サントリービールの歴史と全銘柄年表|1963年の参入からプレミアム・モルツまで

「うちの店、生ビールは何を置いていますか」——飲食店の経営者さんとお話ししていると、私はよくこの質問から入ります。返ってくる答えはたいてい銘柄名ひとつです。けれど、その一本の裏側には、六十年を超える会社の格闘と、税制と、水源の森と、無数の失敗作が積み上がっています。それを知っているかどうかで、お客さまへの一言が変わる。ドリンクメニューの見え方が変わる。私はそう思っています。
この記事では、サントリーのビール事業を、1963年の参入から2026年の今日まで、まるごと追いかけます。会社の年表をなぞるだけの記事にはしません。どんなビールが、いつ、どんな名前で世に出て、どう消えていったのか。そしてラガーとエールは何が違い、発泡酒と新ジャンルはなぜ生まれ、ノンアルコールビールはどうやって造られているのか。この二つを記事の背骨に据えます。
私は酒類メーカーの人間ではありません。飲食店の集客を仕事にしている人間です。だからこの記事は、蔵書家の趣味ではなく、店で酒を売る人間の目線で書きます。数字と年号は、確認できた一次情報だけを根拠に書きます。裏が取れなかったことは、無理に埋めず、分かる範囲にとどめました。
この記事で分かること
- サントリーがビールに手を出した本当の理由と、その「前史」にあたる戦前のビール事業(オラガビール)の顛末
- 1963年のビール参入で何が起き、なぜ長く苦戦したのか(公式に確認できる範囲での「黒字化」の話も)
- 1967年「純生」が起こした「生ビールとは何か」という業界論争
- 1986年「モルツ」が、なぜ麦芽100%という選択をしたのか
- 2003年「ザ・プレミアム・モルツ」がプレミアムビール市場をどう変えたのか
- 主要銘柄の発売年表——定番だけでなく、消えていった銘柄・季節限定・地域限定まで、時代ごとの表で一望できます
- ビールの種類そのものの解説——ラガーとエール、麦芽とホップ、デコクション製法、発泡酒と新ジャンルの区分、ノンアルコールの造り方
- 酒税法の三段階改正(2020年10月・2023年10月・2026年10月)が、店の原価にどう効くのか
- 「金麦」が2026年10月にビールへ変わるという、いま起きている大きな地殻変動
- 「水と生きる」という言葉の中身——天然水の森、工場見学の現在地
- 飲食店として、この歴史をどう商売に使うか
長い記事です。目次代わりに見出しだけ拾い読みしていただいても構いません。ただ、年表の章とビールの種類の章だけは、できれば通してお読みください。ここが一番、明日の店に効きます。
第1章 なぜ、この一社を追いかけるのか
「後発」がいちばん多くを語ってくれる
日本のビール業界は、長らく寡占でした。大手三社が市場を分け合い、新規参入者はほとんど生き残れない。設備投資は重く、流通網は既存メーカーに握られ、消費者の舌は保守的です。そこへ、洋酒の会社が真正面から突っ込んでいった——それが1963年のサントリーです。
先行者の歴史は「成功の記録」になりがちです。一方、後発の歴史は「なぜ売れなかったか」の記録が濃く残る。商売をしている人間にとって、参考になるのは圧倒的に後者です。私はそう考えています。
そしてもう一つ。サントリーのビール事業は、日本のビール類市場そのものの構造を、二度も三度も作り替えてきました。1994年の発泡酒「ホップス」、2007年の新ジャンル「金麦」、2010年のノンアルコール「オールフリー」。これらはいずれも、その後の市場のカテゴリー自体を生んだか、大きく広げた商品です。市場のルールが書き換わる瞬間に、この会社は何度も立ち会っている。だから一社を追うだけで、業界全体が見えてくるのです。
飲食店にとっての「銘柄選び」は経営判断そのもの
あなたのお店で樽生を一種類しか置けないとしたら、その一種類はお店の看板の一部です。値段、原価率、卸の条件、サーバーの貸与、販促物、そして何より「お客さまがそれを頼みたくなるか」。ぜんぶが絡みます。
2026年10月の酒税改正は、この判断の前提を変えます。ビールと発泡酒と新ジャンルの税率が一本化されるからです。つまり「安いから第三のビール」という選び方の根拠が、制度上なくなる。この意味を先に理解しておけば、卸の営業さんが来たときに、こちらから話を組み立てられます。
だから、歴史なのです。歴史は教養ではなく、次の判断のための材料です。
第2章 前史——鳥井信治郎と、ウイスキーの会社がビールに挑んだ理由
1899年、大阪。ぶどう酒から始まった
サントリーの創業は1899年(明治32年)。創業者・鳥井信治郎が大阪市で「鳥井商店」を開業し、ぶどう酒の製造販売を始めたのが出発点です(1921年に「株式会社 寿屋」を創立)。当時の日本で洋酒といえば、ごく一部の人が薬のように葡萄酒をたしなむ程度のもので、庶民には縁遠い飲み物でした。
信治郎は本場のぶどう酒の味を知って、スペインからの輸入ワインを売り出します。ところがこれが渋く、酸味も強すぎる。日本人の口には合わず、商売は大失敗に終わりました。ここで引かないのが、この人の異様なところです。試作に次ぐ試作の末、1907年に甘味葡萄酒「赤玉ポートワイン」を完成させます。斬新なネーミング、ボトルデザイン、広告——それらが噛み合って大ヒットし、これがサントリーの礎になりました。
「世界のどこにもない、日本のぶどう酒や」(サントリーホールディングス採用サイト「やってみなはれの歴史」より)
「やってみなはれ」の原点は、周囲の猛反対だった
「やってみなはれ」という言葉は、いまでこそサントリーの代名詞として広く知られています。ですがこれは、景気のいいスローガンとして生まれた言葉ではありません。信治郎が未知の分野に挑もうとして周囲から反対を受けるたび、その反対を押し返すために発した言葉です。同社の公式サイトはそう説明しています。
その最初の大勝負がウイスキーでした。リキュール用のアルコールが偶然発酵してできた「トリスウイスキー」が評判を呼んだことから、信治郎は「日本にもいつかウイスキーの時代がくる。自分の手でウイスキーをつくりたい」と志します。周囲は猛反対しました。当然です。ウイスキーは仕込んでから売れるまでに何年もかかる。回収の見えない投資です。
「自分の仕事が大きくなるか小さいままで終わるか、やってみんことにはわかりまへんやろ」(同上)
信治郎は赤玉ポートワインの利益のほぼ全てを国産ウイスキー製造に投じました。1923年に山崎蒸溜所を建設、1929年に日本初の本格ウイスキー「サントリーウイスキー白札」を発売。そして1937年、ウイスキーづくりに踏み出して13年目に「サントリーウイスキー角瓶」が生まれます。
1928年、最初のビール事業——「オラガビール」の失敗
ここが、意外と知られていない話です。サントリー(当時は寿屋)は、1963年より前に一度、ビール事業をやっています。そして、負けています。
公式の採用サイトはこう説明しています。初代社長・鳥井信治郎は、商品化に時間のかかるウイスキーと、製造期間の短いビールの二本柱による経営を意図していた。そこで赤玉ポートワインで得た資金をもとに、1928年(昭和3年)12月、神奈川県横浜市鶴見区の日英醸造(商標名「カスケードビール」)を買収します。
そして1930年(昭和5年)、当時の前首相・田中義一の愛称にちなんで「オラガビール」と改称し、価格政策と宣伝攻勢でヒット商品に育て上げました。ここまでは成功です。
ところが、危機感を強めた競合企業からリターナブル瓶の共用を拒まれるなど、流通の根っこで苦境に立たされます。ビール瓶は当時、業界で共用して回収・再利用するのが前提でした。それを断られるということは、容器のコストを一社で丸ごと背負うということです。結果、1934年(昭和9年)2月、ビール事業は売却されました。
私はこのエピソードを、飲食店の方によくお話しします。商品が良くても、宣伝が上手くても、流通の共通インフラから外されたら勝負にならない——これは業種を問わず効く教訓だからです。いまでいえば、予約サイトやデリバリーのプラットフォームから外れる、という話に近い。
撤退から29年。宿題は次の世代に持ち越された
1934年の撤退から、1963年の再参入まで29年。この間、サントリーはウイスキーで大きくなりました。戦後の高度経済成長とともに洋酒文化は広く浸透し、ウイスキー事業は順風満帆になります。
普通なら、そこで満足します。うまくいっている事業があるのですから。ところが、1961年に二代目社長に就任した佐治敬三は、この状況に安住しませんでした。社内の緊張感を高めるためにも、最難関のビール事業に挑戦すると意志を固めます。
そして父・信治郎も、こう背中を押しました。
「やってみなはれ」
信治郎は1962年に亡くなります。翌1963年、ビール事業が始まりました。父が果たせなかった宿題を、息子が引き受けた形です。
第3章 1963年——社名が「サントリー」になった年、ビールが始まった
「寿屋」から「サントリー」へ
1963年(昭和38年)は、この会社にとって二重の意味で節目の年です。ビール事業への本格参入と、社名変更が同じ年に起きている。
同年3月、新天地に向かう思いを込めて、「株式会社 寿屋」から「サントリー株式会社」へ商号を変更します。そして4月、武蔵野ビール工場(東京都府中市矢崎町)の竣工とともに「サントリービール」を発売しました。公式サイトの沿革は、この出来事を「ビール事業へ挑戦」として明確に位置づけています。
社名を、自社の看板ブランドだった「サントリー」に合わせる。同時に、まったく新しい戦場に出る。この二つを同じ年にやるというのは、外から見ている以上に大きな覚悟だったはずです。
デンマークに学びに行った
佐治敬三は、「やるからには日本になかったビールを」と考えました。そして社員とともにデンマークへ、製造・販売に関するノウハウを学びに行きます。手本にしたのはカールスバーグです。クリーミータイプの泡と、爽快な喉ごし。それが目指す姿でした。
ここが面白いところで、のちに2020年代のサントリーは、そのカールスバーグを日本でライセンス生産・販売することになります。60年越しに、手本にした相手のビールを自社で造る。歴史というのは、こういう回収の仕方をするものかと思います。
最初のビールは「熱処理ラガー」だった
1963年に世に出た「サントリービール」は、熱処理をしたラガービールでした。サントリーの歴代ビールを見渡すと、この初代だけが唯一の熱処理ラガービールという位置づけになります(1967年以降、同社は長く生ビールのみを製造する会社になります)。
発売初期は、朝日麦酒(現・アサヒビール)の販売網を借りて売り出しました。自前の流通を持たない後発が、まず既存の網に乗せてもらう。理にかなった判断ですが、それでも苦戦は続きます。
ここで一点、正直に書いておきます。同社の採用サイトには「63年4月、徹底した微生物管理の下でつくられた日本発の生ビールを発売」という記述があります。一方で、1967年発売の「純生」を非熱処理の生ビールの起点とする記述も広く流通しています。1963年の初代商品を「生ビール」と呼べるかどうかは、公表されている資料そのものが食い違っているのです。片方を採って断定できる状況ではありません。本記事では、非熱処理の生ビールを1967年の「純生」から数える整理に沿って書き進めます。六十年前に出た一本の造り方が、いまも一つの表現に収まっていない。長く続いた事業ほど、こういうことは起こります。
水を選び、土地を選び、それから工場を建てた
参入時から一貫していることが一つあります。水です。
サントリーの公式「ビール事業」ページには、こう書かれています。原材料の約9割を占める水には、ビールづくりを始めた当初(1963年)から徹底的にこだわり、目指す商品づくりに適したミネラルやイオンの量・バランスを持った天然水を選び、その水が採取できる土地を選んで工場を建設した——と。
普通は逆です。物流や人手や地価から工場の場所を決める。ところがこの会社は、水から場所を決めた。武蔵野工場は丹沢水系、京都工場は天王山・京都西山水系、群馬(旧・利根川)工場は赤城山水系、九州熊本工場は南阿蘇外輪山水系。四つの工場が四つの水系に対応しています。
これがのちに、「同じモルツでも工場によって味が違う」という現象を生みます。2005年6月には、その味の差を利用した「モルツ飲み比べセット」が限定発売されたこともありました。飲食店の商売という観点でいえば、これは相当に美味しい話です。同じ銘柄でも造られた工場で味が違う——これほど会話が転がる素材はそうありません。

工場は増えていった——四つの拠点
参入後、生産拠点は順に増えていきます。
- 1963年 武蔵野ビール工場(東京都府中市矢崎町3-1)/サントリー初のビール工場。現在の名称は「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」
- 1969年 桂ビール工場(京都府乙訓郡長岡町=現・長岡京市)/のち2000年に「京都ビール工場」と改称。サントリービール第2の生産拠点。敷地面積約10万平方メートル。現在の名称は「サントリー〈天然水のビール工場〉京都」
- 1982年 利根川ビール工場(群馬県邑楽郡千代田町)/第3の生産拠点。現在の名称は「サントリー〈天然水のビール工場〉群馬」
- 2003年 九州熊本工場(熊本県上益城郡嘉島町)/第4の生産拠点。同年7月11日竣工。ビール・発泡酒に加えて清涼飲料も生産する総合工場
2017年3月14日、武蔵野・京都・利根川の三工場は「サントリー〈天然水のビール工場〉」へ名称を変更しました。2022年7月1日には「〈天然水のビール工場〉群馬・利根川」が「〈天然水のビール工場〉群馬」へさらに改称されています。工場の名前に「天然水」を入れる——ここまでやるか、というブランディングです。

第4章 苦戦の時代——「やってみなはれ」が試された長い年月
1967年「純生」——生ビールの定義をめぐる論争
1967年(昭和42年)、サントリーは熱処理ビール「サントリービール〈ラガー〉」の事実上の後継として、非熱処理ビール「サントリービール〈純生〉」を発売します。
技術的な核はミクロフィルターでした。熱処理をせず、微細なフィルターで酵母を取り除く。これによって、加熱による風味の変化を避けたビールを瓶で流通させられるようになりました。
ところがこれが、業界を巻き込む論争になります。「生ビールとは何か」「『純生』という商標を認めてよいのか」。他のビール会社との間で議論が交わされました。最終的にはサントリーの主張が認められる形で終結し、現在では「熱処理をしていないビール」を生ビールと呼ぶという理解が定着しています。
ここは、飲食店にとって決定的に大事な話です。あなたのお店で「生ビール」と書いてジョッキで出しているそれは、樽だから生なのではありません。熱処理をしていないから生なのです。缶でも瓶でも、熱処理をしていなければ生ビールです。この定義の整理に、サントリーが直接関わっている。「生ビール」という言葉の今日の意味は、1967年のこの一件を経て固まったものです。
ブランドの迷走——名前を変えても、売れない
「純生」は爆発的な人気を呼んだと伝えられます。しかし、事業としてはそこから長い苦戦が続きました。
1980年代、サントリーはブランドイメージを刷新すべく名前を変えていきます。「サントリー生ビール」、缶製品では「サントリーCANビール」。ですが、改善には程遠かった。最大手のキリン、さらにアサヒやサッポロに大きく水をあけられた状態が続きます。
この時期の商品名を並べると、迷走の度合いが伝わってきます。ツイスト300(1983年)、ビーハイ(1984年)、サントリー生ビールアワCAN(1985年)……。アワCANは、缶底のクリップを弾くと泡が発生するという仕掛けの商品でした。中身で勝てないから、飲み口や仕掛けで差をつけようとする。追い詰められた側がやることは、業種を問わず似ています。
1984年「ビーハイ」——20年早すぎた第三のビール
1984年(昭和59年)に発売された「ビーハイ」は、その名のとおりビールを焼酎で割った商品でした。成果が出ず、製造販売中止になっています。
ところが後年、この発想がまるごと蘇ります。発泡酒にスピリッツを混ぜる——これは2004年以降の「第三のビール」の製法そのものです。1984年のビーハイは、今日の第三のビールのルーツにあたる商品として位置づけられています。
私はここに、この会社の性格が出ていると思っています。失敗した実験を、捨てていない。20年後に制度が変わったとき、引き出しから取り出して使う。飲食店でいえば、一度やってボツにしたメニューのレシピを取っておくようなものです。時代が変われば刺さることがある。
1987年、ドライ戦争——後発の後追いは、たいてい報われない
