、タンカン、メロン&マンゴー、ハスカップ&グァバ、エンダーオレンジ、サンティーサワー、南国イチゴ、沖縄バヤリースオレンジサワー、霧の紅茶アップルティーサワー、トロピカルファジーネーブルと、次々に出ています。

2026年5月には「MEET! WATTA」という新シリーズが始まりました。沖縄の果実と全国各地の果実を掛け合わせる企画で、第1弾が「沖縄パッション&愛媛みかん」、続いて「沖縄パイン&長野シャインマスカット」。県外市場への入口として、うまい設計だと思います。

なお、2020年5月にアルコール9%のストロング系チューハイから撤退したことが、会社沿革にはっきり書かれています。度数を上げて売るという道を、自ら断ったわけです。

natura(2022年7月〜)

ストレート果汁にこだわったブランドです。公式サイトは、濃縮還元果汁が加熱濃縮の際に香りや風味を損ない加熱臭がつくのに対し、ストレート果汁は加熱時間を最小限にするため果実本来の香りと風味が残る、と説明しています。香料を加えなくても果実そのままの香りを引き出せるのが売りです。

2025年5月のリニューアルで、全フレーバーに沖縄県産素材(県産果汁または県産フルーツ由来エキス)を使用するようになりました。2026年6月の限定品「natura 南国グァバ」では、名護工場で製造した沖縄県産グァバ浸漬酒まで使っています。ビール工場が果実酒を仕込んでいるわけです。

島チュー(2026年1月〜)

いちばん新しいブランドです。コンセプトは「家飲みでも、おいしさに妥協しない」。使うのは青切りシークヮーサーだけ。完熟前の、果皮が青いうちに収穫したシークヮーサーです。際立つ酸味と清々しい香りが特徴で、甘さを抑えた辛口設計に仕上げています。アルコール分は7%、350ml缶と500ml缶。

  • 島チュー無糖シークヮーサー(スピリッツ・発泡性) 果皮の香りとほろ苦さをダイレクトに感じる辛口無糖。食中酒向け
  • 島チューシークヮーサー(リキュール・発泡性) 甘さを抑えた大人の味わい。食後のくつろぎ向け

WATTAが「果実感で楽しい」、naturaが「素材で贅沢」、島チューが「辛口で本格」。1ブランドで全部を狙わず、3ブランドで棲み分ける設計です。飲食店のメニュー設計でも、この考え方はそのまま使えます。

Southern Cross Winery・クラフトジン・泡盛──ビール会社の外側へ

Southern Cross Winery(2024年3月〜)

オリオン初のワインです。沖縄県産のパッションフルーツを使ったフルーツワインで、糸満市観光農園内の酒造施設で製造されています(2023年3月に運営を受託)。名前はワイナリーから見える南十字星から。ロゴのモチーフは羅針盤です。

製法は「マセラシオン・フリュイ」。発酵後期のもろみに県産果実を漬け込むことで、フレッシュな果実感を残します。同社のソムリエが素材の選定から醸造まで手がけました。2024年4月には「販売好調による品切れ」のお詫びが出るほど売れ、急遽増産しています。2025年6月には第2弾のシークヮーサー(辛口)が登場しました。

公式サイトは、パッションフルーツについて「トマト料理、魚介料理との相性がぴったり」、さらに「通常のワインが合わせづらい、麻辣などを使用した四川風中華、チリペッパーを使用したタイ料理、様々なスパイスを使用したカレー、韓国料理などのスパイシーで辛味がある料理との相性がよい」と踏み込んだペアリング提案をしています。辛い料理に合うワインが欲しい飲食店には、覚えておく価値のある一本です。

沖縄香るクラフトジンソーダ(2025年9月〜)

沖縄県産の植物素材を使い、月桃(げっとう)とシークヮーサーを主軸にした複層的な香りのRTDです。月桃は沖縄でムーチー(餅)を包むのに使われる香りの強い植物。ジンのボタニカルとして使うという発想は、いかにも沖縄らしい。

石川酒造場と泡盛

2007年8月に株式を取得して子会社化し、2022年9月に完全子会社化した株式会社石川酒造場(沖縄県中頭郡西原町)は、泡盛、もろみ酢、リキュール、スピリッツを製造しています。有価証券報告書によれば、2025年3月期の営業利益率は26.6%。グループの中でも高収益な事業です。近年は泡盛をベースにしたクラフトジンにも取り組んでいます。

2024年12月には、ユネスコ無形文化遺産「日本の伝統的酒造り」の登録を記念して「泡盛ハイボール」が再登場しました。泡盛の酒税軽減措置は2032年5月15日に廃止されますから、こちらもまた時計が動いている事業です。

