日本酒応援サイト「サケナビ」掲載日本酒絶賛募集中です。

カゴメ「夏しぼり2026」が届いた|トマトジュースの歴史と、カゴメという会社の話

カゴメ「夏しぼり2026」記事のアイキャッチ画像
目次

1年に一度しか会えないトマトジュースが、今年も届きました

去年、私は生まれて初めて「トマトジュースって、こんな飲みものだったのか」と思いました。

きっかけは、カゴメの「夏しぼり」です。缶を開けた瞬間に立ちのぼる、畑でトマトをもいだときのあの青い香り。口に含むと、甘みと酸味がケンカせずに同じ方向を向いている。飲み終わったあとに、舌の上に土の記憶みたいなものが残る。あれは、私が知っていたトマトジュースとは別の飲みものでした。

それから1年。2026年版が、我が家に届きました。

カゴメ「夏しぼり2026」190g缶を手に持ったところ。缶には国産トマト100%・食塩不使用と書かれている
カゴメ「夏しぼり2026」190g缶を手に持ったところ。缶には国産トマト100%・食塩不使用と書かれている

缶には「夏しぼり 2026」。そして「国産トマト100%」「食塩不使用」。上には「ニッポンの旬 おいしく搾りました」の丸いマーク。190gの小さな缶に、その年の夏がまるごと1回分だけ詰まっています。

この缶を手のひらに乗せると、毎年少しだけ緊張します。今年のトマトは、どんな夏を過ごしてきたんだろう、と。

そもそも、トマトジュースはどこから来たのか

せっかくなので、今年は少しだけ寄り道をさせてください。あなたは、トマトジュースがいつ、どこで生まれた飲みものかご存じですか。

アメリカのホテルの、間に合わせの一杯から

はじまりは、1917年のアメリカだと伝えられています。インディアナ州のフレンチリック・スプリングス・ホテルで、朝食に出すオレンジが足りなくなった。困った料理人が、代わりにトマトをすりつぶして水と塩を加えて出したところ、これが宿泊客に受けた——という話です。

つまり、トマトジュースは「うまいものを作ろう」として生まれたのではなく、「困ったから」生まれた。飲食の世界でよくある話です。名物の多くは、事故と間に合わせから生まれます。

商品として世に出たのは1923年。当時は色が茶色くて売れず、1929年に赤い色を保つ製法ができて、ようやく広まっていきました(日本語版ウィキペディア「トマトジュース」)。

日本では1933年、カゴメから

そして日本。国内で初めてトマトジュースを製造・販売したのは、1933年(昭和8年)のカゴメです。カゴメ自身が、トマトジュースのブランドヒストリーで「日本で初めてトマトジュースを製造・販売」とはっきり書いています(カゴメトマトジュース ブランドヒストリー)。

ただし、最初から売れたわけではありません。戦争で製造は中断し、戦後に再開。1960年代には「働く男の飲みもの」として、1970年代には「風呂上がりの一杯」として売られていきます。1本の飲みものが世の中に定着するまでに、何十年もかけて売り方を変え続けている。ここは、飲食店を営む方にこそ見ていただきたいところです。商品が良ければ売れる、のではない。良い商品を、その時代の暮らしのどこに置くかを考え続けた会社が残るのです。

カゴメという会社のことを、もう少し

1899年、一人の農家がトマトの種をまいた

カゴメの創業は1899年(明治32年)。創業者の蟹江一太郎が、トマトの栽培に着手したところから始まります。1903年にトマトソース、1908年にトマトケチャップとウスターソース、そして1933年にトマトジュース(カゴメの歴史)。

順番が、いいですよね。畑が先で、工場が後。この会社は、農家から始まった会社なのです。

社名の由来も、そのまんまでした。カゴメの公式Q&Aにはこう書いてあります。「トマトを収穫するときの籠の目(かごのめ)が社名の由来です。」(「カゴメ」の社名の由来は何ですか?)。あの六角形のマークは、収穫カゴの編み目だったわけです。

企業理念は「感謝・自然・開かれた企業」

カゴメの企業理念は、3つの言葉でできています。公式には次のように書かれています(企業理念・ブランドステートメント/カゴメ統合報告書2022)。

感謝 私たちは、自然の恵みと多くの人々との出会いに感謝し、自然生態系と人間性を尊重します。
自然 私たちは、自然の恵みを活かして、時代に先がけた深みのある価値を創造し、お客様の健康に貢献します。
開かれた企業 私たちは、おたがいの個性・能力を認め合い、公正・透明な企業活動につとめ、開かれた企業を目指します。