1986年に麦芽100%の「モルツ」を出した翌年、アサヒビールが「スーパードライ」を投入して大ヒットします。市場は一気にドライ一色になりました。
サントリーも追随し、「サントリードライ」を発売します。同時に、麦芽100%のドライビール「冴」も市場にありました。ですが、この追随戦は実を結びません。
その一方でサントリーは、モルツについて「私はドライではありません」というコピーを打ちました。山本浩二、古今亭志ん朝、藤竜也、五木ひろし、郷ひろみらを起用したCMで、当時から品質の良さを訴求しています。
市場全体が一方向に流れているときに、「うちは違います」と言い切るのは勇気が要ります。しかもこの会社は、同時にドライ商品も出している。矛盾しているようですが、実務としては両方やるしかなかったのでしょう。本命を守りながら、流行にも一応張っておく。中小の飲食店でも、よくある構図です。
「45年赤字」という有名な話を、事実の範囲で扱う
サントリーのビール事業といえば、「長く赤字だった」という話が必ず出てきます。ここは慎重に、確認できる範囲だけ書きます。
2008年6月23日、当時の佐治信忠社長が新聞のインタビューで、ビール事業が2008年12月期に黒字化する見通しを明らかにしたと報じられました。実現すれば1963年の本格参入以来、初めてとなる、という内容です(J-CASTニュース 2008年6月24日付)。そして2009年2月3日の2008年12月期連結決算発表で、ビール事業が初の黒字に転じたと発表されています。
参入が1963年、黒字化が2008年。その間45年。この「45年」という数字が、いまも語り継がれている数字です。
もう一つ、経営の工夫として記録されている事実があります。2004年10月にサントリーは社内カンパニー制を導入しましたが、ビール事業は当時40年間赤字が続いていたため、利益率の高いRTD(低アルコール飲料)事業を含めた「ビール・RTDカンパニー」とすることで、カンパニーとしての収支をトントンにするという方策が採られました。
この話を、私はきれいごとにしたくありません。45年間、赤字を出し続ける事業を抱え続けられたのは、ウイスキーと清涼飲料という、稼ぐ事業があったからです。「やってみなはれ」は精神論だけでは成立しません。それを支える財布が要る。ここを外して根性論だけ真似すると、店は潰れます。
それでも、なぜ撤退しなかったのか
同社の採用サイトは、1963年の参入について、こう締めくくっています。
「最初は朝日麦酒の販売網を借りて売り出すも、苦戦は続いた。しかし、ここで撤退することなく粘り強く戦い続けたことが、後にプレミアムビール市場の開拓と悲願の黒字化達成へとつながっていくのである。」(サントリーホールディングス採用サイト「やってみなはれの歴史」)
会社の公式見解としては、こういうことになります。ただ、当事者の45年は、こんな一文で片づく長さではなかったはずです。担当者は何度も入れ替わったでしょうし、その多くは黒字を見ずに現場を去ったはずです。
第5章 1986年「モルツ」——原料に戻るという答え
名前を変えるのをやめて、中身を変えた
1980年代、サントリーは商品名を何度も変えました。「サントリー生ビール」「サントリーCANビール」。それでも順位は動かない。
そこでこの会社は、方針を変えます。他社と違うタイプのビールを作る。そのために、ビールづくりの根本である原料を見直す。
1986年(昭和61年)、コーン・米・スターチ(主にジャガイモ由来)・大麦などの副原料を一切使用せず、麦芽100%で製造された「モルツ(MALT’S)」が誕生します。
いまでこそ「麦芽100%」は珍しくありませんが、当時の国産レギュラービールで副原料をゼロにするというのは、明確な差別化でした。名前ではなく、原材料表示で勝負する。ここからサントリーのビールは、性格が変わります。

「うまいんだな、これがっ。」——コピーが売上を動かした
モルツの転機は広告でした。1992年から1994年まで、当時電通のプランナーだった佐藤雅彦を中心に企画され、萩原健一と和久井映見を起用したCMが放映されます。キャッチフレーズは「うまいんだな、これがっ。」。真心ブラザーズによるCM曲「モルツのテーマ」も相まって、売上は次第に伸びていきました。
この曲は2007年のリニューアルで、吉岡秀隆・松下奈緒・次長課長らが出演する新バージョンのCMとともに13年ぶりに復活しています(テーマ担当はSPARKS GO GO)。
飲食店の販促をやっている立場から言うと、この事例は示唆に富みます。商品を変えてから、それが売れるコピーに出会うまで、6年かかっている。商品を良くしたら翌月から売れる、という話ではないのです。
デザインが似ていると言われた話
1995年、モルツは缶とラベルのデザインをリニューアルします。ところがそのデザインが、サッポロビールの「サッポロ黒ラベル」(初代デザイン)に似ているとしてサッポロ側からクレームがつき、店頭販売までやや時間がかかりました。のちにサッポロはこのクレームを取り下げています。
大手同士でもこういうことが起きる、というだけの話ですが、看板やメニューを作る飲食店にとっても他人事ではありません。
モルツの派生と、終わりまで
モルツは長く定番として続きましたが、その歴史には終わりがあります。
- 2014年3月:瓶製品(633ml大瓶・500ml中瓶)と樽生(10L/15L/20L)が、独自技術の「HHS製法」を採用した料飲店向け「モルツ・ザ・ドラフト」にリニューアル
- 2015年7月製造分をもって出荷終了、同年8月をもって販売終了。無印の「モルツ」名義としては29年の歴史に幕
- 2015年9月:「モルツ」と「モルツ・ザ・ドラフト」を統合し、後継商品「ザ・モルツ」に改称・リニューアル。HHS製法を採用
- 2023年3月末:「ザ・モルツ」の缶ビール(個人向け)の製造・出荷を終了
- 2024年3月末:業務用の瓶ビール・樽詰ビールの製造・出荷も終了
これにより、レギュラー(非プレミアム)向けの麦芽100%ビールとしての「モルツ」の商標は、38年の歴史に幕を下ろしました。モルツの名は、現在は麦芽100%プレミアムビールである「ザ・プレミアム・モルツ」に集約されています。
そして、ザ・モルツが抜けた穴を埋める役目を担ったのが、2023年4月4日に発売された「サントリー生ビール」です。こちらは麦芽だけでなくコーングリッツを一部使用したビールで、性格はまったく違います。この話は後の章で詳しく扱います。
「モルツ球団」という長い伏線
余談ですが、1990年(平成2年)にプロ野球OBで作られた球団「MALT’S」が話題になりました。この球団は2006年以降「ザ・プレミアム・モルツ球団」と称しています。ブランド名が変わっても、球団という接点は残した。ブランドの引っ越しの仕方として、うまいやり方だと思います。
第6章 2003年「ザ・プレミアム・モルツ」——生産終了寸前から、看板になるまで
始まりは1989年、樽生限定の実験品だった
ザ・プレミアム・モルツ(公式な略称は「プレモル」)は、いきなり2003年に生まれたわけではありません。原型は1989年にさかのぼります。
東京都府中市の武蔵野ビール工場で開発された限定品「モルツ スーパープレミアム」。これが最初です。当時は樽生限定でした。
この年、武蔵野工場にはミニブルワリーが竣工しています。通常設備の20分の1というサイズで、試作品を製造するための設備です。全国四つのサントリービール工場のうち、この設備を持つのは武蔵野工場だけ。そして「モルツ・スーパープレミアム」は、このミニブルワリーで最初に製造されました。
小さく作って試す場所を持っていたこと——これが後に会社を救います。設備投資の話ですが、飲食店でいえば「まかないで試作を回す文化があるか」に近い。試せる場所がない店は、新メニューが出てきません。
2000年、缶になる。2001年、通年になる
樽生限定だった商品が、家庭に降りてきます。
- 2000年11月28日:21世紀記念として「モルツ スーパープレミアム2001」の缶製品を限定発売
- 2001年4月17日:「モルツ スーパープレミアム」の缶と中瓶を通年販売化
- 2003年5月20日:名称を「ザ・プレミアム・モルツ」に変更して発売開始
2003年の日本は、デフレの真っ只中です。そこへ、あえて高いビールを出す。「日常の中の特別な時間を豊かにするプレミアムなビール」という狙いでした。逆張りです。
2004年、「ヨーロッパで戦わせろ」という一言
ここが、この商品の運命を変えた場面です。
2004年10月、「ヨーロッパで戦わせるために権威のあるコンテストに出品せよ」という当時の常務の指示により、モンドセレクションにエントリーします。
結果、2005年、「ザ・プレミアム・モルツ中瓶」がモンドセレクションの「ビール部門グループI」で最高金賞を受賞。国産ビール製品としては初の最高金賞でした。以後、2007年まで3年連続で最高金賞を受賞し、3年連続受賞により「ハイ・クオリティ・トロフィー」が授与されています。
ここは事実の範囲を守って書きます。モンドセレクションは、ベルギーに本部を置く民間の品評会です。「世界一のビールを決める大会」ではありません。出品された製品を審査基準に照らして評価し、基準を満たしたものに賞を出す仕組みです。ですから「最高金賞=世界一」ではない。ここは正確に理解しておくべきです。
そのうえで、マーケティング上の効果は絶大だったというのが事実です。サントリー公式の沿革ページも、2005年の受賞を「ビールの本場で卓越した醸造技術と品質の高さが認められた」と記載し、社史上の重要な出来事として扱っています。
生産終了の可能性があった商品が、会社を黒字にした
受賞前のザ・プレミアム・モルツには、生産終了の可能性があったと記録されています。それが受賞によって息を吹き返しました。
そして2008年、ザ・プレミアム・モルツはヱビスビールを抜いてプレミアムビールNo.1ブランドになります。さらに同じ2008年、サントリーは1963年のビール事業開始以来初となる「ビール部門の単年度黒字」を達成しました。2008年上半期には、日本での課税出荷量の業界シェアで初めて第3位を確保しています。
整理すると、こうです。
- 1989年:武蔵野工場のミニブルワリーで、樽生限定の試作品として生まれる
- 2000〜2001年:缶になり、通年商品になる
- 2003年:「ザ・プレミアム・モルツ」に改名
- 2004年:コンテスト出品を指示される
- 2005年:モンドセレクション最高金賞(国産ビール初)
- 2008年:プレミアムビールNo.1、そして45年目にして事業黒字
試作品が生まれてから、会社を黒字にするまで19年。この時間軸を、私は飲食店の方に必ずお伝えしています。看板商品は、思いつきの翌月には育ちません。

中身は何が違うのか——素材と製法
ザ・プレミアム・モルツの原材料は、麦芽100%、ホップ、天然水100%。アルコール分は約5%(2026年時点の現行品は5.5%)。
素材面では、麦芽を普通のビールの1.2倍、アロマホップを2倍使用しているとされます。ホップはチェコ・ザーツ産のファインアロマホップを中心に、ヨーロッパ産のアロマホップを100%使用。製法としては「アロマリッチ・ホッピング製法」「ダブルデコクション法」「飛沫分離法」「長期熟成」が挙げられています。
そして2012年3月11日、「ダイヤモンド麦芽」を新たに加える全面リニューアルを実施。2015年12月にはダイヤモンド麦芽を増量するリファインが行われました。
2026年時点のサントリー公式リリースでは、ダイヤモンド麦芽について「チェコおよびその周辺国で収穫・製麦されたダイヤモンド麦芽の一部使用」と説明されています。
成功したブランドを、わざわざ壊す
2012年のリニューアルは、それなりに勇気の要る決断だったはずです。モンドセレクション最高金賞で押し上げた商品の中身を、7年後に自分で変えている。
そして2026年、さらに大きな変更が発表されました。同社の「2026年 サントリー(株)ビール事業方針」(2026年1月13日、掲載番号No.14968)によれば、ザ・プレミアム・モルツはパッケージのベースカラーを金から紺へ大幅に刷新し、中身も「さらに“深いコク”と“心地よい余韻”を実現」する方向へ進化させるとしています。
プレモルといえば金色の缶、という認識は相当に強固です。それを紺に変える。理由として公式が挙げているのは、時代とともに変わる「プレミアム」のイメージに合わせるということでした。近年は「ゆとり、余裕といった心の豊かさ」が重要になっていると考え、それを色で表現するのだといいます。
プレモルの家族——派生商品の系譜
ザ・プレミアム・モルツは、一つの商品ではなくブランドとして育ちました。主な派生を整理します。
- ザ・プレミアム・モルツ〈黒〉(2007年〜)/モンドセレクション3年連続最高金賞を記念して限定発売。以後も定期的に発売
- 〈コクのブレンド〉(2013年9月26日)/通常品と〈黒〉を最初からブレンドした期間限定品。赤いパッケージ
- 〈香るプレミアム〉(2014年5月27日)/青いパッケージの期間限定品。2015年3月に通年製品化
- 〈初摘みホップ〉(2014年11月25日)/その年に収穫したチェコ・ザーツ産ファインアロマホップを使用。2015年11月に「初摘みホップ ヌーヴォー」へリニューアル
- マスターズドリーム 醸造家の夢(2015年)/「トリプルデコクション製法」と銅製循環型ケトルによる「銅炊き仕込み」を採用したスーパープレミアムクラス
- 〈芳醇エール〉(2015年8月)/上面発酵酵母と数種類の濃色麦芽を使用したエール。オレンジのパッケージ
- 〈香るエール〉(2016年3月1日)/〈香るプレミアム〉の後継。現在は「〈ジャパニーズエール〉香るエール」として展開
- 〈サマースペシャル〉(2016年4月26日)/ハラタウ産ホップを通常品より多く使用
- マスターズドリーム〈無濾過〉(2016年7月26日)/熟成工程を終えたマスターズドリームを無濾過のまま瓶詰め
- 〈〈秋〉香るエール〉(2016年8月30日)/〈香るエール〉に数種類の濃色麦芽を加えたもの
そして近年は、ウイスキーの会社であることを活かした変わり種も出ています。マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉、同〈白州原酒樽熟成〉。ウイスキー原酒の樽で熟成させたビールです。2025年11月11日に〈山崎原酒樽熟成〉2025、2026年6月9日に〈白州原酒樽熟成〉2026がそれぞれ数量限定で発売されました。
ウイスキーとビールの両方を持っている会社にしかできない商品です。自社の他事業の資産を、別の事業の商品に持ち込む——これは飲食店でも応用が効きます。
2018年「神泡」——注ぎ方を商品にした
プレモルの販促で、業界的にも面白かったのが「神泡」です。2018年、全国12エリアで「神泡ファン代表」を立てるという大規模なキャンペーンを展開しました。
2019年3月には、超音波振動で缶の外側からクリーミーな泡を作る電動式の「神泡サーバー」を、缶の購入者向けに配布しています。液体が機構に触れないため洗浄が不要という設計でした。
ここで注目したいのは、「中身は変えずに、飲むときの状態を変えた」という点です。同じ缶ビールでも、泡の質が変われば体験が変わる。飲食店にとってこれは、そのまま自分たちの領域の話です。サーバーの洗浄、グラスの状態、注ぎ方。店で出す生ビールの価値は、中身だけで決まらない。神泡の一連の施策は、それをメーカー側が消費者に直接教育した事例だと私は見ています。
ちなみに、京都工場の見学ツアーでは「神泡アート」「神泡セルフサーブ」といった、工場ならではの体験が用意されています。
第7章 主要銘柄の発売年表——この記事の背骨
ここからが本題です。会社の歴史だけを追うと、どうしても「経営の物語」になります。ですが実際に店で売り、お客さまが手に取るのは一本一本の商品です。ですので、サントリーが世に出してきたビール類を、時代ごとの表にまとめました。
定番だけを並べても意味がありません。消えていった銘柄、季節限定、地域限定、コンビニ限定、復刻版まで、確認できたものは拾いました。終売しているものは「現況」の欄にその旨を記しています。
なお、以下の表で使う「種別」の言葉は、後の第8章で全部解説します。いま意味が分からなくても、先に読み進めていただいて構いません。
年表1:前史——戦前のビール事業(1928〜1934年)
| 発売年 | 銘柄名 | 種別 | どんなビールか | 現況 |
|---|---|---|---|---|
| 1928年 | 新カスケードビール | ビール | 日英醸造(商標「カスケードビール」)を買収して製造販売。寿屋にとって最初のビール | 終売(1930年に「オラガビール」へ改称) |