消えていった銘柄たちへ

年表を作っていて、いちばん胸に残るのはここです。オリオンライトビール、オリオントマトジュース、オリオンドライビール、オリオンレモンティー、オリオンピルスビール、茶願寿、オリオン黒生ビール、オリオンアロマトーン、オリオンスペシャル辛口生、オリオン鮮快生、オリオンアクアビート、オリオンスペシャルⅩ、オリオンスタイル、オリオンゼロスター、オリオン贅沢気分、琉球ペールエール、Ryukyu Mild、Ryukyu Saison──。

これらは失敗作ではありません。その時代の市場に、律儀に答えを出した商品です。1988年にドライビールを出したのは、ドライ戦争の真っ只中だったから。2002年に発泡酒を出したのは、ビールとの税差が最大に開いた時期だったから。2017年に糖質ゼロ・プリン体ゼロを出したのは、そういう需要が確かにあったから。

そして、税制が変わり、嗜好が変わり、役目を終えた。商品の生き死には、味の良し悪しだけでは決まりません。制度と時代が変われば、良い商品でも棚から消えます。これは飲食店のメニューでも同じです。定番を守ることと、役目の終わったものを下げることは、両方やらなければいけません。

ちなみに、1971年発売の「オリオンサイダー」は、2024年5月に「WATTA オリオンサイダー味」として蘇りました。53年ぶりの復活です。消えた商品は、記憶が残っているかぎり、いつでも戻ってこられる。これも一つの資産の使い方です。

県内シェア83.8%という数字の中身

ここからは、飲食店の読者にいちばん近い話です。

新規上場申請のための有価証券報告書に、こんな一文があります。

沖縄県内でのビールの販売シェアはアサヒビール株式会社のライセンス商品の販売も含めると、83.8%と高水準となっています。

算出方法も注記されています。国税庁「令和5年度間接税(酒税)-酒類の販売(消費)数量」に記載された沖縄県におけるビール販売数量(キロリットル)を分母、同年度のオリオンのビール販売数量を分子として算出。ここにはアサヒビールからのライセンスによって製造した商品、および仕入れした商品の販売も含むと明記されています。

つまり83.8%は「オリオンブランドの占有率」ではなく、「オリオンビール株式会社という会社が沖縄県内で流している樽と缶と瓶の割合」です。ここを正確に理解しておかないと、数字を誤って使うことになります。

それでも、この数字はやはり驚異的です。地方に強い地場メーカーはいくつもありますが、県内のビール流通の8割超を1社が握っている県は他にありません。

5,800店のサーバー網

私がいちばん唸ったのは、こちらの数字です。

沖縄県内に所在する飲食店約7,400店のうち当社は5,800店にビールサーバーを設置しており、密度の高い消費者とのタッチポイントを有しています。

約7,400店という母数は、総務省統計局「令和3年経済センサス活動調査結果」の沖縄県の飲食店事業所数から、喫茶店・管理補助的事業所・その他の飲食店を除いた数だと注記されています。

7,400店のうち5,800店。実に78%。沖縄で居酒屋の扉を開けたら、カウンターの向こうにオリオンのサーバーがある確率が8割近い、ということです。

これがなぜ強いのか。飲食店を支援している立場から言わせてください。ビールサーバーは、単なる什器ではなく「関係」そのものだからです。サーバーを置いた瞬間から、洗浄が要る、ガスの交換が要る、故障すれば呼ばれる、樽の在庫を気にしてもらう。営業が定期的に顔を出す理由が生まれる。5,800回の定期訪問の機会が、毎月発生しているわけです。

オリオンは2005年7月に、生ビールサーバー等の機器設置・洗浄・修理を行う「オリオンサポート株式会社」をわざわざ設立しています(2020年4月に本体へ吸収合併)。サーバーの面倒を見る会社を別に作ったという事実が、この分野をどれだけ重視しているかを物語っています。

「うまい!樽生の5原則」は、全国の飲食店が読むべき

オリオンは飲食店と一緒に「樽生最優秀認証制度」という仕組みを運営しています。5原則を守り、サーバーを自主的に毎日洗浄している沖縄県内の飲食店を、「オリオン樽生最優秀認定店」として公式サイトで紹介する制度です。沖縄県外にも「樽生クオリティセミナー受講店」の一覧があります。

公式サイトが公開している5原則を、私なりに整理します。ここはオリオンを扱っていない店でも、そのまま使える内容です。

  1. 樽の管理 適正な樽サイズを選び、先入れ先出しを励行する。冷暗所で保管し、低温で使用する。振動は厳禁。樽をやさしく丁寧に扱う。
  2. ガス圧の調整 ビールの温度に合わせて炭酸ガス圧を調整する。チェックカードでビール温度を測定する。
  3. 配管の洗浄 ディスペンスヘッドからジョッキに注がれるコックまで、毎日の水通し洗浄週1回以上のスポンジ通し洗浄を行う。
  4. ジョッキの洗浄 きめ細やかに洗浄し、清潔に保管する。他の食器と分別して洗う。
  5. 注ぎ方 クリーミーできめ細やかな泡とビールのバランスを保つ。ビールを踊らせず、泡立てず、静かに注ぎ、泡付け機能で上から泡をのせ、フタをして完成。

泡とビールのベストバランスは20〜30対80〜70と明記されています。そして、良い一杯かどうかは泡を見れば分かる、として次の見どころを挙げています。

  • クリーミーな泡 炭酸ガスが抜けるのを防ぐフタの役割を果たし、ビールが直接空気に触れるのを防ぐ
  • 湧き上がる泡 グラスを置くたびに、何度でも新たな泡が湧き上がる
  • 霧のような泡 泡とビールの境目にできる霧状の泡は、炭酸ガスが逃げていない証拠
  • ジョッキ内の気泡 汚れたジョッキでは泡が消える。きれいなジョッキなら泡が長持ちする
  • 「うまい!」の輪 飲み進めるとジョッキに残る泡のリング。きれいなジョッキでなければできない

「ジョッキに泡のリングが残るかどうか」。これ以上わかりやすい品質チェックはありません。今夜、あなたのお店で出した1杯目を、お客さまが半分飲んだところで見てください。リングが残っていなければ、洗い方かグラスの管理に問題があります。

そして飲み方のコツとして、公式サイトはこう書いています。「ちょっとあごを上げて飲めば、泡を残しながら飲めるので、いつまでもクリーミーな泡が消えません」。あごを上げる。お客さまに伝えると喜ばれる小ネタです。

観光客の認知度96.9%

もう一つ、飲食店に効く数字があります。おきぎん経済研究所の「沖縄観光における県産酒類の価格需要に関する調査」(2024年3月19日〜20日、直近およそ5年以内の沖縄旅行経験者1,030名へのWebアンケート)によれば、オリオンビールを「飲食したことがある」または「飲食したことはないが、知っている」と答えた人は96.9%でした。

沖縄に来た観光客の、ほぼ全員がオリオンを知っている。説明のいらない商品ということです。沖縄の飲食店にとって、これは「メニューに載せるだけで注文が入る」商品を持っているのと同じ意味を持ちます。

さらに、日経クロストレンド「顧客幸福度」調査2024によれば、オリオンブランドは国内ビール5社を含む11業界82ブランドの調査で顧客幸福度が最上位のビールブランドという結果が出ています。「自己の幸せ」「周囲の幸せ」「ブランドの存在への感謝」の3点を7段階で評価したものだそうです。

沖縄観光は、2025年度に過去最高を記録した

オリオンの商売を支える最大の外部要因が、沖縄観光です。沖縄県のまとめによれば、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の入域観光客数は1,093万5,800人で、前年度比9.9%増。2018年度の約1,000万人を上回り、過去最高となりました。国内客が799万人、外国客が294万人と報じられています。

有価証券報告書も、沖縄県を「米国のハワイ州に匹敵する年間約1,000万人の観光客が訪れる日本の南国リゾート」と位置づけています。県民の人口をはるかに上回る数の観光客が、毎年この島に乗ってくる。これが沖縄の飲食業の構造です。

沖縄ブランドを、どう外へ持ち出しているか

1966年の台湾、1976年の米国

意外に思われるかもしれませんが、オリオンの海外進出は非常に早い。1966年3月に台湾向け初輸出、1976年6月に米国向け初輸出です。日本の地方メーカーとしては、これはかなり早い部類でしょう。

本土への進出(1990年7月・首都圏)よりも、台湾のほうが24年も早いのです。沖縄から見れば、東京より台北のほうが近い。那覇から台北まで約630キロ、那覇から東京まで約1,550キロ。地理をそのまま商売にした結果です。

2014年10月には「オリオンビアフェストIN台湾」を初開催、2016年2月には台湾駐在員事務所を開設しています。2024年6月には高雄でもビアフェストを開催しました。

2017年、17の国と地域へ

会社沿革によれば、2017年4月に海外輸出エリアとアイテムを増やし、合計17の国と地域に拡大。同月には農林水産省の「輸出に取り組む優良事業者表彰」で食品産業局長賞を受賞しています。

現在の主な海外市場は、有価証券報告書によれば台湾、オーストラリア、韓国、米国、香港、中国など。2021年3月期から2024年3月期にかけて、年率30%超の売上高成長を実現したとされています。

カナダで販売されているオリオン プレミアム ドラフトビールの633ミリリットル瓶
カナダで販売されているオリオンの633ml瓶(英語・フランス語表記のラベル)。出典: ウィキメディア・コモンズ「File:Orion Premium Draft Beer, 633 mL bottle as sold in Canada.jpg」撮影者: Yuet Man Lee(ライセンス: CC BY-SA 4.0)取得日 2026-08-18