| 1930年 | オラガビール | ビール | 前首相・田中義一の愛称にちなむ名。価格政策と宣伝攻勢でヒット商品に | 終売。1934年にビール事業を売却 |
年表2:参入と苦戦の時代(1963〜1985年)
| 発売年 | 銘柄名 | 種別 | どんなビールか | 現況 |
|---|---|---|---|---|
| 1963年 | サントリービール(〈ラガー〉) | ラガー(熱処理) | ビール事業本格参入の第1号。デンマーク・カールスバーグを手本にクリーミーな泡と爽快な喉ごしを目指した。同社ビールで唯一の熱処理ラガー | 終売(1967年に純生へ移行) |
| 1967年 | サントリービール〈純生〉 | ラガー(非熱処理=生) | 熱処理をせずミクロフィルターで酵母を除去。「生ビールの定義」論争を招いた記念碑的商品 | 終売(のち「サントリー生ビール」に改称、1994年3月頃に一旦終売) |
| 1980年代 | サントリー生ビール/サントリーCANビール | ラガー(生) | 「純生」のブランドイメージ刷新のための改称。缶製品では「CANビール」を併用 | 終売 |
| 1983年 | ツイスト300 | ビール | 当時一般的だった300mlのリターナブル瓶入り | 終売 |
| 1984年 | ビーハイ | ビール+焼酎(混成) | ビールを焼酎で割った商品。今日の「第三のビール」のルーツにあたる発想 | 終売(成果が出ず製造販売中止) |
| 1985年 | サントリー生ビールアワCAN | ラガー(生) | 300ml缶・400ml缶。缶底の「アワクリップ」を弾くと泡が発生する仕掛け | 終売 |
年表3:モルツの時代(1986〜1993年)
| 発売年 | 銘柄名 | 種別 | どんなビールか | 現況 |
|---|---|---|---|---|
| 1986年 | モルツ(MALT’S) | ピルスナー(麦芽100%・生) | コーン・米・スターチ・大麦などの副原料を一切使わない麦芽100%。サントリーの主力ビールに | 終売(2015年8月、29年の歴史に幕) |
| 1987年頃 | サントリードライ | ドライビール | アサヒ「スーパードライ」の大ヒットを受けた追随商品 | 終売 |
| 1980年代後半 | 冴(さえ) | ドライビール(麦芽100%) | 麦芽100%のドライビール | 終売(※現在は「冴」の名でベイシアグループ限定の新ジャンルが存在) |
| 1989年 | モルツ スーパープレミアム | ピルスナー(麦芽100%) | 武蔵野工場のミニブルワリーで開発された樽生限定品。ザ・プレミアム・モルツの原型 | 発展的に「ザ・プレミアム・モルツ」へ |
| 1980〜90年代 | ライツ | ライトビール | カロリー30%オフでありながらアルコール度数は通常並みの4.5% | 終売 |
| 1980〜90年代 | ダイナミック | ビール | サントリー初の天然水仕込みビール | 終売 |
| 1980〜90年代 | 大地と水の恵み | ビール | サントリーで2番目に発売された天然水仕込みビール | 終売 |
| 1980〜90年代 | サーフサイド/ビターズ/ジアス | ビール | ジアスは淡褐色ビールで、サントリー初のステイオンタブ採用製品 | いずれも終売 |
| 1980〜90年代 | 氷点貯蔵(生) | アイスビール | 氷点付近で貯蔵するアイスビールタイプ | 終売 |
この表で発売年を「1980〜90年代」とした銘柄について、一つお断りしておきます。終売から年数が経った銘柄は、公表資料に発売年の記載が残っていないものがあります。ライツ、ダイナミック、大地と水の恵み、サーフサイド、ビターズ、ジアス、氷点貯蔵がそれにあたります。本記事では確認できた範囲で、時代の区分にとどめました。
もう一つ、コンビニエンスストア限定で売られたモルトセレクションという銘柄があります。第1弾はカナダ産、第2弾はイギリス産の麦芽を50%以上使ったオールモルトビールでした。こちらも発売年までは確認できませんでしたが、記録に残る銘柄として名前を挙げておきます。
年表4:発泡酒という新カテゴリー(1994〜2003年)
| 発売年 | 銘柄名 | 種別 | どんなビールか | 現況 |
|---|---|---|---|---|
| 1994年10月 | ホップス〈生〉(HOP’S) | 発泡酒(麦芽比率65%) | 日本の発泡酒市場を作った商品。350ml缶で希望小売価格180円(税別)を実現。CMには菅原文太・松方弘樹を起用 | 終売 |
| 1995年5月 | ホップス ドライ | 発泡酒 | ホップスの辛口タイプ。「マグナムドライ」のルーツ | 終売 |
| 1995年 | 秋が香るビール | ビール(季節限定) | 初年度はアメリカ製、1996〜1997年は国産のブラウンビール | 終売 |
| 1995/1996年冬 | 鍋の季節の生ビール | ビール(季節限定) | 鍋料理に合わせる冬季限定品 | 終売(1シーズンのみ) |
| 1996年5月28日 | スーパーホップス | 発泡酒(麦芽比率25%未満) | 同年秋の酒税法改正に先駆けて麦芽比率25%未満に対応。350ml缶145円(税別) | 終売 |
| 1996年 | ビアカクテル | 発泡酒 | ベリー&ビア/レモン&ビア/ジンジャー&ビアで発売。同年10月にライム&ビア・オレンジ&ビア、1997年3月にグレープフルーツ&ビア・アップル&ビアを追加 | 終売 |
| 1998年冬 | 冬が旨いうま辛口生ビール | ビール(季節限定) | 冬季限定の辛口生ビール | 終売(1シーズンのみ) |
| 1999年2月24日 | 麦の薫り | 発泡酒(麦芽比率50%未満) | 「プレミアム発泡酒」という位置づけ。価格の中途半端さが受け入れられなかった | 終売 |
| 1999年6月10日 | スーパーホップス マグナムドライ | 発泡酒 | サントリーのシェア向上に大きく寄与した商品 | 終売(のちスーパーマグナムドライへ) |
| 2000年11月28日 | モルツ スーパープレミアム2001 | ピルスナー(麦芽100%) | 21世紀記念の缶限定品。2001年4月17日に缶・中瓶を通年販売化 | 2003年に「ザ・プレミアム・モルツ」へ改称 |
| 2001年7月 | 風呂あがり〈生〉 | 発泡酒 | 飲用シーンを名前にした商品 | 終売 |
| 2001年10月10日 | ダイエット〈生〉 | 発泡酒(カロリーオフ) | 発泡酒で初めて「カロリーオフ」「ダイエット」をテーマにした商品。カロリーオフカテゴリーの初回出荷数で当時の過去最高を記録し、食品ヒット大賞を受賞 | 終売(2012年3月中旬 製造終了) |
| 2002年2月 | MD爽快仕込 | 発泡酒 | クリアでシャープなキレ味を訴求 | 終売 |
| 2002年4月 | 炭濾過 純生 | 発泡酒 | 「炭濾過仕上げ」「磨き麦使用」を新製法として採用 | 終売 |
| 2002年6月 | Ad生(アドナマ) | 発泡酒 | 缶に広告を載せることで安価な販売価格を実現した意欲作 | 終売 |
| 2002年6月25日 | スーパーマグナムドライ | 発泡酒 | 名称がアサヒビールとの訴訟問題に発展し、和解案として表記を「Superマグナムドライ」に変更 | 終売(のちマグナムドライへ) |
| 2003年5月20日 | ザ・プレミアム・モルツ | ピルスナー(麦芽100%) | 「モルツ スーパープレミアム」から改称。麦芽100%・ホップ・天然水100%。欧州産アロマホップ100%使用 | 現行の基幹ブランド |
| 2003年6月 | 楽膳(らくぜん) | 発泡酒 | 麦芽根を使用した「お腹にたまらない発泡酒」。のち「美味楽膳」にリニューアル | 終売 |
年表5:新ジャンルと黒字化の時代(2004〜2012年)
| 発売年 | 銘柄名 | 種別 | どんなビールか | 現況 |
|---|---|---|---|---|
| 2004年3月9日 | 麦風(ばくふう) | 第三のビール(リキュール型) | 麦芽100%ビールを麦焼酎で割ったビール風味アルコール飲料。サントリー初の新ジャンル | 終売(小売価格が発泡酒とほぼ変わらず、1年足らずで販売終了) |
| 2000年代 | キレ味〈生〉 | 第三のビール(その他の醸造酒型) | 麦の代わりにとうもろこしを主原料とする | 終売(「ジョッキ生」シリーズに交代) |
| 2000年代 | スーパーブルー | 第三のビール(リキュール型) | 発泡酒に小麦スピリッツ(発売初期は麦焼酎)を加えたもの | 終売 |
| 2006年2月21日 | ジョッキ〈生〉 | 第三のビール(その他の醸造酒型) | とうもろこしを原料とする。アルコール分5% | 終売(2019年末までに製造・販売終了。※現在は同名の別商品が新ジャンルとして存在) |
| 2007年2月6日 | MDゴールデンドライ | 発泡酒 | マグナムドライの後継。アルコール分6%、大麦を20%増量 | 終売(2012年6月頃 製造終了。これに伴い一旦発泡酒事業から全面撤退) |
| 2007年6月19日 | 金麦 | 第三のビール(リキュール型) | 発泡酒に小麦スピリッツを加えたもの。タンパク質を豊富に含む「旨味麦芽」を全麦芽中50%以上使用し、デコクション製法を採用。パッケージは紺基調に金の麦穂。広告は檀れいを起用 | 現行。2026年10月にビール化予定 |
| 2008年3月 | ゼロナマ | 発泡酒(糖質ゼロ) | 糖質ゼロを訴求 | 終売 |
| 2008年9月30日 | モルツ・ダークビター | ビール(コンビニ限定) | 350ml、数量限定 | 終売 |
| 2008年11月11日 | 冬道楽 | 第三のビール(冬季限定) | 糖質オフですっきりした味わい。発泡酒時代の同名商品はまろやかさが特徴だった | 終売 |
| 2008年12月16日 | モルツ・スノーホワイト | ビール(コンビニ限定) | 350ml、数量限定 | 終売 |
| 2009年4月 | ザ・ストレート | 第三のビール | アルコール度数6%。しっかりした飲みごたえと喉越し | 終売 |
| 2009年6月2日 | 豊か〈生〉 | 発泡酒 | サントリーの発泡酒として最後のレギュラー新商品 | 終売(同年中に製造終了) |
| 2009年7月24日 | トップバリュ 麦の薫り/セブンプレミアム THE BREW | 第三のビール(PB) | イオン・セブン&アイ向けのプライベートブランド供給 | 「トップバリュ麦の薫り」は2009年12月生産終了/「セブンプレミアム ザ・ブリュー」は現行 |
| 2009年9月29日 | サントリーファインゼロ | ノンアルコール | アルコール分0.00%のビールテイスト飲料。オールフリーの前身 | 終売 |
| 2010年3月 | リラックス(のち「7種のホップ リラックス」) | 第三のビール | 糖質ゼロ・プリン体70%カットしつつ7種類のホップを使用 | 終売(2011年3月 製造終了) |
| 2010年4月20日 | 絹の贅沢 | 第三のビール | アロマホップ100%、磨き麦を副原料に使用、熟成期間を基準より長く設定。2011年9月13日に通年販売化 | 終売(2013年2月 製造終了) |
| 2010年8月3日 | オールフリー | ノンアルコール | アルコール・カロリー・糖質の「3つのゼロ」を実現。低プリン体 | 現行の基幹ブランド |
| 2012年4月3日 | 金麦〈糖質70%オフ〉 | 第三のビール | のち2014年4月に糖質75%オフへ向上し「金麦〈糖質75%オフ〉」に改称 | 現行(〈糖質75%オフ〉として) |
| 2012年2月14日ほか | ザ・ロイヤル・ビター | ビール(コンビニ限定) | ビターホップ100%使用の苦味と、麦芽100%・デコクション製法による旨味とコク | 終売 |
| 2012年6月19日 | ストーンズバー〈ローリングホップ〉 | 第三のビール | ローリング・ストーンズとのタイアップ商品。柑橘系の香りのホップを使用 | 終売(2012年9月 製造終了) |
| 2012年11月27日 | CARAMEL BROWN(カラメル ブラウン) | 第三のビール(数量限定) | 欧州産カラメル麦芽を一部使用、北米産ビターホップ100% | 終売 |
年表6:多様化とプレモル拡張の時代(2013〜2020年)
| 発売年 | 銘柄名 | 種別 | どんなビールか | 現況 |
|---|---|---|---|---|
| 2013年3月26日 | グラン ドライ | 第三のビール | 炭酸ガス圧を当社ビール類史上最高レベルに。マグナムドライの実質的な後継 | 終売 |
| 2013年7月2日 | オールフリー シトラススパークル | ノンアルコール(夏季限定) | レモンとライムの風味を加えたオールフリー初のシリーズ製品 | 終売 |
| 2013年9月26日 | ザ・プレミアム・モルツ〈コクのブレンド〉 | ピルスナー+黒(期間限定) | 通常品と〈黒〉を最初からブレンドした赤いパッケージ | 終売 |
| 2014年3月 | モルツ・ザ・ドラフト | ピルスナー(業務用) | 独自の「HHS製法」を採用した料飲店向けリニューアル品(瓶・樽) | 終売(2015年に「ザ・モルツ」へ統合) |
| 2014年5月13日 | 金麦クリアラベル | 第三のビール | HHS製法で加工した麦芽を一部使用、炭酸ガス濃度を高めに設定 | 終売(2019年に〈ゴールド・ラガー〉と入れ替わり) |
| 2014年5月27日 | ザ・プレミアム・モルツ〈香るプレミアム〉 | エール(期間限定→通年) | 青いパッケージ。2015年3月に通年製品化 | 2016年に〈香るエール〉へ発展 |
| 2014年7月15日 | モルツ・サマードラフト | ビール(コンビニ限定) | シトラホップを使用、数量限定 | 終売(2017年に〈ザ・モルツ サマードラフト〉へ改名) |
| 2014年8月5日 | オールフリー 瀬戸内限定ゆず | ノンアルコール(地域限定) | 徳島産ゆずを使用。瀬戸内ブランド認定製品。中国・四国の瀬戸内6県と兵庫県のみで販売 | 終売(同年10月に全国版「オールフリー ゆず」へ) |
| 2014年9月2日 | おいしいZERO | 発泡酒 | プリン体0.00mg・糖質0%。2年3か月ぶりの発泡酒事業再参入 | 終売 |
| 2014年11月25日 | ザ・プレミアム・モルツ〈初摘みホップ〉 | ピルスナー(期間限定) | その年に収穫したチェコ・ザーツ産ファインアロマホップを使用 | 2015年に「初摘みホップ ヌーヴォー」へ |
| 2014年12月2日 | 金麦〈琥珀のくつろぎ〉 | 第三のビール(期間限定) | 金麦シリーズ初の期間限定品。ロースト麦芽とドイツ産アロマホップを一部使用 | 2020年に〈琥珀の秋〉へリニューアル |
| 2015年 | 〜ザ・プレミアム・モルツ〜 マスターズドリーム 醸造家の夢 | ピルスナー(スーパープレミアム) | トリプルデコクション製法と銅製循環型ケトルによる「銅炊き仕込み」 | 現行 |
| 2015年8月 | ザ・プレミアム・モルツ〈芳醇エール〉 | エール(数量限定) | 上面発酵酵母と数種類の濃色麦芽を使用。オレンジのパッケージ | 終売 |
| 2015年9月 | ザ・モルツ | ピルスナー(麦芽100%) | 「モルツ」と「モルツ・ザ・ドラフト」を統合した後継商品。HHS製法採用 | 終売(缶は2023年3月末、瓶・樽は2024年3月末で製造出荷終了) |
| 2015年11月17日 | ザ・プレミアム・モルツ 初摘みホップ ヌーヴォー | ピルスナー(期間限定) | 2015年収穫のザーツ産ファインアロマホップを空輸して使用 | 終売 |
| 2015年12月1日 | 金麦〈黒のひととき〉 | 第三のビール(黒) | 黒麦芽とカラメル麦芽を一部使用。「贅沢長期熟成製法」採用。金麦シリーズ初の黒 | 終売 |
| 2015年6月30日 | オールフリー コラーゲン | ノンアルコール | アルコール0.00%のノンアルコールビールテイスト飲料として世界初のコラーゲン2,000mg含有 | 終売(2018年「コラーゲンリッチ」へ改称後、終売) |
| 2016年3月1日 | ザ・プレミアム・モルツ〈香るエール〉 | エール | 〈香るプレミアム〉の後継。上面発酵酵母を使用しフルーティな香味 | 現行(〈ジャパニーズエール〉香るエール) |