2026年7月、英国の会社に初めて出資した

そして直近の大きなニュースです。2026年7月29日、オリオンビールは英国のパートナーSunrise Beverages Ltd.(本社ロンドン)へ100万ポンドを出資しました。同社にとって初の海外投資です。

リリースによれば、両社は2025年9月から英国でのライセンス製造・販売をすでに開始しており、高級スーパーのWaitrose、Portobello Pub Company、Duck & Riceなどでの取り扱いが進んでいるとのこと。今回の出資でサンライズ社の生産能力を拡充し、英国でのブランド認知と流通を加速させる狙いです。

ここで見逃せない数字が一つあります。リリースにはこう書かれています。

その結果、過去6年間で輸出量が約400%増加するなど、国際市場での評価も著しく向上しています。

6年で輸出量が約5倍。2019年のファンド傘下入りから2025年までの期間と、ほぼ重なります。

海外向けのコンセプトも明快で、「Chill Side of Japan」(日本のくつろぎ側)と「Japan Quality」という二枚看板。中長期経営方針では「Where to Play(高成長エリアへの重点展開)」「How to Win(Resort×Japan Quality)」という言い方をしています。

ライセンス製造という手法も重要です。自社工場を海外に建てず、現地のパートナーに造ってもらう。有価証券報告書はこれを「アセットライト型」と呼んでいます。輸送コストも為替リスクも抑えられ、資本を寝かせずに市場を広げられる。「沖縄でしか造れない」を売りにしてきた会社が、海外では現地製造に踏み切っているのは、大胆な割り切りだと思います。

ブランドライセンスという、もう一つの商売

もう一つ、オリオンの面白さはここです。同社はロゴや商品パッケージを使う権利をライセンシーに提供するビジネスを展開しています。中長期経営方針でも「高収益・高成長なブランドライセンス事業展開を加速」と、5つの事業戦略の一つに位置づけられています。

実際、2024年から2026年にかけてのコラボ相手を並べると、その広さに驚きます。CHUMS、BILLABONG、SHAKA、NEW ERA、FREAK’S STORE、MARK STYLER、huf、首里琉染、ちいかわ、にじさんじ、ORANGE RANGE、琉球ゴールデンキングス、沖縄プロ野球キャンプ9球団、「龍が如く」シリーズ、アウトドアスパイスほりにし──。

アパレル、アウトドア、キャラクター、eスポーツ、プロスポーツ、ゲーム、調味料。「オリオン」の3文字と三ツ星が、Tシャツやキャップに載るだけで売れる。これはビールを1本も造らずに立つ利益です。地方の企業がブランド価値を現金化する方法として、極めて示唆に富んでいます。

2023年12月には初の公式ストア「オリオンオフィシャルストア那覇」がオープンし、2026年5月には「オリオンオフィシャルストア 名護」も開店しました。2025年8月には県外初のポップアップストアを首都圏で、10月には大阪・あべのハルカスで開催しています。ビール会社が物販の店を持つ時代です。

名護工場とオリオンハッピーパーク

沖縄本島北部・名護市東江。ここに、この会社のすべてがあります。

有価証券報告書によれば、名護工場の土地面積は229,467平方メートル(借地8,163平方メートルを含む表記あり)。帳簿価額は建物及び構築物3,579百万円、機械装置及び運搬具2,465百万円、土地1,341百万円。従業員は62名(臨時37名)です。

生産能力の拡張は、そのまま沖縄の消費の伸びを映しています。

年月 できごと 年間製造能力
1958年11月 名護工場竣工
1963年11月 第1回工場増設 10,800キロリットル(6万石)
1965年3月 第2回工場増設 18,000キロリットル(10万石)
1970年5月 第3回工場増設 27,000キロリットル(15万石)
1975年7月 第4回工場増設 36,000キロリットル(20万石)
1989年7月 名護工場増設 60,000キロリットル
1993年7月 屋外貯酒タンク増設 72,000キロリットル

「石(こく)」という単位が併記されているのが、時代を感じさせます。1963年から1993年までの30年で、製造能力は約6.7倍になりました。

環境への取り組み

名護工場は2001年度に環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001を取得し、2006年度にはゼロエミッション(廃棄物100%再資源化)を達成しています。2017年にはLNGサテライトタンクと排水好気処理設備が竣工、2018年4月には排水の高度処理化により100%河川放流を開始。2022年2月には沖縄電力の「うちな〜CO2フリーメニュー」を採用し、同年4月にはISO22000(食品安全マネジメントシステム)も取得しました。

2025年3月には、ビール製造過程で生じる「麦芽粕」を活用した再生紙で名刺を作るプロジェクトも始動しています。麦芽粕は、大量に出るけれど使い道の限られる副産物です。それを名刺にする。小さいけれど、話のきっかけになる取り組みだと思います。

オリオンハッピーパーク

2011年5月に名護工場内でグランドオープンした見学施設です。会社の沿革によれば、2015年5月にトリップアドバイザーの「殿堂入り」、2018年11月には来場者100万人を達成しました。2025年3月にリニューアルオープンし、2026年5月には15周年を迎えています。

見学の流れは、こうです。

  • 1階メインロビーで受付。2025年に改装され、フォトスポットもある
  • 2階ギャラリースペースに集合。昭和40年代の「まちやぐゎー」(小さな商店)を再現し、当時のオリオンビールのある風景と会社の歴史を展示
  • 製造工程を見学
  • 締めくくりはできたてのテイスティング(お一人様2杯まで)。ドライバーや20歳未満の方にはソフトドリンクを提供

営業時間は9時30分から17時(電話受付は16時まで)、休館日は日曜・月曜と年末年始。定員制のため事前予約が必要です。所在地は沖縄県名護市東江2-2-1、那覇空港から沖縄自動車道の許田インターを降りて国道58号を北へ約10分。

2階にはオフィシャルストアとビアレストラン「やんばるの森」があり、工場見学をしない方でも利用できます。レストランでは新鮮なオリオン ザ・ドラフトと、醸造家が手作業で造る限定クラフトビールが飲めます(提供状況は時期により変動)。2026年5月には、アルミ缶リサイクルの常設展示エリアも新設されました。

公式サイトが注意書きとして、「工場見学後のビールのご試飲は、ドライバーの方にはサービスしておりません。運転代行サービスの利用はおすすめしておりません」とはっきり書いている点は、酒類メーカーとして誠実な姿勢だと思います。

飲食店の経営者の方には、この施設そのものを見に行くことをおすすめします。「工場を見せる」「歴史を見せる」「その場で飲ませる」「グッズを売る」「レストランで食べさせる」を一本の動線につないだ、体験型ビジネスの教科書です。あなたのお店の厨房も、見せ方次第でコンテンツになります。

ホテル事業と、ジャングリア沖縄

オリオンビールのもう一つのセグメントが、観光・ホテル事業です。歴史は意外に古く、1972年11月に株式会社ホテル西武オリオンを設立、1975年6月に那覇市安里で「ホテル西武オリオン」を開業しました。西武流通グループとの共同出資でした。

  • 2001年7月 株式取得により完全子会社化
  • 2006年4月 「ホテルロイヤルオリオン」に名称変更
  • 2013年11月 株式会社ホテルオリオンモトブを設立
  • 2014年7月 本部町備瀬に「ホテルオリオンモトブリゾート&スパ」開業
  • 2023年11月 「オリオンホテル 那覇」としてリニューアルオープン
  • 2024年4月 「オリオンホテル モトブ リゾート&スパ」としてリニューアルオープン
  • 2025年5月 オリオンホテル 那覇の土地・建物を譲渡
  • 2025年5月 オリオンホテル モトブ リゾート&スパが「都ホテルズ&リゾーツ」に加盟

オリオンホテル モトブ リゾート&スパは客室数238室、全室オーシャンフロント・バルコニー付きのリゾートホテルです。2023年11月にはオリオンホテル 那覇にビアダイニング、2024年4月にはモトブにビアバーを開設し、名護工場で造った本格クラフトビールを提供しています。ビール会社がホテルを持つことの意味が、ここに出ています。

沖縄県本部町にあるオリオンホテル モトブ リゾート&スパの外観
オリオンホテル モトブ リゾート&スパ(撮影時の名称はホテルオリオンモトブリゾート&スパ、2017年撮影)。出典: ウィキメディア・コモンズ「File:Hotel Orion Motobu Resort & Spa.JPG」撮影者: Abasaa(ライセンス: PD-self/作者によるパブリックドメイン宣言)取得日 2026-08-18

ゴルフ場を閉めて、テーマパークに貸した

2002年12月に設立した「オリオン嵐山ゴルフ倶楽部株式会社」は、2022年3月にゴルフ場を閉鎖し、その土地をテーマパーク用地として賃貸しました。そして2025年7月、そこに「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」が開業します(沖縄県国頭郡今帰仁村呉我山ほか)。

オリオンは、テーマパーク事業を行う株式会社ジャパンエンターテイメントホールディングスへ2018年10月に出資し、同社および子会社へ取締役を派遣しています。2025年4月にはオフィシャル・マーケティング・パートナーシップにも参画しました。

ゴルフ場という時代の役割を終えた資産を、テーマパークの土地に変えた。そして自社は土地を貸す側に回りつつ、出資者としても関わる。北部の観光需要が増えれば、ビールも、ホテルも、賃料も伸びる。実にしたたかな設計です。2026年1月と2025年7月には、オリオンブランド横断の「ジャングリア沖縄ご招待キャンペーン」も実施されています。

なお、オリオン沖映合同会社が所有していたJR九州ホテルブラッサム那覇は2025年3月に譲渡され、同社は2025年7月に解散・10月に清算の予定です。中長期経営方針にある「アセットライト化の推進による資産効率の向上」が、着実に実行されています。