| 2016年4月26日 | ザ・プレミアム・モルツ〈サマースペシャル〉2016 | ピルスナー(数量限定) | ハラタウ産ホップを通常品より多く使用 | 終売 |
| 2016年7月26日 | マスターズドリーム〈無濾過〉 | ピルスナー(数量限定) | 熟成工程を終えたマスターズドリームを無濾過のまま瓶詰め | 終売 |
| 2016年8月30日 | ザ・プレミアム・モルツ〈〈秋〉香るエール〉 | エール(数量限定) | 〈香るエール〉に数種類の濃色麦芽を加えた秋向け | 終売 |
| 2017年2月28日 | 東京クラフト〈ペールエール〉 | クラフト(エール) | 東京・武蔵野の地で生まれたクラフトビールブランド。上面発酵酵母と天然水醸造 | 現行 |
| 2017年6月/10月 | ザ・モルツ サマードラフト/ウインタードラフト | ビール(コンビニ限定) | ウインタードラフトはカスケードホップを使用 | 終売 |
| 2018年2月 | ザ・モルツ 麦香る3.5% | ライトビール(コンビニ限定) | アルコール度数を3.5%に抑えたシリーズ初のライトビール | 終売 |
| 2018年6月19日 | オールフリー オールタイム | ノンアルコール(透明・PET) | 透明な液色のペットボトル入り。コンビニ限定 | 終売(2018年9月30日まで) |
| 2018年11月20日 | 金麦〈濃いめのひととき〉 | 第三のビール(期間限定) | 「旨味麦芽」を通常の金麦の約1.3倍使用、ミュンヒナー麦芽も一部使用 | 終売 |
| 2019年2月5日 | 金麦〈ゴールド・ラガー〉 | 第三のビール | 本格コク系。プレモルにも使う「本格二段仕込製法」とHHS製法を採用、ビターホップを多用 | 2021年に〈ザ・ラガー〉へ改称 |
| 2019年6月 | ザ・モルツ ホップパラダイス | ビール(コンビニ限定) | 粒選り麦芽100%、希少品種のアマリロホップなど複数のホップを配合 | 終売 |
| 2019年6月25日 | オールフリー樽詰(10L) | ノンアルコール(業務用樽) | 日本のビールメーカーとして初のノンアルコールビールテイスト飲料の樽詰。料飲店限定 | 現行 |
| 2019年7月16日 | からだを想うオールフリー | ノンアルコール(機能性表示食品) | ブランド初の機能性表示食品。ローズヒップ由来ティリロサイドを機能性関与成分として含有 | 現行 |
| 2019年11月19日 | 金麦〈香りの余韻〉 | 第三のビール(エールタイプ) | ネルソンソーヴィンホップと金麦初の上面発酵酵母を使用。アルコール6%。イオングループ限定 | 終売 |
| 2020年6月30日 | 金麦〈香り爽やか〉 | 第三のビール(エールタイプ) | 「贅沢麦芽」と上面発酵酵母を使用。水色と金色の基調 | 終売 |
| 2020年8月18日 | 金麦〈琥珀の秋〉 | 第三のビール(数量限定) | 〈琥珀のくつろぎ〉のリニューアル。レイトホッピング製法を採用 | 終売 |
| 2020年11月24日 | 金麦〈深煎りのコク〉 | 第三のビール(数量限定) | 「贅沢麦芽」と焙煎麦芽を一部使用 | 終売 |
年表7:現在進行形の時代(2021〜2026年)
| 発売年 | 銘柄名 | 種別 | どんなビールか | 現況 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年2月2日 | 金麦〈ザ・ラガー〉 | 第三のビール | 〈ゴールド・ラガー〉を全面改良して改称。同年12月にミュンヒナー麦芽を一部使用 | 2026年秋に終売予定(後継は〈豊潤〉) |
| 2021年4月13日 | パーフェクトサントリービール | ラガー(熱処理・糖質ゼロ) | 1963〜1967年の「サントリービール〈ラガー〉」以来54年ぶりの熱処理ビール。国産の熱処理ビールとして業界初の糖質ゼロ。アルコール5.5% | 現行の基幹ブランド |
| 2022年10月4日/11月15日 | ビアボール | ビール(高アルコール・割って飲む) | 炭酸水で割ることを製品上で訴求した日本初のビール。同社ビールとして過去最高のアルコール度数16%。業務用中瓶500ml/家庭用小瓶334ml | 製造終了 |
| 2023年4月4日 | サントリー生ビール | ビール(ブレンデッド) | 厳選麦芽にコーングリッツを一部使用し、トリプルデコクション製法を採用。「グッとくる飲みごたえと、かつてない飲みやすさ」。ザ・モルツの後継的役割 | 現行の基幹ブランド |
| 2023年6月 | あしたを想うオールフリー | ノンアルコール(機能性表示食品) | GABAを機能性関与成分として含有 | 現行 |
| 2023年7月18日 | 金麦〈夏香るエールタイプ〉 | 第三のビール(夏季限定) | 複数のアロマホップと上面発酵酵母を使用 | 終売 |
| 2023年8月15日 | 金麦〈琥珀の秋〉(再々発売) | 第三のビール(数量限定) | ロースト麦芽を一部使用。琥珀色と紺色のグラデーション | 終売 |
| 2025年4月8日 | 金麦〈晩酌サワー〉 | 発泡酒 | サワーのように飲みやすく爽やかな味わい。北海道エリア限定発売・全国数量限定を経て通年発売化 | 製造終了 |
| 2025年4月22日 | オールフリー クリア(レモン&ライム/ビターオレンジ) | ノンアルコールサワーテイスト | ブランド初のノンアルコールサワーテイスト飲料。オールフリーがカテゴリー横断ブランドへ | 2026年2月に「オールフリー スパークリング」へ改名 |
| 2025年11月11日 | ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉2025 | ピルスナー(数量限定) | ウイスキー原酒の樽で熟成させた変わり種 | 製造終了 |
| 2025年11月18日 | ザ・プレミアム・モルツ 優美な余韻 | ピルスナー(数量限定) | 数量限定の味わい違い | 製造終了 |
| 2025年11月25日 | 東京クラフト〈ドゥンケルヴァイツェン〉 | クラフト(小麦の黒ビール) | ドイツ由来の濃色小麦ビールスタイル。数量限定 | 製造終了 |
| 2026年1月20日 | ザ・プレミアム・モルツ〈初仕込〉/同〈ジャパニーズエール〉香るエール〈初仕込〉 | ピルスナー/エール(数量限定) | その年の初仕込みを訴求した限定品 | 製造終了 |
| 2026年1月27日 | パーフェクトサントリービール〈アンバーエール〉 | エール(数量限定) | 糖質ゼロブランドからのエール展開 | 製造終了 |
| 2026年3月10日 | 金麦〈陽だまりの散歩道〉 | 第三のビール(春季限定) | 季節のワンシーンに着目した限定シリーズ | 製造終了 |
| 2026年3月17日 | 東京クラフト〈ヘレス〉 | クラフト(ドイツ淡色ラガー) | ミュンヘン発祥の淡色ラガー「ヘレス」。数量限定 | 製造終了 |
| 2026年4月7日 | オールフリー スパークリング マスカット・オブ・アレキサンドリア | ノンアルコールサワーテイスト | スパークリング化後の追加フレーバー | 現行 |
| 2026年4月28日 | オールフリー〈エールテイスト〉 | ノンアルコール | エールの香味をノンアルコールで表現 | 現行 |
| 2026年5月12日 | パーフェクトサントリービール〈エール〉 | エール(数量限定) | 糖質ゼロブランドのエール版 | 製造終了 |
| 2026年5月19日 | ザ・プレミアム・モルツ〈ジャパニーズエール〉夏風香るエール | エール(数量限定) | 夏向けの香るエール | 製造終了 |
| 2026年6月2日 | 東京クラフト〈フルーティエール〉 | クラフト(エール) | フルーティな香味のエール。数量限定 | 現行 |
| 2026年6月9日 | ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈白州原酒樽熟成〉2026 | ピルスナー(数量限定) | 白州蒸溜所のウイスキー原酒樽で熟成 | 現行 |
| 2026年6月16日 | ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム 梅子黄(うめのみきなり) | ピルスナー(数量限定) | 七十二候から名を取った季節限定 | 現行 |
| 2026年6月23日 | 金麦〈彩りはずむ夏の夜〉 | 第三のビール(夏季限定) | 夏の食卓シーンに寄せた限定品 | 現行 |
| 2026年7月7日 | サントリー生ビール〈夏生〉 | ビール(夏季限定) | サントリー生ビールの夏バージョン | 現行 |
| 2026年7月14日 | ザ・プレミアム・モルツ〈ジャパニーズエール〉色華(いろはな)香るエール | エール(数量限定) | 香るエールの限定バリエーション | 現行 |
| 2026年10月6日(予定) | 金麦(ビール化) | ビール(非熱処理=生) | 酒税改正に合わせ、麦芽比率をビールの要件である50%以上に引き上げ、麦由来の蒸留酒の使用も取りやめてビールに区分変更 | 発売予定 |
| 2026年秋以降(予定) | 金麦〈豊潤〉 | ビール | 終売する〈ザ・ラガー〉の後継として投入予定 | 発売予定 |
年表8:ノンアルコール/ビールテイスト飲料の系譜
この分野はサントリーがとくに強い領域なので、独立した表にしておきます。
| 発売年 | 銘柄名 | 種別 | どんな飲み物か | 現況 |
|---|---|---|---|---|
| — | ファインブリュー | ビールテイスト飲料 | 初期のビールテイスト飲料 | 終売 |
| 2009年9月29日 | サントリーファインゼロ | ノンアルコール(0.00%) | オールフリーの前身にあたる商品 | 終売 |
| 2010年8月3日 | オールフリー | ノンアルコール(0.00%) | アルコール・カロリー・糖質の「3つのゼロ」。粒選り麦芽100%仕込みの一番麦汁だけを使用し、天然水100%仕込み。発売1週間後の8月10日に生産が追いつかず一時販売休止、9月7日に再開 | 現行 |
| 2011年2月8日 | オールフリー 500mlロング缶 | ノンアルコール | 容量追加 | 現行 |
| 2013年6月11日 | オールフリー 250ml ミニ缶 | ノンアルコール | 容量追加 | 現行 |
| 2013年7月2日 | オールフリー シトラススパークル | ノンアルコール(夏季限定) | レモンとライムの風味 | 終売 |
| 2014年6月24日 | オールフリー シトラスクール | ノンアルコール(期間限定) | グレープフルーツ風味とクールフレーバー | 終売 |
| 2014年10月7日 | オールフリー ゆず | ノンアルコール | 瀬戸内限定品を全国発売に | 終売 |
| 2014年12月9日 | オールフリー ピンクグレープフルーツ | ノンアルコール(冬季限定) | 冬季限定フレーバー | 終売 |
| 2015年3月10日 | オールフリー レモン&ライム | ノンアルコール(期間限定) | 期間限定フレーバー | 終売 |
| 2015年6月30日 | オールフリー コラーゲン | ノンアルコール | コラーゲン2,000mg含有 | 終売 |
| 2015年7月28日 | オールフリー ビターオレンジ | ノンアルコール(数量限定) | オレンジ風味 | 終売 |
| 2015年9月1日 | オールフリー 香る林檎と白ぶどう | ノンアルコール(期間限定) | 果実の香りを効かせた期間限定品 | 終売 |
| 2015年11月10日 | オールフリー スパークリングホップ | ノンアルコール(期間限定) | ホップの香りを強調 | 終売 |
| 2016年4月12日 | オールフリー ライムショット | ノンアルコール | ライムの爽快感。長寿シリーズ品に | 現行 |
| 2016年12月6日 | オールフリー エクストラホップ | ノンアルコール(数量限定) | ホップ感を強めた限定品 | 終売 |
| 2017年4月25日 | オールフリー くまもと応援缶 | ノンアルコール(九州地区限定) | 平成28年熊本地震で被災し一時休止していた九州熊本工場の缶製造再開に伴う商品。1缶につき5円が熊本城復興に寄付 | 終売 |
| 2017年12月12日 | オールフリー 香り華やぐホップ | ノンアルコール(期間限定) | ホップの香りを主役にした限定品 | 終売 |
| 2018年6月19日 | オールフリー オールタイム | ノンアルコール(透明PET) | 透明な液色のペットボトル。コンビニ限定 | 終売 |
| 2019年6月25日 | オールフリー樽詰(10L) | ノンアルコール(業務用) | 日本のビールメーカー初のノンアルコールビールテイスト飲料の樽詰。料飲店限定 | 現行 |
| 2019年7月16日 | からだを想うオールフリー | 機能性表示食品 | ローズヒップ由来ティリロサイドを含有 | 現行 |
| 2020年7月17日 | オールフリー(米国展開) | ノンアルコール | Amazon.comでの取扱を皮切りにアメリカ全土での販売を開始 | — |
| 2023年6月 | あしたを想うオールフリー | 機能性表示食品 | GABAを含有 | 現行 |
| 2025年4月22日 | オールフリー クリア(レモン&ライム/ビターオレンジ) | ノンアルコールサワーテイスト | ブランド初のノンアルサワー | 2026年2月に「スパークリング」へ改名 |
| 2025年12月16日 | オールフリー クリア ドライアップル | ノンアルコールサワーテイスト(期間限定) | 初の期間限定品 | 終売 |
| 2026年2月 | オールフリー スパークリング(レモン&ライム/ブラッドオレンジ) | ノンアルコールサワーテイスト | 「クリア」から改名。ブラッドオレンジは果汁を追加 | 現行 |
| 2026年4月28日 | オールフリー〈エールテイスト〉 | ノンアルコール | エールの香味をノンアルコールで表現 | 現行 |
| — | ザ・ベゼルズ | ビールテイスト飲料 | — | 製造終了 |
この表でも、発売年を「—」とした二つ——ファインブリューとザ・ベゼルズ——は、すでに製造を終えており、公表資料に発売年の記載を見つけられませんでした。ザ・ベゼルズについては、同社の商品情報ページに「製造を終了しました」と掲載されているところまでが、確認できた事実です。
年表の読み方——三つの気づき
ここまで表を並べてきました。私が読んでいて手が止まったのは、次の三点です。
気づき1:限定品の数が異常に多い。とくに2013年以降、金麦とプレモルの限定品が毎年何本も出ています。そして、そのほとんどが終売しています。これは失敗ではなく、設計です。限定品は在庫を持ち越さない前提の商品で、市場の反応を試すための実験でもあります。定番の横に実験を並べ続ける。これが商品開発のリズムになっています。
気づき2:捨てた名前を、後で拾い直している。「サントリー生ビール」は1994年3月頃に一旦終売し、2023年4月4日に29年ぶりに再投入されました。「冴」も、かつては麦芽100%のドライビールでしたが、現在は流通限定の新ジャンルの名前として存在しています。名前は資産だという考え方が、はっきり見えます。
気づき3:カテゴリーを自分で作りに行っている。1994年の発泡酒、2004年の第三のビール、2010年のノンアルコール、2022年の「割って飲むビール」。この会社は、既存カテゴリーで順位を上げるより、新しい枠を作ってそこで一番になるやり方を繰り返しています。後発として市場に入った会社の、最も合理的な戦い方だと思います。
第8章 ビールの種類が分かる章——ここだけ読んでも元が取れます
年表に出てきた「ラガー」「エール」「発泡酒」「新ジャンル」「ノンアル」。この章で全部ほどきます。飲食店の方は、ここをスタッフ教育の材料にしていただければと思います。
まず大前提:ビールは麦芽・ホップ・水・酵母でできている
ビールの材料は驚くほど少ないです。サントリーの工場見学ページも、こう書いています。
「材料はいたってシンプル。だからこそ、厳選します。」(サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野「ものづくりのこだわり」)
基本は麦芽・ホップ・水・酵母の四つ。ここに副原料(コーン、米、スターチ、大麦など)が加わるかどうかで、味も、法律上の区分も変わってきます。
造り方の流れ——六つの工程
サントリーの武蔵野工場が公開している工程は、次の六段階です。