数字で見る、いまのオリオンビール

連結業績の推移

項目 第67期(2024年3月期) 第68期(2025年3月期) 第69期(2026年3月期)
売上高 26,009百万円 28,866百万円 29,713百万円
経常利益 2,818百万円 3,447百万円 4,118百万円
親会社株主に帰属する当期純利益 4,649百万円 7,301百万円 3,641百万円
純資産額 25,013百万円 18,968百万円 18,483百万円
総資産額 55,132百万円 50,875百万円 44,089百万円
自己資本比率 45.4% 37.3% 41.9%
自己資本利益率(ROE) 19.8% 33.2% 19.5%
1株当たり当期純利益 85.25円 133.90円 88.59円

2026年3月期のセグメント別販売高は、酒類清涼飲料事業23,921百万円(前期比105.3%)、観光・ホテル事業5,791百万円(同94.3%)。ホテルが減っているのは、那覇のホテルとJR九州ホテルブラッサム那覇の譲渡によるものと見るのが自然です。

売上高の構成については、有価証券報告書がリスクとして率直に書いています。ビール類(ビール・発泡酒・新ジャンル)が2025年3月期の売上高の7割超、そのうち沖縄県内のビール類だけで61%。「特定事業分野への依存度について」というリスク項目で、発生可能性:高、影響度:大と評価されています。

県外・海外比率を、この5年で倍にした

この会社が何と戦ってきたかを、いちばん端的に示すのが次の2つの数字です。

指標 2020年3月期 2025年3月期
酒税軽減措置が及ばない県外・海外の売上構成比 約12% 約23%
酒類清涼飲料事業の売上高営業利益率 10.9% 14.0%

5年で、軽減措置に守られない売上の割合をほぼ倍にし、利益率を3.1ポイント上げた。2026年10月に備えて、体を作り替えてきた5年間だったということです。有価証券報告書も、この2つを「軽減措置の段階的廃止影響を低減させるべく」実施した施策として明示しています。

中長期の目標

2025年8月21日に公表された「中長期経営方針及び目標達成のための事業戦略について」によれば、目標は次のとおりです。

指標 2025年3月期 中長期目標
売上高(酒税抜き)年平均成長率 約5%
EBITDAマージン(酒税抜き) 22.30% 約24%
ROE 10.80% 約15%

※ EBITDAは営業利益+減価償却費+のれん償却費。ROEは不動産売却益を除く税引前当期純利益×(1−想定税率30%)÷期首期末平均純資産、という前提が同資料に注記されています。

そして5つの事業戦略。

  1. 沖縄県内での圧倒的なポジションの確立(ザ・ドラフトの売上拡大、エコノミービールの強化、観光客向けマーケティング強化、業務用商品の単価向上、RTDの販売拡大)
  2. 沖縄県外におけるパートナーシップ強化(アサヒビール・県外卸との連携強化、小売との成功事例の横展開)
  3. 海外における独自ポジションの確立(高成長エリアへの重点展開、プレミアム化、代理店との関係強化、ライセンス製造モデルの横展開)
  4. ブランドライセンス事業の強化(国内外ライセンシーの拡大、商品カテゴリの拡大)
  5. 観光・ホテル事業を通じた魅力的な沖縄体験の提供(アセットライト化、近鉄グループとジャングリアとの連携強化)

1番に「業務用商品における単価向上」が入っていることに、私は注目しました。樽生の値段を上げにいくという宣言です。飲食店にとっては原価の話ですが、同時に「もっといい一杯を出せば、もっと高く売れる」という提案でもあります。前述の樽生5原則と、この戦略は一本の線でつながっています。

オリオンが沖縄でやってきた、ビール以外のこと

会社沿革を読んでいると、商品や工場の記録に混じって、こういう行が繰り返し出てきます。

  • 1984年1月 児童養護施設や母子生活支援施設への「お年玉寄付」開始
  • 2009年4月 「We Love OKINAWA」キャンペーン第1弾。ドラフトビール1本につき1円を沖縄のサンゴ礁保護活動に寄付
  • 2016年8月 オリオンビール奨学財団設立。2017年4月に公益財団法人へ移行し奨学金事業を開始
  • 2020年7月 ビーチクリーンプロジェクト「マナティ」と協業開始
  • 2020年9月 首里城再建のため、県内企業と連携した「首里城 うむいの燈」プロジェクト開始
  • 2021年2月 県内のシングルマザーを対象にしたキャリア支援事業を開始(オリオンビール奨学財団)
  • 2021年10月 JAおきなわと農畜産物優先利用等に関する包括提携協約を締結
  • 2022年11月 国頭村・国頭村森林組合・農林中央金庫那覇支店と協働し、やんばる国立公園にイヌマキの苗を植樹
  • 2025年3月 オリオングループ育成のイヌマキ5,000本のCO2吸収量が「沖縄県CO2吸収量認証制度」で認証
  • 2025年10月 経済困窮世帯の子どもの大学進学を支援する「進学応援みらい基金」を創設