- 素材選び:麦芽・ホップ・水を選ぶ
- 仕込:温めた天然水に砕いた麦芽を加えると、酵素の働きで麦芽中のでんぷんが糖に分解される。そこにホップを加えて煮沸すると、ホップ特有の香りと苦みを持った麦汁(ばくじゅう)ができる
- 発酵:麦汁に酵母を加えて発酵させる。酵母が糖を食べてアルコールと炭酸ガスを出す
- 貯酒:発酵が終わった「若ビール」を低温タンクで熟成。炭酸ガスが溶け込み、オリが沈み、味と香りがまろやかになる
- ろ過:熟成を終えたビールからオリと役目を終えた酵母を取り除く。ここで黄金色に澄んだ生ビールになる
- パッケージング:徹底した酸素管理のもとで缶・瓶・樽に詰める
この6番目の「酸素管理」を、私は飲食店の方に強調してお伝えしています。ビールにとって酸素は劣化要因です。工場が徹底的に酸素を避けて詰めたものを、店で開けた瞬間から酸素にさらすわけです。抜栓後の時間管理、樽の回転、サーバーの洗浄。この三つがどれだけ大事か、工程を知ると腑に落ちます。
ラガーとエールの違い——酵母がどこで働くか
ここが一番よく聞かれるところです。答えはシンプルで、使う酵母の種類が違うのです。
- ラガー(下面発酵):発酵の終わりにタンクの下のほうに沈む酵母を使う。比較的低温で、時間をかけて発酵させる。すっきりとキレのある味わいになりやすい。日本の大手ビールの大半はこちら
- エール(上面発酵):発酵中に液面のほうへ浮き上がる酵母を使う。比較的高温で、短めに発酵させる。フルーティーな香り(エステル香)が出やすく、味わいに厚みが出やすい
サントリーの商品でいうと、こう対応します。
- ラガー系:ザ・プレミアム・モルツ、サントリー生ビール、パーフェクトサントリービール、(かつての)モルツ、ザ・モルツ
- エール系:ザ・プレミアム・モルツ〈ジャパニーズエール〉香るエール、東京クラフト〈ペールエール〉、〈フルーティエール〉、パーフェクトサントリービール〈エール〉、オールフリー〈エールテイスト〉
公式の説明でも、〈香るエール〉は「上面発酵酵母を使用して醸造し、フルーティな香味を特徴とするエールビール」とされています。金麦の限定品〈香りの余韻〉〈香り爽やか〉〈夏香るエールタイプ〉も、上面発酵酵母を使っています。
ピルスナーとは何か
「ラガー」は発酵方法の分類ですが、「ピルスナー」はもっと具体的なスタイル(型)の名前です。19世紀にチェコのピルゼンで生まれた、淡い黄金色の下面発酵ビール。ホップの効いた爽やかな苦みが特徴です。
日本のビールの大半はこのピルスナー系です。サントリー公式も、ザ・プレミアム・モルツについて「世界最高峰のピルスナービールを目指し」と表現しています。
そして東京クラフトが2026年3月に出した〈ヘレス〉は、同じ下面発酵でもドイツ・ミュンヘン系の淡色ラガーで、ピルスナーより苦みが穏やかなスタイルです。同じ「ラガー」でも中身は違う。ここが説明できるスタッフがいる店は強いと、私は思っています。
黒ビール、アンバー、ヴァイツェン——色と穀物の話
ビールの色は、主に麦芽の焙煎度合いで決まります。
- 黒ビール:黒麦芽やロースト麦芽を使う。ザ・プレミアム・モルツ〈黒〉、金麦〈黒のひととき〉など
- アンバー(琥珀色):カラメル麦芽や濃色麦芽を一部使う。金麦〈琥珀のくつろぎ〉〈琥珀の秋〉、CARAMEL BROWN、パーフェクトサントリービール〈アンバーエール〉など
- ヴァイツェン:小麦麦芽を多く使うドイツ発祥のスタイル。東京クラフト〈ドゥンケルヴァイツェン〉は、その濃色版
色が濃い=重い、とは限りません。焙煎した麦芽由来の香ばしさが出るだけで、必ずしもアルコールが高いわけでも、後味が重いわけでもない。ここを取り違えているお客さまは多いので、店側が一言添えられると価値になります。
麦芽の話——「ダイヤモンド麦芽」とは何なのか
麦芽は、大麦を発芽させて乾燥させたものです。発芽の過程ででんぷんを糖に変える酵素が作られ、これが仕込工程で効いてきます。
サントリーが「ダイヤモンド麦芽」と呼んでいるものについて、公式の説明はこうです。2026年のリリースでは「チェコおよびその周辺国で収穫・製麦されたダイヤモンド麦芽の一部使用」とされています。2012年3月11日のリニューアルでザ・プレミアム・モルツに新たに加えられ、2015年12月には増量するリファインが行われました。現在はサントリー生ビールにも使われています。
さらに上位のマスターズドリームでは、フロアモルティングで製麦したダイヤモンド麦芽を一部使用しているとされます。フロアモルティングは、大麦を麦芽へ変化させる伝統的な製麦方式の一つで、床に大麦を広げて人の手で切り返す手法です。手間が桁違いにかかります。
もう一つ、金麦で使われている「旨味麦芽」という言葉があります。これは方向性がまったく違います。従来のビールでは、タンパク質よりでんぷんが多い麦芽が向いているとされてきました。ところが金麦では、窒素分となるタンパク質を豊富に含む麦芽を全麦芽中50%以上使用しています。うま味を出すための選択です。同じ「良い麦芽」でも、狙う味によって基準がまったく違うということです。
ホップの話——アロマホップとビターホップ
ホップはビールに香りと苦みを与える植物です。ざっくり二つに分けられます。
- アロマホップ:香りが特徴。華やかな香りを出したいときに使う
- ビターホップ:苦みが特徴。キレのある苦みを出したいときに使う
ザ・プレミアム・モルツは、チェコ・ザーツ産のファインアロマホップを中心に、ヨーロッパ産のアロマホップを100%使用しています。アロマホップの使用量は普通のビールの2倍とされます。「香りで勝負する」という設計です。
一方、金麦ではアロマホップとビターホップを2段階で投入する「2段階ホップ仕込」を採用しています。香りと苦みを別々にコントロールする作り方です。
ホップの投入タイミングも味を左右します。レイトホッピング製法は、麦汁の煮沸終了前後の適切な時期にホップを投入する手法で、金麦〈琥珀の秋〉などで採用されています。煮沸の後半に入れるほど、香り成分が飛ばずに残ります。
そして毎年秋冬に出る「初摘みホップ」シリーズは、その年に収穫したザーツ産ファインアロマホップを使ったもので、2015年のヌーヴォーでは収穫したホップを空輸して使っています。ワインのボジョレー・ヌーヴォーと同じ発想を、ビールに持ち込んだ商品です。
水の話——原材料の約9割は水
意外に見落とされますが、ビールの原材料の約9割は水です。サントリー公式の「ビール事業」ページが、はっきりそう書いています。
だからこの会社は、水から工場の場所を決めました。長い時間をかけて地層で濾過された、清浄で品質が安定している深井戸の天然水を使う。2005年には全てのビールを天然水仕込みに変更しています。そして国産のビール類・ビールテイスト飲料の全商品が、地下深くから汲み上げた天然水で仕込まれています。
四つの工場の水系は以下のとおりです。
| 工場 | 水系 | 開設年 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野(東京都府中市) | 丹沢水系 | 1963年 | サントリー初のビール工場。ミニブルワリー保有。ザ・プレミアム・モルツ誕生の地。工場見学あり |
| 〈天然水のビール工場〉京都(京都府長岡京市) | 天王山・京都西山水系 | 1969年 | 第2の生産拠点。敷地面積約10万平方メートル。工場見学あり(有料) |
| 〈天然水のビール工場〉群馬(群馬県邑楽郡千代田町) | 赤城山水系 | 1982年 | 第3の生産拠点。旧・利根川ビール工場。工場見学は実施していない |
| サントリー九州熊本工場(熊本県上益城郡嘉島町) | 南阿蘇外輪山水系 | 2003年 | 第4の生産拠点。ビール・発泡酒に加え清涼飲料も生産する総合工場 |
デコクション製法——「煮出す」という手間
ここは知っておくと会話が広がります。
デコクションとは、仕込釜で麦汁の一部を煮出し、麦芽の旨みと味わいを引き出す製法のことです。取り出して煮沸し、また戻す。これを繰り返すことで、糖化の温度を段階的に上げていきます。
回数によって呼び名が変わります。
- ダブルデコクション製法:この工程を2回繰り返す。サントリーの標準的な製法として武蔵野工場の見学ページでも紹介されています
- トリプルデコクション製法:3回繰り返す。マスターズドリームと、サントリー生ビールで採用
煮出すと何が起きるか。金麦の技術説明が分かりやすいので引用的にまとめます。アミノカルボニル反応(メイラード反応)が起きてうま味が向上する。同時に糖化酵素が失活することで、分解されずに残った多糖類がコクの素になる——ということです。
そのぶんアルコール分は薄まります。金麦では、そこを小麦由来のスピリッツをブレンドすることで補っていました(2026年10月のビール化以降は、この麦由来蒸留酒の使用を取りやめる予定です)。
そのほか、サントリーが使っている製法名を並べておきます。
- アロマリッチ・ホッピング製法(ザ・プレミアム・モルツ)
- 飛沫分離法(同上)
- 銅炊き仕込み(マスターズドリーム)/チェコに伝わる伝統的な製法をもとに開発した銅製循環型ケトルで麦汁を炊く
- HHS製法(High temperature High pressure Steam=高温高圧蒸気)/加工した麦芽を一部使用。金麦クリアラベル、モルツ・ザ・ドラフト、ザ・モルツ、金麦〈ザ・ラガー〉などで採用
- 本格二段仕込製法(金麦〈ゴールド・ラガー〉/〈ザ・ラガー〉)/仕込釜で煮沸工程を2回繰り返して濃厚な麦汁を作る
- 三段うまみ抽出製法(2019年11月以降の金麦)/仕込釜の麦汁を煮出す工程で三段階の温度帯によって麦のうまみを抽出
- 贅沢長期熟成製法(金麦〈琥珀のくつろぎ〉〈黒のひととき〉)/主要新ジャンルの基準に比べ熟成期間を約3割長く設定
「生ビール」の正しい意味——樽かどうかは関係ない
もう一度、ここを押さえます。
生ビール=熱処理をしていないビール。これが定義です。1967年の「純生」をめぐる論争を経て、この理解が定着しました。
ですから、缶ビールでも瓶ビールでも、熱処理をしていなければ生ビールです。逆に樽であっても、熱処理していれば生ではありません。「うちは樽だから生です」という説明は、厳密には理由になっていない、ということになります。
そして面白いのが、2021年発売のパーフェクトサントリービールです。これは熱処理ビールなのです。同社のレギュラー品としては、1963〜1967年の「サントリービール〈ラガー〉」以来、54年ぶりの熱処理ビールでした。国産の熱処理ビールとして業界初の糖質ゼロを実現しています。
生ビールしか造らない会社が、54年ぶりに熱処理に戻った。糖質ゼロという機能を成立させるための技術的な選択だったと考えられますが、「生が上、熱処理が下」ではないということが、この商品から見えてきます。
なお、発泡酒や新ジャンルにおける「生」の定義も、ビールと同じで「熱処理をしていないもの」です。ただし、これらは「ビールの表示に関する公正競争規約」の対象外のため、「非熱処理」といった表記は基本的に行われていません。
発泡酒とは何か——「ビールじゃない」の正体
ここからは、法律の話になります。難しく感じるかもしれませんが、店の原価に直結する話なので、ぜひお付き合いください。
日本の酒税法では、酒類が17種類に分類されています。発泡酒は、そのうちの一つです。定義はこうです。
麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(同法第3条第7号から第17号までに掲げる酒類及び麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く)で発泡性を有するもの(アルコール分が二十度未満のものに限る)をいう。(酒税法第3条)
要するに、「ビールの条件を満たさない、麦を使った発泡性の酒」が発泡酒です。ビールの条件を満たさなくなる理由は主に二つあります。
- 麦芽の比率が低い(かつては67%=3分の2以上がビールの条件でした。現在は50%以上)
- ビールに使用が認められていない副原料を使っている(スパイス、ハーブ、果汁など)
ここは大事なところなので補足します。発泡酒=安物、ではありません。ベルギービールのように、本国では立派なビールでも、副原料の関係で日本の酒税法上は発泡酒になってしまうものがありました。麦芽比率50%以上の発泡酒の税率は、ビールと同じです。だから「発泡酒なのに高い」商品が存在したのです。
なお、2018年4月1日に施行された改正酒税法で副原料の規定が緩和され、政令で定めた副原料を麦芽の100分の5まで使用できてビールと認められるようになりました。これにより、以前は発泡酒扱いだった輸入ビールの一部が、改正後はビール扱いになっています。
新ジャンル(第三のビール)とは何か
「第三のビール」という言葉自体は、メーカーが作った言葉ではありません。ビール、発泡酒に続くものとして、新聞社や放送局などのマスメディア・広告代理店によって作られた用語です。メーカー各社は、ビールとの誤認を避けるため「新ジャンル」と呼んでいます。
作り方は大きく二通りあります。
- その他の醸造酒(発泡性)①型:原料を麦・麦芽以外の穀物(主に豆類由来)にする。サッポロ「ドラフトワン」(エンドウたんぱく)、キリン「のどごし〈生〉」(大豆たんぱく)、サントリー「ジョッキ生」「キレ味〈生〉」(とうもろこし)など
- リキュール(発泡性)①型:発泡酒に別のアルコール飲料(麦由来のスピリッツや焼酎)を混ぜる。サントリー「金麦」(発泡酒+小麦スピリッツ)、キリン「本麒麟」、サッポロ「麦とホップ」、アサヒ「クリアアサヒ」など
金麦は後者です。発泡酒に小麦スピリッツを加えたもの。他社が大麦スピリッツを使うなか、サントリーは小麦スピリッツを使ってきました。
そして2023年10月1日、酒税法の改正により「第三のビール」という区分そのものが廃止されました。既存製品も新規製品も、すべて発泡酒に統合され、「発泡酒②」に分類されることになっています。ですから、いまスーパーの棚で「新ジャンル」と呼ばれているものは、法律上はもう発泡酒なのです。
ノンアルコールビールはどうやって造るのか
ここはサントリーが語れる領域です。オールフリーの製法について、公式の説明はこうです。
「麦芽を主原料に、天然水仕込みの麦汁をベースとする。それによりアルコールが生成されない。原材料の配合や仕込み方法の最適化により、ビールのような泡をつくり、ビール類の代替商品として完成させている。」
ここが本質的なポイントです。ビールを造ってからアルコールを抜くのではなく、そもそもアルコールが生成されない造り方をしている。
ノンアルコールビールの造り方には、世界的に見ると大きく二系統あります。
- 脱アルコール法:普通にビールを醸造し、後からアルコールを除去する(加熱・減圧蒸留、膜分離など)。海外の「アルコールフリービール」に多い
- 非発酵法:発酵させない、または発酵を極めて限定的にする。麦汁を作り、そこに香味・炭酸を組み立てていく
オールフリーは後者の系統です。だからアルコール分は0.00%。「0.5%未満だから0%と表記」ではなく、文字どおり0.00%です。日本のノンアルコールビールテイスト飲料は、この0.00%が主流になっています。
そのうえで、オールフリーの中身にはこだわりがあります。粒選り麦芽100%仕込みの一番麦汁だけを使用し、天然水100%仕込み。ビール類と同じ〈天然水のビール工場〉で製造されており、パッケージには「天然水のビール工場から SUNTORY」のアイコンが表示されています。
2010年8月3日の発売時、オールフリーはアルコール・カロリー・糖質の「3つのゼロ」を実現しました。サントリー公式は「2010年に世界初、アルコールゼロ・カロリーゼロ・糖質ゼロという『3つのゼロ』を実現」と記載しています(※ビールテイスト飲料カテゴリーにおける当社調べ、食品表示基準による)。
ここで一つ、お断りしておきます。本記事では、ノンアルコール飲料や特定の商品について、健康上の効果・効能を書くことはしません。機能性表示食品として届け出られている商品については、その事実と関与成分の名称のみを記載しています。
用語の早見表
店内研修用に、この章の要点を一枚にまとめておきます。
| 用語 | ひとことで言うと | サントリーの該当商品の例 |
|---|---|---|
| ラガー | 下面発酵。低温でじっくり。すっきりキレのある味わい | ザ・プレミアム・モルツ、サントリー生ビール |
| エール | 上面発酵。やや高温で短め。フルーティな香りが出やすい | 〈ジャパニーズエール〉香るエール、東京クラフト〈ペールエール〉 |