1984年の「お年玉寄付」から40年以上。景気が良かろうが悪かろうが、ファンドの傘下に入ろうが上場しようが、続いている。企業の本気度は、こういう「やめなかったこと」に表れるのだと思います。

ちなみに、2020年3月期のコロナ禍では「ちゅらグルメと共同で飲食店応援プロジェクト」を実施しています。県内飲食店の8割にサーバーを置いている会社ですから、飲食店が止まれば自社も止まる。共存共栄という言葉が、標語ではなく実務である会社です。

2008年当時、沖縄県浦添市にあったオリオンビール本社
浦添市にあった当時のオリオンビール本社(2008年1月27日撮影)。本社は2020年5月に豊見城市へ移転した。出典: ウィキメディア・コモンズ「File:Orionbeer2.jpg」撮影者: Kattin(ライセンス: GFDL/CC BY-SA 3.0)取得日 2026-08-18

飲食店を経営されている、あなたへ

ここまで長くお付き合いいただき、ありがとうございました。最後に、この記事から持ち帰っていただきたいことを3つに絞ります。

1. 2026年10月1日は、メニューを組み直す日です

繰り返しになりますが、この日に二つのことが同時に起こります。

  • 全国のビール系飲料の酒税が350ml換算で54.25円に一本化(ビールは9.1円の減税、新ジャンル由来の発泡酒②は7.26円の増税)
  • チューハイ等その他の発泡性酒類が28.00円から35.00円へ(7.00円の増税)
  • 沖縄県産酒類のうちビール等の酒税軽減措置が廃止

ビールが安くなり、ハイボールとサワーが高くなる。あなたのお店の売れ筋がどちらに寄っているかで、影響は正反対です。9月中に卸の新価格表を取り寄せて、品目ごとに原価を引き直してください。ついでにグランドメニューの写真と文言も見直せば、一石二鳥です。

2. 樽生の品質は、設備ではなく手順で決まります

オリオンの「うまい!樽生の5原則」は、どのメーカーのビールでも通用します。毎日の水通し洗浄、週1回以上のスポンジ通し洗浄、ジョッキの分別洗浄、泡とビールの比率20〜30対80〜70。この4つを守るだけで、あなたのお店の1杯目は確実に変わります。

そして、確認方法は簡単です。お客さまが半分飲んだジョッキに、泡のリングが残っているか。今夜、見てください。

3. 地元の産物を、まず地元の10人に飲ませてください

1959年、島でつくったビールは「島ぐゎー」と呼ばれ、格下に見られました。それを覆したのは広告ではなく、桜坂を一軒ずつ回るローラー作戦でした。67年後、この会社は東証プライムに上場し、英国のスーパーの棚に並んでいます。

すべての強いブランドは、最初は誰にも相手にされていない。あなたのお店の新しい看板メニューも、たぶん同じです。まず、目の前の10人に出してください。感想を聞いてください。翌週また出してください。それしか道はないし、それで足りるのだと、オリオンビールの67年は教えてくれます。

本記事で参照した資料の一覧

すべて2026年8月18日に取得・確認しています。

一次資料(オリオンビール公式)

一次資料(取引所・公的機関)

報道・二次資料

本記事で使用した画像と、その利用条件

オリオンビール公式サイトの利用規約には「当サイトに掲載されている商標及びすべての写真、イラスト、動画、ロゴ、文章等の著作権等は、オリオンビールまたは当該著作権等を保有する第三者によって管理されています。法律で規定されている範囲を超えて当社またはこれら著作権者の商標または著作権等を無断で使用することはできません」と明記されています。したがって、公式サイトおよびプレスリリースの画像は一切使用していません。ダウンロードもしていません。

本記事に掲載した画像は、すべてウィキメディア・コモンズ上で利用条件が明示されているものです。

画像 ファイル ライセンス クレジット
オリオンビール名護工場 File:Orionbeer.jpg PD-author(作者による著作権放棄) 「沖縄発!役に立たない写真集」
1960年ごろのオリオンビール広告 File:Advertisement of Orion Breweries circa 1960.jpg PD-Japan-organization(日本国内でパブリックドメイン) 出典:オキナワグラフ社「オキナワグラフ」1961年2月号
オリオン 75BEER ピルスナーの缶 File:Orion 75 Pilsner Beer.jpg CC BY-SA 4.0 撮影:Sgroey
カナダで販売されているオリオンの633ml瓶 File:Orion Premium Draft Beer, 633 mL bottle as sold in Canada.jpg CC BY-SA 4.0 撮影:Yuet Man Lee
オリオンホテル モトブ リゾート&スパ File:Hotel Orion Motobu Resort & Spa.JPG PD-self(作者によるパブリックドメイン宣言) 撮影:Abasaa
浦添市にあった当時のオリオンビール本社 File:Orionbeer2.jpg GFDL/CC BY-SA 3.0 撮影:Kattin