| ピルスナー | チェコ発祥の淡色ラガー。日本のビールの主流 | ザ・プレミアム・モルツ |
| ヘレス | ドイツ・ミュンヘン系の淡色ラガー。ピルスナーより苦みが穏やか | 東京クラフト〈ヘレス〉 |
| ヴァイツェン | 小麦麦芽を多く使うドイツ発祥のスタイル | 東京クラフト〈ドゥンケルヴァイツェン〉 |
| 生ビール | 熱処理をしていないビール(樽かどうかは関係ない) | ザ・プレミアム・モルツ、サントリー生ビール |
| 熱処理ビール | 熱処理をしたビール | パーフェクトサントリービール、(1963年の)サントリービール〈ラガー〉 |
| 発泡酒 | ビールの条件を満たさない、麦を使った発泡性の酒 | (過去)ホップス、スーパーホップス、ダイエット生 |
| 新ジャンル(第三のビール) | 麦芽以外を原料にする、または発泡酒にスピリッツを混ぜたもの。2023年10月に区分廃止され発泡酒に統合 | 金麦、ジョッキ生 |
| ノンアルコールビールテイスト飲料 | アルコール0.00%。日本では非発酵で造るのが主流 | オールフリー |
| クラフトビール | 小規模・多様なスタイルを志向するビールの総称(法律上の区分ではない) | 東京クラフト |
| デコクション製法 | 麦汁の一部を煮出して戻し、旨みとコクを引き出す | プレモル(ダブル)、マスターズドリーム・サントリー生ビール(トリプル) |
| アロマホップ/ビターホップ | 香り担当/苦み担当 | プレモル(欧州産アロマ100%)、金麦(2段階ホップ仕込) |
第9章 発泡酒・新ジャンルの攻防と、酒税法という見えない主役
1989年、酒販免許の緩和が引き金になった
発泡酒はなぜ生まれたのか。始まりは1989年(平成元年)の酒類販売免許の緩和です。
これにより大型ディスカウント店がビールを扱えるようになりました。すると、それまで小売店の希望小売価格で買われていたビールが、大店舗間の低価格競争にさらされます。値下げ圧力は卸を通じてメーカーに向かいました。
ところが、ビールは値下げが難しい商品でした。小売価格のうち46.5%が税金だったからです(1990年代前半における日本国産ビールの一般的な価格は225円前後)。原価を削っても、税金は削れない。
そこへ安い輸入ビールを扱う店が急増します。国内大手は危機感を募らせました。
1994年、ホップス——サントリーが市場を作った
1990年代前半、サントリーのビール類シェアは5%台。大苦戦していました。
この会社が打開策として目をつけたのが、発泡酒の税率の低さでした。発泡酒という区分は酒税法に定義されていましたが、1960年代を最後に参入企業がなく、長らく休眠状態のジャンルになっていたのです。
サントリーは、過去20年にわたって行ってきた低麦芽比率での発泡酒醸造の研究を活かします。麦芽比率を下げると香味に影響が出る。それを原料・酵母・醸造技術で解決して、商品化に至りました。
1994年(平成6年)10月、麦芽比率を65%に抑え、350ml缶で希望小売価格180円(税別)を実現した発泡酒「ホップス〈生〉」が発売されます。当時の一般的なビールが225円前後ですから、45円ほど安い。
これが日本の発泡酒市場を形成する起点になりました。翌1995年5月にはサッポロビールが麦芽比率25%未満でさらに低価格(350ml缶160円、税別)の「ドラフティー」を投入。品薄になって増産体制を整えるほどの売れ行きで、本格的な競争が始まります。
サントリー公式の「ビール事業」ページも、この商品を「発泡酒という新しい市場を創造」したものとして記載しています。
1996年、狙い撃ちの増税——そして即座に打ち返した
発泡酒が売れると、ビールの売上と構成比率が下がります。税収が減ります。政府は動きました。
1996年(平成8年)秋、酒税を改訂。麦芽比率50%以上の発泡酒の税率を、ビールと同じにしました。明らかに発泡酒を狙い撃ちにした改訂で、大手ビールメーカーは「商品開発を行う企業努力を無視した行為だ」と反発しています。
ここでサントリーが取った行動が、実に象徴的です。秋の改訂を待たず、同年5月28日に麦芽使用率を25%未満に下げた「スーパーホップス」を市場投入しました。350ml缶で希望小売価格145円(税別)。麦芽を減らしても味を成立させる技術で、増税をかわしたわけです。
制度が変わることは避けられない。だとしたら、変わる前に、変わった後の世界の商品を出しておく。これが、この会社の一貫した動き方です。
2003年、また増税。だから第三のビールが生まれた
発泡酒市場はさらに広がります。1998年にはキリンの「麒麟淡麗〈生〉」が発泡酒市場の50%以上を占める大ヒットとなり、2001年にはアサヒも「本生」で参入しました。2002年のビール類市場シェアで発泡酒は37.2%を占め、2003年4月には月単位で48.2%と過去最高を記録します。
そして2003年(平成15年)5月1日、酒税法が改正され、発泡酒は増税。商品価格に反映されて10円の値上げとなりました。
各社は、より低い税率になるカテゴリーの研究・開発を進めます。そして生まれたのが第三のビールです。
- 2004年2月:サッポロビール「ドラフトワン」(麦芽以外の原料で作った製品の第一号)
- 2004年3月9日:サントリー「麦風」(ビールと麦焼酎をブレンド)
- その後、キリン「のどごし〈生〉」、アサヒ「アサヒ新生」が続く
サントリーの「麦風」は、小売価格が既存の発泡酒とほとんど変わらなかったため、1年足らずで販売終了しています。ただ、この発想の源流が1984年の「ビーハイ」にあったことは、先に書いたとおりです。
2006年、逃げ道が塞がれた
2006年(平成18年)5月、改正酒税法が施行され、第三のビールは350ml缶で3.8円の増税となりました。同時にビールは0.7円減税されています。
そしてこの改正で、決定的なことが起きました。指定された原料や従来から存在した製法を用いた第三のビール以外の、発泡性がありアルコール分10度未満の酒類は、ビールと同額の課税を受けることになったのです。
定義表を読むと、既存の製品だけをピンポイントで低税率から外している構造になっています。つまり「新たな原料でビール風の酒を醸造しても、ビール並みに課税される」。節税の余地が制度的に閉じられたわけです。
ここから先、業界は「新しいカテゴリーを作って安くする」戦い方ができなくなります。
2007年「金麦」——安さではなく、味と世界観で勝った
その状況で登場したのが、2007年(平成19年)6月19日発売の「金麦」です。
金麦は、単なる安い第三のビールではありませんでした。中身の技術がしっかりしています。
- 窒素分となるタンパク質を豊富に含む「旨味麦芽」を全麦芽中50%以上使用
- 麦汁を糖化する際に一定量を取り出して煮沸するデコクション製法を採用。アミノカルボニル反応でうま味が向上し、残った多糖類がコクの素になる
- 薄まったアルコール分は小麦由来のスピリッツをブレンドして補う
- 香りのアロマホップと苦みのビターホップを2段階で投入
- もちろん天然水仕込
そして広告です。パッケージは紺色を基調に、金色の麦穂を円形に配置。広告は黒須美彦のプロデュースで檀れいを起用しました。この組み合わせが、第三のビールに高級感というイメージを持ち込みます。
2009年夏の第三のビールに関するインターネット世論調査では、50%が「CMや広告が印象に残っている」と回答し、「高級感がある」「パッケージデザインが好き」の項目でも2位に10ポイント以上の差をつけて首位でした。
金麦は4年連続で過去最高販売数量を更新し、2009年8月31日に350ml換算の累計出荷本数10億本を突破しています。
金麦の改良は、ほぼ毎年やっている
ここが金麦のすごいところです。発売以来、年に1回のペースでリニューアルを続けています。私が確認できた範囲でも、2008年から2022年まで、ほぼ毎年です。
主なものを挙げます。
- 2008年5月:仕込工程の温度・時間条件の見直し、発酵工程での酵母の活動適正化。パッケージに金蓋を採用
- 2009年2月:2段階ホップ仕込の投入条件を最適化
- 2010年12月:麦芽の使用量を増量
- 2012年12月:「旨味麦芽」を1割程度増量
- 2019年1月:発売13年目にして初の大幅刷新。麦芽使用量が当時の歴代最大量に
- 2019年11月:自社精麦した国産麦芽を一部ブレンドした「贅沢麦芽」へ。「三段うまみ抽出製法」を採用
- 2020年1月〜:季節ごとに中身を変える「四季の金麦」へ移行(春=かろやか仕立て、夏=爽やか仕立て、秋=まろやか仕立て、冬=澄んだ後味仕立て)
- 2022年1月:麦芽使用量を歴代最大に増やし、「新・ていねい製法」を採用。ロゴを初めて縦書きに
「四季の金麦」という考え方は、飲食店の方にぜひ知っておいていただきたい発想です。同じ商品名で、季節ごとに中身を変える。定番の安心感を保ちながら、飽きさせない。これはメニュー構成の考え方そのものです。
サントリーは一度、発泡酒から撤退している
意外に知られていませんが、サントリーは発泡酒事業から一度、全面撤退しています。
2011年、アサヒ・サントリー・サッポロの3社が発泡酒事業縮小の方針を打ち出しました。サントリーはとくに踏み込んでいて、2012年3月中旬に「ダイエット生」、2012年6月頃に「MDゴールデンドライ」の製造を終了。これをもって発泡酒事業から全面的に撤退しました。2012年には、発泡酒はビール類全体の2%まで落ち込んでいたといいます。
ところが2014年、状況が変わります。サッポロの「極ZERO」が国税局からの指摘を受けて第四のビールから発泡酒へ仕様変更となったのに、売れ行きは好調を維持しました。これを見たキリン・アサヒ・サントリーの3社は、同年9月2日にプリン体・糖質ゼロ等を訴求する「機能系」発泡酒を発売します。サントリーは2年3か月ぶりの発泡酒事業再参入でした(商品名「おいしいZERO」)。
撤退したカテゴリーに、2年で戻る。プライドより実利を取る判断です。
2017年の税制改正——三段階で一本化される
そして、いま進行中の最大の変化です。
2017年(平成29年)に酒税法が改正され、ビール類(ビール・発泡酒・第三のビール)の税率を段階的に一本化することが決まりました。段階は三つ。2020年10月、2023年10月、そして2026年10月です。
350mlあたりの酒税額で整理すると、次のようになります。
| 時期 | ビール | 発泡酒(麦芽25%未満) | 新ジャンル(第三のビール) |
|---|---|---|---|
| 〜2020年9月 | 77.00円 | 46.99円 | 28.00円 |
| 2020年10月〜2023年9月 | 70.00円 | 46.99円 | 37.80円 |
| 2023年10月〜2026年9月 | 63.35円 | 46.99円(新ジャンル区分は廃止され発泡酒②に統合) | |
| 2026年10月〜 | 54.25円(すべて同一。1キロリットルあたり155,000円) | ||
この表は、飲食店の方に印刷して壁に貼っていただきたいくらい重要です。読み方はこうです。
- ビールは、2020年から2026年にかけて、350mlあたり22.75円下がる(77.00円→54.25円)
- 新ジャンルは、28.00円から54.25円へ、26.25円上がる(ほぼ倍)
- その結果、2026年10月以降、ビールと発泡酒と新ジャンルの間に、税金の差はなくなる
ひとつ添えておきます。この表は酒税額の話です。実際の卸価格や店頭価格をどうするかは、メーカー・卸・小売それぞれの判断になります。本記事で扱うのは、制度として決まっている税額の変更までです。
「安いから第三のビール」という理由が消える
ここが本質です。第三のビールも、発泡酒も、そもそも税金を安くするために生まれたカテゴリーでした。それが2026年10月に消えます。低税率という存在意義がなくなる。
だからビール大手4社は、第三のビールの主力商品について、ビールへの「格上げ」を相次いで発表しました。サントリーの「金麦」もその一つです。
2026年1月13日、サントリーは「2026年 サントリー(株)ビール事業方針」(掲載番号No.14968)を発表し、金麦のビール化を明言しました。
「10月には、『金麦』ブランド3種の中味をビール化し価値を高めることで、お客様のエコノミー需要を喚起し、市場を活性化します。発売20年目となる今年、『金麦』ブランドを進化させ、将来的には中期目標として販売数量3,500万ケース(633ml×20本換算)を目指します。」(サントリーホールディングス ニュースリリース No.14968、2026年1月13日)
具体的な中身の変更は次のとおりです。
- 麦芽比率を、ビールの最低要件である50%以上に引き上げる(従来は25〜50%未満)
- 麦由来の蒸留酒(小麦スピリッツ)の使用を取りやめる
- 非熱処理のビール(=生ビール)として販売する
- 発売は2026年10月6日から
- 「金麦〈ザ・ラガー〉」は秋以降に終売し、代わりに「金麦〈豊潤〉」を投入
2007年に「発泡酒+小麦スピリッツ」として生まれた商品が、19年経ってビールになる。制度に合わせて生まれた商品が、制度が変わったので本物になった——という言い方もできます。
これは飲食店にとって何を意味するのか
私の見立てを書きます。ここは私見であり、公式見解ではありません。
1つめ。ビールの原価が下がります。350mlあたり9.10円(63.35円→54.25円)の減税です。樽で仕入れている店なら、この差は無視できません。卸価格にどう反映されるかはメーカー・卸の判断ですが、原価構造が変わるのは事実です。
2つめ。缶で仕入れて出している業態は、逆風の可能性があります。新ジャンルを安い選択肢として置いていた店は、その優位が消えます。角打ち、立ち飲み、居酒屋の「もう一杯」需要をどう設計し直すか。ここは早めに考えておいたほうがいい。
3つめ。「ビールです」と言えるようになる商品が増えます。これはメニュー表記の話です。金麦がビールになれば、メニューに「ビール」と書けます。お客さまへの説明が単純になります。
4つめ。メーカーの提案内容が変わります。サントリーの2026年方針は、10月以降について明確に4本柱を示しています。ザ・プレミアム・モルツ=プレミアム、サントリー生ビール=スタンダード、パーフェクトサントリービール=機能、金麦=エコノミー。この4分類で提案が来ると分かっていれば、こちらの受け答えも準備できます。
第10章 ノンアル・微アルという、新しい市場
2010年、オールフリーは1週間で売り切れた
2010年8月3日、オールフリーが発売されました。当初は350ml缶のみで、334ml瓶は9月2日発売の予定でした。
ところが、需要が読みを超えます。発売1週間後の8月10日、生産が追いつかず一時販売休止を発表。その後生産体制を整え、販売休止から4週間後の9月7日に販売を再開し、瓶は予定より5日遅れで発売されました。
結果として、ノンアルコールビールテイスト飲料では後発でありながら、発売開始から1年間(2010年8月〜2011年7月)で同分野の累計販売金額No.1のブランドになります。その後も2011年から2015年まで5年連続でNo.1ブランドの座を保持しました(2016年以降はアサヒビール「アサヒドライゼロ」に首位を明け渡しています)。
なぜ「3つのゼロ」だったのか
オールフリーの設計は、アルコールゼロ・カロリーゼロ・糖質ゼロという「3つのゼロ」でした。加えて低プリン体(100mlあたり0〜0.5mg)です。
2010年という年を思い出してください。この時期、ノンアルコールビールは「運転する人が仕方なく飲むもの」という位置づけが強くありました。オールフリーは、そこにアルコールを飲まない選択そのものを商品化するという角度で入っていきました。
なお、アルコール分0.00%なので法律上の問題はないものの、アルコール飲料を飲むことを誘引するおそれがあることから、20歳未満が飲用することは推奨されていません。パッケージには「当商品は20歳以上の方の飲用を想定して開発しました。」と記載されています。飲食店で出す際も、この点は押さえておくべきです。
2019年、樽詰が出た——これが飲食店にとっての本命
私が個人的に「これは大きい」と思った出来事があります。2019年6月25日、日本国内のビールメーカーとして初めて、ノンアルコールビールテイスト飲料の樽詰「オールフリー樽詰(10L)」が料飲店限定で発売されました。
缶や瓶ではなく、樽です。つまりサーバーから注げる。
これが何を意味するか。宴会で、飲まない方だけが缶を渡される、という構図が変わるのです。同じサーバーから、同じグラスに注がれる。乾杯の絵が揃う。飲まない人が「飲まない人」に見えない。
飲食店の現場で、これはかなり効きます。忘年会や歓送迎会で、車で来た方、妊娠中の方、体質的に飲めない方、その日は飲まないと決めている方。この方々に「同じ体験」を提供できるかどうかは、店の評価に直結します。
機能性表示食品という展開
オールフリーは2019年以降、機能性表示食品としての展開も進めています。
- 2019年7月16日「からだを想うオールフリー」:ローズヒップに含まれるポリフェノールのひとつ、ローズヒップ由来ティリロサイドを機能性関与成分として含有
- 2023年6月「あしたを想うオールフリー」:GABAを機能性関与成分として含有
本記事では、これらの商品の効果・効能については記載しません。「機能性表示食品として届け出られている」という事実と、関与成分の名称のみを事実として記します。
2022年「ビアボール」——割って飲むという発想
もう一つ、記録しておくべき挑戦があります。
2022年10月4日(業務用中瓶500ml)/11月15日(家庭用小瓶334ml)、「ビアボール」が発売されました。炭酸水で割ることを製品上で訴求した、日本初のビールです。
スペックが尋常ではありません。アルコール度数16%。サントリーのビールとしては過去最高でした。これを氷と炭酸水で割って飲む。推奨は炭酸水3:ビアボール1です。炭酸水を入れずに氷だけで飲む「ビアロック」も提案されていました。
発売当時のリリースには、こう書かれています。
「ビール類市場は17年連続で前年割れが続いており、お客様がビールに求める価値も変化していると考えています。今回は、『新しいビールの文化をつくりたい』という思いから、好きな濃さで自由に楽しむというこれまでにない価値をもった新しいビールとして……」(サントリーホールディングス ニュースリリース No.14178、2022年)
商品担当者のコメントも印象的でした。
「果敢なチャレンジ精神をもち、誰もやらなかったことに挑む。まさに、『ビアボール』はサントリー創業の精神である『やってみなはれ』を体現する挑戦だと思っています。」(同リリース、マーケティング担当・佐藤勇介氏のコメント)
開発面では、発酵工程でアルコール度数を16%まで高める難しさを乗り越えたこと、炭酸水で割ったときの爽快さを保つ味わい設計をしたことが語られています。
そして2026年時点で、ビアボールは製造終了となっています。
私はこの商品を、失敗とは呼びたくありません。「好きな濃さで飲む」という提案そのものは、飲食店にとって非常に応用範囲が広いからです。同じ原液から、濃い一杯と薄い一杯を出せる。飲む量をお客さまが自分で決められる。これは「飲めない人・あまり飲みたくない人」が同じテーブルにいる時代に、確実に意味を持つ考え方です。

「飲まない」を含めた設計へ
2025年4月22日、オールフリーはブランド初のノンアルコールサワーテイスト飲料「オールフリー クリア」(レモン&ライム/ビターオレンジ)を発売します。2026年2月にはこれを「オールフリー スパークリング」へ改名し、同年4月にマスカット・オブ・アレキサンドリアを追加。さらに同年4月28日には「オールフリー〈エールテイスト〉」を発売しました。
公式サイトも「2025年4月にノンアルコールサワーテイスト飲料が発売され、カテゴリーを横断するブランドへと発展した」と記載しています。ビールテイストの枠を出て、「ノンアルコール飲料のブランド」になりつつある、ということです。
飲食店として押さえるべきは、ここです。ノンアルコールは、もう「ビールが飲めない人のための代替品」ではありません。選択肢の一つになりました。だとすれば、ドリンクメニューでの扱いも変えるべきです。ソフトドリンクの欄の隅ではなく、独立した並びで、ちゃんと名前と特徴を書く。それだけで注文は動きます。
第11章 水と森への取り組み——「水と生きる」の中身
2005年、コーポレートメッセージが決まった
「水と生きる SUNTORY」——このコーポレートメッセージが制定されたのは2005年です。公式サイトはその意図をこう説明しています。
「サントリーという企業の源泉ともいえる水を大切にしたい。そして、水のようにしなやかな企業でありたい。水のように躍動し、立ち止まらず、育ち、成長を続ける企業でありたい。」(サントリーホールディングス「サントリーの歴史」)
企業スローガンというのは、たいてい後付けの美辞麗句になります。ですがこの会社の場合、1963年のビール参入時から「水が採れる土地に工場を建てる」という行動を取っているので、言葉が先ではありません。行動が先で、言葉が後です。ここが強い。
2003年「天然水の森」——2026年時点で12,000ヘクタール超
言葉より先に行動、という話でいえば、こちらのほうが分かりやすいでしょう。
2003年、サントリーは「天然水の森」活動を開始しました。国内工場の水源エリアで、森林と生物多様性を保全・再生する活動です。
公式サイトは、この活動の位置づけについて明確に書いています。
「サントリーはこの活動をボランティア活動ではなく、基幹事業と位置付けています。」(サントリー「天然水の森」サイト)
ボランティアではなく基幹事業。この一文が全てです。工場で汲み上げる地下水よりも多くの水を生み出す森を育む——という考え方に立っています。
規模は次のとおりです。
- 全国16都府県、27カ所、12,000ヘクタール超(2026年3月現在)
- 2021年には、サントリーグループ国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水の涵養を達成(水源涵養約12,000ヘクタール到達時点)
12,000ヘクタールというのは、東京の山手線の内側の面積(約6,300ヘクタール)のおよそ2倍です。この規模の森を、企業が水源のために整備している。
「水育(みずいく)」と、環境への取り組み
関連する取り組みも並べておきます。
- 1973年:「愛鳥活動」スタート。「環境のバロメーター」である野鳥が安心してすめる環境を守る取り組み。白州蒸溜所内に「バードサンクチュアリ」を開園
- 2003年:「天然水の森」活動開始
- 2004年:次世代環境教育「水育」開始
- 2021年:サントリー国内初のCO2排出実質ゼロ工場「サントリー天然水 北アルプス 信濃の森工場」稼働
- サントリーグループは、日本・米州・欧州の飲料・食品および酒類事業に関わる全ての自社生産研究拠点で、購入する電力の100%再生可能エネルギー化を達成(〈天然水のビール工場〉京都サイト記載)
環境の話をお客さまにする必要はありません。ですが、「この会社は水源の森を12,000ヘクタール持っている」という一言は、プレミアムなビールを注ぐときに、確実に効きます。
第12章 工場見学——現地に行くという学び方
いま見学できるのは二か所——熊本は地震で休業中です
サントリーのビール工場のうち、見学を実施しているのは以下です(2026年8月27日時点)。
| 工場 | 所在地 | 見学 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野 | 東京都府中市矢崎町3-1 | 実施 | 営業時間9:30〜17:00(ショップ11:00〜16:50)。休業日は年末年始・工場休業日 |
| 〈天然水のビール工場〉京都 | 京都府長岡京市調子3-1-1 | 実施(有料) | 営業時間9:30〜17:00(ショップ11:00〜16:30) |
| サントリー九州熊本工場 | 熊本県上益城郡嘉島町 | 休業中 | 令和8年(2026年)熊本地震の影響により、工場見学および場内全施設(ショップを含む)を休業。新規予約の受付も停止。再開は決定次第、同社ホームページで告知(2026年7月29日付 同社お知らせ) |
| 〈天然水のビール工場〉群馬 | 群馬県邑楽郡千代田町 | 実施していない | 製造専用 |
熊本については、少し補足が要ります。この工場の見学は2025年7月1日に、京都と同じ「『ザ・プレミアム・モルツ』おいしさ発見ツアー」として有料で再開していました(参加費1,000円・20歳未満無料・所要90分)。長く休止していたものが、ようやく戻ってきたところでした。
ところが2026年7月、令和8年熊本地震が発生します。同社は7月29日付のお知らせで、お客さまの安全を確保できるまでの間、工場見学と場内全施設を休業し、新規予約の受付も停止すると発表しました。報道によれば工場の操業自体も停止しており、復旧には3〜4か月、年内の生産再開を目指すとされています。
お出かけを考えておられる方は、必ず同社ホームページで再開状況をご確認ください。本記事の記載は2026年8月27日時点のものです。
2025年4月、京都工場の見学がリニューアルして有料化された
ここは、飲食店の経営をされている方にこそ注目していただきたい話です。
2025年4月15日、サントリー〈天然水のビール工場〉京都の見学ツアーがリニューアルオープンし、同時に有料化されました。予約開始は同年4月1日9時30分からです。
内容はこうです。
- ツアー名:「ザ・プレミアム・モルツ」おいしさ発見ツアー
- 所要時間:90分
- 参加費:1,000円(税込) ※20歳未満は無料
- 見学後、ゲストルームで「ザ・プレミアム・モルツ」「同〈ジャパニーズエール〉香るエール」「同 マスターズドリーム」を合計3杯まで楽しめる(20歳未満にはソフトドリンクを提供)
リニューアルのポイントとして公式が挙げているのは以下です。
- ウェルカムムービー:京都西山エリアの自然の恵みに感謝し、日々最高のうまさを求めてビールづくりに励むつくり手の思いを伝えるオープニング
- 「つくり手等身大モニター」:製造工程の説明に加え、つくり手が映像で登場して自身の思いを語る。各工程で複数名から1名がランダムに登場するため、参加するたびに違う話が聞ける
- 大型モニター:ガラス張りの仕込室の前に大型モニターを新設。パッケージング工程では3面スクリーンを設け、参加者が缶になったかのような目線で製造ラインを体感できる映像
- ゲストルーム:オリジナルデザイングラス、京野菜を使ったおつまみなど京都らしいおもてなし。神泡アート・神泡セルフサーブなど工場ならではの体験
無料だったものを有料にする、という決断
工場見学は長らく「無料のPR施設」でした。それを1,000円取るようにした。しかも、その理由をきちんと言葉にしています。
公式リリースの表現を借りれば、「これまで以上に付加価値の高いビール工場体験を目指しました」ということです。価格を上げるかわりに、体験の中身を作り替えた。
これは飲食店の値上げの話とまったく同じ構図です。値段を上げるときに、何を足すのか。何をやめるのか。「ランダムでつくり手の話が変わるから、来るたびに違う」という設計は、リピート理由を機械的に作り込んでいるという点で、非常によく出来ています。
もう一つ、私が唸ったのが「20歳未満は無料」です。酒の工場なのに、子ども連れを歓迎する設計になっている。ソフトドリンクを提供する。いまお金を払わない人を、将来の客として招くという考え方です。

飲食店の方には、スタッフと行くことをおすすめします
私が飲食店の経営者さんにお伝えしているのは、「ホール担当のスタッフを連れて、一度は工場に行ってください」ということです。
理由は三つあります。
一つめ。仕込室のガラスの向こうを見ると、ビールの話が具体的になります。「デコクション製法です」と本で読むのと、釜を見るのとでは、口から出る言葉が変わります。
二つめ。工場の注ぎ方を見て、自分の店の注ぎ方を疑えます。神泡セルフサーブのような体験は、まさにそのためのものです。
三つめ。スタッフが「この店のビールには理由がある」と思えるようになります。これは接客の質に直結します。何となく注いでいるビールと、由来を知って注ぐビールは、お客さまへの伝わり方が違います。
第13章 いま、サントリーのビールはどうなっているのか
2026年の4本柱
2026年時点で、サントリーのビール事業は明確に4ブランド体制です。同社が掲げるビジョンは「最高のうまさで、ワクワクさせたい。」。10月の酒税改正後の役割分担は、公式に次のように示されています。
| ブランド | 役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| ザ・プレミアム・モルツ | プレミアム | 麦芽100%・欧州産アロマホップ100%・天然水100%。2026年にパッケージを金から紺へ刷新、中身も「深いコク」「心地よい余韻」へ進化 |
| サントリー生ビール | スタンダード | 「沁みわたるのどごし」。2026年リニューアルでベースカラーに青を配置。Jリーグとトップパートナー契約を締結 |
| パーフェクトサントリービール | 機能 | 糖質ゼロと本格ビールの味わいを両立。2025年は販売数量が対前年118%と伸長 |
| 金麦 | エコノミー | 2026年10月6日よりビール化。中期目標として販売数量3,500万ケース(633ml×20本換算)を掲げる |
加えて、クラフト路線の「東京クラフト」、ノンアルコールの「オールフリー」、ライセンス生産の「カールスバーグ」があります。
2025年の実績——公式が出している数字
推測ではなく、公式が公表している数字だけを書きます。2026年1月13日のリリースには、2025年の実績としてこう記載されています。
- サントリー生ビール(発売3年目):業務用の瓶・樽取扱店舗数が増加し、販売数量が対前年104%
- パーフェクトサントリービール:リニューアル後のパッケージ・中味が好評で、販売数量が対前年118%
また2025年のリリースには、酒税改正後もビール類(缶)市場の約5割を占めると推定されるのがエコノミーカテゴリーである、という同社の見立てが記載されています。金麦をビール化してでもこのカテゴリーを取りにいく理由が、ここにあります。
カールスバーグという伏線の回収
先ほど少し触れましたが、あらためて。
1963年、サントリーはデンマークのカールスバーグを手本にビールを造り始めました。そして現在、サントリーはデンマーク・カールスバーグ社よりライセンスを受け、カールスバーグを生産・販売しています。
2026年時点のラインアップには「カールスバーグ〈北欧からの贈りもの〉」「カールスバーグ〈Football 2026〉」「カールスバーグ クラブボトル」があり、公式サイトには「カールスバーグが飲めるお店」という検索メニューまで用意されています(世界約150カ国で愛されるビール、と紹介されています)。
手本にした相手のビールを、60年後に自社で造る。これほど分かりやすい「一周した」話は、そうそうありません。

組織の変遷——なぜ「サントリービール株式会社」が消えたのか
細かい話ですが、資料を読むときに混乱しやすいので整理しておきます。ビール事業の運営主体は、この20年で何度も変わっています。
- 2009年4月:持株会社制へ移行。ビール事業は(初代)サントリー酒類株式会社が製造・販売
- 2014年10月1日:組織再編により、サントリー酒類(初代)のビール事業を分割・独立させ「サントリービール株式会社」を設立
- 2015年1月1日:サントリービア&スピリッツ株式会社が(2代目)サントリー酒類株式会社に商号変更
- 2017年4月1日:国内酒類事業の一体運営体制強化のため「サントリーBWS株式会社」を設立
- 2022年7月1日:サントリーBWS、サントリービール、サントリースピリッツ、サントリーワインインターナショナル、サントリー酒類(2代目)を経営統合し、「サントリー株式会社」(2代目)が発足。国内の酒類事業を一手に担う
ですから、古い資料で「サントリービール(株)」と書いてあっても、2022年7月以降のリリースでは「サントリー(株)」になっています。缶に記載の製造者名も、2022年7月製造分から「サントリー(株)」に変更されました。
第14章 飲食店として、この歴史をどう使うか
1. ドリンクメニューに「理由」を一行足す
いちばん簡単で、いちばん効くのがこれです。
「生ビール(中) 600円」だけの行に、一行足します。
- 「麦芽100%・欧州産アロマホップ100%・天然水仕込み」
- 「上面発酵酵母を使ったエール。フルーティな香りが特徴です」
- 「熱処理をしていない、いわゆる生ビールです」
これだけで、単価の説明がつきます。お客さまは、高いことに文句を言うのではなく、理由が分からないことに文句を言う。ずっとそう感じてきました。
2. ノンアルコールを、ちゃんとした場所に置く
ソフトドリンクの一番下に「ノンアルコールビール 400円」と書いてあるだけの店を、私は何十軒も見てきました。
そうではなく、ビールの並びに、独立した項目として置くべきです。名前を書き、特徴を書き、可能なら樽詰のものを扱う。2019年から料飲店限定でオールフリーの樽詰が出ていることは、この記事で書いたとおりです。