本記事に残した【要確認】の一覧

調べきれなかった点は、隠さず残します。

  • 【要確認:アサヒビールが2002年に取得した株式の比率・株数・取得時期の正確な数字】 2019年1月時点で72,000株・10.00%であることは確認できましたが、2002年時点の条件は一次資料に当たれていません。
  • 【要確認:2019年TOBの最終的な応募株数と成立日】 沿革の記載は「2019年3月」のみです。
  • 【要確認:近鉄グループホールディングスによる株式取得価額】 プレスリリースに金額の記載はありません。
  • 【要確認:2026年3月31日より後の株主構成】 本記事の株主データは第69期末時点です。
  • 【要確認:終売した各銘柄の終売年】 オリオンライトビール、オリオントマトジュース、オリオンドライビール、オリオンレモンティー、オリオンピルスビール、茶願寿、オリオン黒生ビール、オリオンアロマトーン、オリオンスペシャル辛口生、オリオン鮮快生、オリオンアクアビート、オバァ自慢のさんぴん茶、オリオンスペシャルⅩ、オリオンスタイル、オリオンゼロスター、オリオン ドラフトエクストラ、オリオン贅沢気分、オリオントロピカルコレクション。いずれも現在の公式ラインナップに掲載がないことは確認しましたが、終売年は公表資料で確認できませんでした。
  • 【要確認:オリオンアクアビートの酒類区分】 沿革に商品名の記載のみ。
  • 【要確認:オリオン夏いちばんの直近の発売有無】 2013年6月発売の記録はありますが、近年のニュースリリースには見当たりません。
  • 【要確認:沖縄県内向けビールの税額試算の前提】 本記事の「350ml当たり約53.85円→54.25円」という計算は、経過的な税率に軽減率を乗じるという前提での試算です。実際の課税計算は所轄税務署または取引先卸売業者にご確認ください。
  • 【要確認:ウィキメディア・コモンズ掲載画像の直接埋め込み(ホットリンク)の可否】 本記事では原本URLを直接参照していますが、公開時には画像を自社サーバーへ複製し、上記のクレジットとライセンス表示を添えて掲載することを推奨します。
  • 【要確認:1961年の広告画像の米国内での著作権状態】 当該画像には日本国内でのパブリックドメインを示すタグに加え、米国では著作権が回復している可能性を示すタグが併記されています。日本国内向けの掲載では問題ないと判断しましたが、英語版など国外向けに転用する場合は再確認が必要です。

おわりに

1957年、米国統治下の沖縄で、「郷土の若者に勇気と希望を与えたい」という一人の実業家の思いから、この会社は始まりました。名前は県民が決め、最初の一杯は「島ぐゎー」と呼ばれ、それでも桜坂を一軒ずつ回って売り歩きました。

本土に復帰し、5年の約束だった酒税の軽減措置は50年続き、そしていま、終わろうとしています。会社はその間に、ファンドの手を借りて体質を作り替え、県外と海外の売上比率を倍にし、東証プライムに上場しました。2026年10月1日、この会社は初めて、特例のない土俵に立ちます。

私はこの記事を、単なる企業紹介として書いたつもりはありません。制度に守られていた期間に、何を仕込んだか。それが問われる瞬間が、どの会社にもいつか来ます。補助金でも、優遇税制でも、大手の下請けでもいい。守られている間に、守られなくても立てる体を作ったかどうか。オリオンビールの5年間は、その問いに対する一つの回答です。

次に沖縄の居酒屋で「とりあえずオリオン」と言うとき、あるいは本土のスーパーで「アサヒオリオン」の缶を手に取るとき、この記事のどこか一行でも思い出していただけたら、書いた甲斐があります。

ジョッキに、泡のリングが残っていますように。

ご注意

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。飲酒運転は絶対にやめましょう。

妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。お酒は、おいしく、適量に。飲んだあとの容器はリサイクルにご協力ください。

本記事の内容は2026年8月18日時点で公表されている資料にもとづいています。税率・価格・商品ラインナップは変更される場合があります。仕入れや価格設定の判断は、必ず最新の公式発表および取引先へのご確認のうえで行ってください。

㈱デリシャスノーツでは、飲食店の経営者さま向けに、メニュー設計と価格戦略の見直し、ウェブ集客の立て直しのご支援をしています。「2026年10月の酒税改正にあわせて、うちの店のドリンクメニューを丸ごと組み直したい」というご相談は、お問い合わせフォームよりお寄せください。

オリオン THE DRAFT の缶が並ぶ壁と、ひまわり

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