飲まない人が「飲まない人扱い」されない店は、幹事さんに選ばれます。宴会需要は、幹事さんが決めます。
3. 2026年10月に向けて、卸に「いま」聞いておく
酒税改正は10月1日です。金麦のビール化は10月6日から。
この時点で店側が確認しておくべきことは、次のとおりです。
- 樽・瓶・缶それぞれの卸価格が、いつ、どう変わるのか
- 現行品(改正前の中身)の在庫を、いつまで納品してもらえるのか
- 新ジャンルで置いていた商品が、ビール化した後も同じ価格帯で入るのか
- ビール化に伴って、メニュー表記を変える必要があるか
この4つを、営業さんが説明に来る前に、こちらから聞いてください。聞かれた側は「この店は分かっている」と判断します。そこから条件の話は変わります。
4. 「注ぎ方」を、店の商品にする
神泡の一連のキャンペーンで、消費者は「泡の質で味が変わる」ということを学びました。缶からでも泡が作れることを知ってしまった。
ということは、店で出す生ビールの泡が雑だと、家より下という評価になりかねません。ここは怖い話です。
やることは決まっています。サーバーの毎日の洗浄。グラスの油分を残さない洗い方。適正な温度管理。樽の回転(開けてから何日経ったか)。注ぎ方の統一。ぜんぶ、お金をかけずにできることです。
5. 一杯目に「その店らしさ」を置く
ここは考え方の話です。
サントリーの歴史を追って、私が一番強く感じたのは、この会社は45年赤字でも「うちのビール」を持ち続けたということでした。売れないから他社の真似をしたこともある(サントリードライ)。それでも、麦芽100%という自分の答え(モルツ)を捨てなかった。そして、その延長線上にプレモルがあります。
お店も同じです。一杯目のビールは、その店が何を大事にしているかの表明になります。銘柄を何にするか、どのグラスで出すか、いくらで出すか。そこに理由がある店は、価格競争から抜けられます。
第15章 60年を、一枚の表にする
ここまで長くお付き合いいただきました。最後に、サントリーのビール事業の節目だけを一枚にまとめます。年表としてはこれが結論です。
| 年 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1899年 | 鳥井信治郎が大阪で「鳥井商店」を開業 | 創業。ぶどう酒から始まった |
| 1907年 | 「赤玉ポートワイン」発売 | 会社の礎になった大ヒット商品 |
| 1923年 | 山崎蒸溜所を建設 | 日本初のモルトウイスキー蒸溜所 |
| 1928年 | 日英醸造を買収し、ビール事業へ | 一度目のビール挑戦 |
| 1930年 | 「オラガビール」発売 | ヒットするも、瓶の共用を拒まれるなど苦境に |
| 1934年 | ビール事業を売却 | 一度目の撤退。宿題は次世代へ |
| 1961年 | 佐治敬三が2代目社長に就任 | ビール再挑戦を決断する人 |
| 1963年 | 社名を「サントリー株式会社」に変更/武蔵野ビール工場竣工/「サントリービール」発売 | ビール事業への本格参入 |
| 1967年 | 「サントリービール〈純生〉」発売 | 「生ビールとは何か」の論争を経て、今日の定義が固まる |
| 1969年 | 桂(のちの京都)ビール工場開設 | 第2の生産拠点 |
| 1982年 | 利根川ビール工場開設 | 第3の生産拠点 |
| 1984年 | 「ビーハイ」発売 | のちの第三のビールのルーツ。当時は不発 |
| 1986年 | 麦芽100%の「モルツ」発売 | 名前ではなく原料で勝負する方針転換 |
| 1989年 | 武蔵野工場にミニブルワリー竣工/「モルツ スーパープレミアム」樽生限定発売 | プレモルの原型が生まれる |
| 1994年 | 発泡酒「ホップス〈生〉」発売 | 日本の発泡酒市場を創造 |
| 1996年 | 「スーパーホップス」発売(麦芽25%未満) | 秋の増税に先回りして商品を用意した |
| 2000〜2001年 | 「モルツ スーパープレミアム」缶発売・通年化 | プレミアムが家庭に降りてきた |
| 2003年 | 「ザ・プレミアム・モルツ」発売/九州熊本工場竣工/「天然水の森」活動開始 | デフレのなかであえて高いビールを出した年 |
| 2004年 | 第三のビール「麦風」発売/モンドセレクションにエントリー | この年の判断が3年後に効いてくる |
| 2005年 | ザ・プレミアム・モルツがモンドセレクション最高金賞(国産ビール初)/全ビールを天然水仕込みに/「水と生きる」制定 | 生産終了の可能性があった商品が息を吹き返す |
| 2007年 | 新ジャンル「金麦」発売 | 安さではなく世界観で勝った第三のビール |
| 2008年 | ビール事業が参入45年目にして初の単年度黒字/プレミアムビールNo.1/課税出荷量シェア初の第3位 | 45年目の到達点 |
| 2010年 | ノンアルコール「オールフリー」発売 | 3つのゼロ。発売1週間で販売休止するほどの需要 |
| 2012年 | プレモルに「ダイヤモンド麦芽」を加えて全面リニューアル/発泡酒事業から一旦撤退 | 成功したブランドを自分で作り替えた |
| 2014年 | 発泡酒事業に2年3か月ぶり再参入(おいしいZERO) | プライドより実利 |
| 2015年 | 「マスターズドリーム」発売/「モルツ」終売(29年)/「ザ・モルツ」へ | 上へ伸ばし、下を整理した年 |
| 2016年 | 「〈香るエール〉」発売 | エールという選択肢を定番化 |
| 2017年 | 「東京クラフト〈ペールエール〉」発売/3工場を〈天然水のビール工場〉に改称/酒税法改正が決定(三段階の一本化) | いまの構造の起点になった年 |
| 2018〜2019年 | 「神泡」キャンペーン/電動神泡サーバー配布/オールフリー樽詰(業務用)発売 | 飲む瞬間の体験を商品化した |
| 2020年10月 | 酒税改正 第1段階(ビール減税・新ジャンル増税) | 一本化への第一歩 |
| 2021年 | 「パーフェクトサントリービール」発売 | 54年ぶりの熱処理ビール。糖質ゼロ |
| 2022年 | 「ビアボール」発売/国内酒類事業を「サントリー株式会社」(2代目)に統合 | 割って飲むビールという新提案 |
| 2023年 | 「サントリー生ビール」発売(29年ぶりの名称復活)/ザ・モルツ缶が終売/酒税改正 第2段階(第三のビール区分が廃止) | 看板の入れ替えと制度の転換が重なった |
| 2024年 | ザ・モルツの瓶・樽が終売(モルツ商標38年の歴史に幕) | ひとつの時代が完全に終わった |
| 2025年 | 京都工場の見学ツアーをリニューアル・有料化/主要4ブランドを一斉リニューアル | 体験と商品を同時に作り替えた |
| 2026年 | 10月1日 酒税改正 第3段階(ビール類の税率が完全一本化・54.25円/350ml)/10月6日 金麦がビール化/プレモルのパッケージが金から紺へ | 「安いから第三のビール」という時代の終わり |

おわりに——45年と、その先
この記事を書きながら、私が何度も立ち止まったのは「45年」という数字でした。
1963年に始めた事業が、黒字になったのが2008年。担当者は何代も入れ替わったはずです。名前を変え、中身を変え、カテゴリーを作り、また税制で潰され、また作り直す。その繰り返しの45年です。
飲食店の経営に45年待てとは、絶対に言いません。それは無責任です。サントリーが45年待てたのは、ウイスキーと清涼飲料という稼ぐ事業があったからです。そこを外して「やってみなはれ」だけを真似したら、店は消えます。
ただ、この歴史から持ち帰れるものは、確実にあります。
ひとつ。名前を変えても、中身が変わらなければ順位は動かない。1980年代のサントリーが、それを証明しています。店名を変えても、料理が変わらなければ客足は戻りません。
ふたつ。制度は必ず変わる。だから変わった後の商品を、変わる前に用意する。1996年のスーパーホップスが、それです。2026年10月の酒税改正も、待つのではなく、いまから準備するものです。
みっつ。試作を回せる小さな場所を持っておく。1989年の武蔵野工場のミニブルワリー。通常の20分の1の設備。ここで生まれた試作品が、19年後に会社を黒字にしました。あなたのお店の「20分の1」は何でしょうか。まかない、日替わり、月替わりの一皿。試せる枠を持っている店だけが、次の看板を持てます。
次に、あなたのお店でサントリーのビールを注ぐとき。あるいはお客さまとして一杯目を頼むとき。この記事のどこか一行でも思い出していただけたら、書いた甲斐があります。
その一杯を、どう伝えるか
ここまでお読みくださった方は、もうお気づきだと思います。銘柄の話は、味の話であると同時に、お客さまへの説明の話です。
どれだけ良いビールを仕入れても、メニューに「生ビール」の四文字しか書いていなければ、お客さまはそれを選んだことになりません。逆に、一行の説明があるだけで、同じ一杯が「選ばれた一杯」に変わります。ここに手を入れるのに、設備投資は要りません。
私たち株式会社デリシャスノーツは、飲食店のWEB集客を専門にしています。ホームページ、ぐるなび・食べログ・Googleビジネスプロフィールといった媒体、そしてメニューの見せ方まで、「お店のことがお客さまにどう伝わっているか」を整える仕事です。
ドリンクメニューの書き方でも、媒体の更新が止まっていることでも、10月の酒税改正に向けた準備でも構いません。気になることがありましたら、お問い合わせからお気軽にご相談ください。営業のご連絡はいたしません。
参考にした資料(2026年8月18日取得。工場見学に関する情報のみ2026年8月27日に更新)
本記事は、以下の資料を実際に読んだうえで執筆しました。一次情報(サントリー公式)を優先し、二次情報を用いた箇所は本文中でその旨を示しています。
サントリー公式(一次情報)
- サントリーホールディングス「サントリーの歴史」 https://www.suntory.co.jp/company/history/
- サントリーホールディングス 採用情報「サントリー『やってみなはれ』の歴史」 https://www.suntory.co.jp/recruit/history/
- サントリーホールディングス 企業情報「ビール事業|事業紹介」 https://www.suntory.co.jp/company/business/beer/
- サントリー「ビール類・ノンアルコールビールテイスト飲料 ポータルサイト SUNTORY BEER」 https://www.suntory.co.jp/beer/
- サントリー 商品情報(カロリー・原材料)「ビール類」 https://products.suntory.co.jp/beer/
- サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野「ものづくりのこだわり」 https://www.suntory.co.jp/factory/musashino/about/
- サントリー〈天然水のビール工場〉京都 https://www.suntory.co.jp/factory/kyoto/
- サントリー〈天然水のビール工場〉群馬 https://www.suntory.co.jp/factory/tonegawa/index.html
- サントリーホールディングス 企業情報「事業所一覧(工場)」 https://www.suntory.co.jp/company/branch/factory.html
- サントリー「天然水の森」サイト https://www.suntory.co.jp/eco/forest/
- サントリーホールディングス ニュースリリース No.14968「2026年 サントリー(株)ビール事業方針」(2026年1月13日) https://www.suntory.co.jp/news/article/2026/14968.html
- サントリーホールディングス ニュースリリース No.14723「2025年 サントリー(株)ビール事業方針」 https://www.suntory.co.jp/news/article/14723.html
- サントリーホールディングス ニュースリリース No.14952「『ザ・プレミアム・モルツ』ブランド3種 リニューアル新発売」 https://www.suntory.co.jp/news/article/14952.html
- サントリーホールディングス ニュースリリース No.14787「サントリー〈天然水のビール工場〉京都 工場見学リニューアルオープン」 https://www.suntory.co.jp/news/article/14787.html
- サントリーホールディングス ニュースリリース No.14344「これからの時代のビール『サントリー生ビール』新発売」(2023年3月28日) https://www.suntory.co.jp/news/article/14344.html
- サントリーホールディングス ニュースリリース No.14178「日本初の炭酸水でつくる自由なビール『ビアボール』誕生」(2022年) https://www.suntory.co.jp/news/article/14178.html
- サントリー「ご利用にあたって」(ウェブサイト利用条件・著作権について) https://www.suntory.co.jp/guide/
※サントリー公式サイトは直接アクセス時にアクセス制限がかかるページがあったため、一部はインターネットアーカイブ(Wayback Machine)に保存された公式ページを参照しました。
報道・業界メディア(二次情報)
- 日本ビアジャーナリスト協会「サントリー武蔵野ビール工場の歴史とその挑戦」 https://www.jbja.jp/archives/9491
- 日本ビアジャーナリスト協会「金麦がついにビールに!2026年10月 酒税法改正とサントリーの戦略」 https://www.jbja.jp/archives/58518
- J-CASTニュース「サントリーのビール部門 45年かけて黒字化へ」(2008年6月24日) https://www.j-cast.com/2008/06/24022358.html
- LNEWS「サントリー/『九州熊本工場』竣工」(2003年7月) https://www.lnews.jp/backnumber/2003/07/9602.html
- 日本経済新聞「サントリービール、『TOKYO CRAFT(東京クラフト)〈ペールエール〉』を発売」 https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP434306_U7A120C1000000/
- ビール女子「ビールが“値下げ”された10月の酒税法改正!どう変わった?」 https://beergirl.net/liquor-tax-law-202310_c/
百科事典(事実確認の補助として使用)
- Wikipedia日本語版「サントリー」「ザ・プレミアム・モルツ」「モルツ」「金麦」「サントリーオールフリー」「発泡酒」「第三のビール」 https://ja.wikipedia.org/
百科事典の記述については、可能な限りサントリー公式の記述および報道と突き合わせて確認しています。突き合わせができなかった項目は、その旨を本文中に明示しました。
画像の出典と利用条件について
本記事に掲載した写真は、いずれもウィキメディア・コモンズで公開されているクリエイティブ・コモンズ・ライセンス作品です。各画像のキャプションに、撮影者・ライセンス種別・ファイルページへのリンク・取得日を記載しています。
サントリー公式サイト掲載の商品画像・工場写真・ニュースリリース添付画像は、本記事では一切使用していません。同社の「ご利用にあたって」には、ウェブサイトに収録されているコンテンツについて「お客様個人で利用するため……ダウンロードしたり、お客様個人のパソコンにデータを保存、またはプリントアウトすることは構いませんが、これを他のウェブサイトや印刷媒体に転載したりすることはできません」と明記されているためです。ダウンロードも行っていません。
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。飲酒運転は絶対にやめましょう。
妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。お酒は適量を、楽しく。