そして、社会とお客様への約束としてのブランドステートメントが、あの有名な一行です。

自然を、おいしく、楽しく。

これ、分解するとちゃんと意味があって、「自然を」は自然の恵みを活かして食と健康を追求すること、「おいしく」は自然に反する添加物や技術にたよらず体にやさしいおいしさを実現すること、「楽しく」は地球環境と体内環境に配慮して食の楽しさの新しい需要を創造すること、と定義されています。

「食塩不使用」で「国産トマト100%」の缶を手に持ったあとにこれを読むと、腹に落ちます。理念が、商品の設計図になっている。 私はここが一番うらやましい。理念を額に入れて飾っている会社はたくさんありますが、理念どおりの商品が棚に並んでいる会社は、そう多くありません。

「夏しぼり」が特別な理由

届いたパックに入ったままのカゴメ「夏しぼり2026」の缶
届いたパックに入ったままのカゴメ「夏しぼり2026」の缶

さて、本題の「夏しぼり」です。同梱されていたリーフレットに、今年はうれしい一行がありました。愛され続けて30周年。 1996年に生まれて、2026年の夏で30年目だそうです。

「ゆるしぼり」——つぶさずに、しぼる

「夏しぼり」のおいしさの核心は、カゴメ独自の「ゆるしぼり」という製法です。できるだけトマトの果肉を押しつぶさず、丁寧にしぼる。強く搾れば量は取れますが、種や皮の雑味まで一緒に出てしまう。あえて取りきらないことで、雑味を出さずにトマトの持ち味だけを引き出す——カゴメのトマトジュースのなかでも、一番ぜいたくなしぼり方だと書かれていました。

料理をする方なら、すぐ分かると思います。出汁と同じです。絞り切ったら台無しになるものが、世の中にはある。

素材が命だから、品種から選ぶ

トマトだけでつくる飲みものなので、逃げ場がありません。だから「夏しぼり」は、適度な酸味を持つ品種と高リコピントマトを選んで使います。リーフレットにも公式サイトにも、「『夏しぼり』には高リコピントマトを10〜40%使用しています」と明記されています。結果として、コクがあるのにサラッとしている、あの飲み口になる。

畑と、二人三脚で

そしてここが、私が一番グッときたところです。「夏しぼり」のトマトは、すべて契約栽培。しかもカゴメには「フィールドパーソン」と呼ばれる担当者がいて、契約農家さんの畑を回り、生育状態に合わせて助言をしながら一緒にトマトを育てています(製品をつくるのは「工場」だけじゃない。125年の歴史をつなぐ「フィールドパーソン」の仕事とは?)。

仕入れではなく、育成。買い付けではなく、伴走。飲食業の私たちにとっての「いい生産者さんとのお付き合い」を、会社の仕組みとして持っているということです。

リーフレットによれば、2026年は長雨と二度の台風に阻まれた、生育の難しい年だったそうです。実の数は例年より少なくなり、そのぶん一つひとつに味が凝縮された。茨城県鉾田市の契約農家さんの言葉が載っていました。「一緒に嵐を乗り越えた、今年のトマトは宝物です!」

この一行を読んでから飲む1杯は、もう、ただのトマトジュースではありません。

食のプロとして、こう飲んでいます

カゴメ「夏しぼり2026」の缶を5本、横一列に並べたところ
カゴメ「夏しぼり2026」の缶を5本、横一列に並べたところ

せっかくの1年に一度です。おいしく飲みきるための提案を、いくつか。

  • とにかくキンキンに冷やす。 「夏しぼり」が缶のままなのは、密閉性で旬を閉じ込めるためであり、同時に「ヒヤッ」とした冷たさを五感で味わうためでもあります。冷蔵庫のいちばん冷える場所に置いてください。
  • 最初の1本は、何も足さずに飲む。 塩もレモンも氷も入れない。食塩不使用なので、トマトそのものの甘みと酸味の輪郭がはっきり出ます。まずは素の状態を舌に記憶させてください。
  • グラスに移して、香りを立てる。 缶からそのまま飲むのも気持ちいいのですが、少し口の広いグラスに移すと、あの青い香りが一気に立ちます。ワイングラスでも面白いです。
  • 料理に使うなら、火を入れすぎない。 冷製パスタのソース、ガスパチョ、冷やしトマトそうめんのつゆ。加熱料理より、冷たい料理に向いています。せっかくの香りを飛ばすのはもったいない。
  • お酒が好きな方は、レッドアイを。 ビールと1対1。夏しぼりで作るレッドアイは、ちょっと反則です。
  • お客様に出すなら、缶を見せる。 「2026」と書かれた缶を一度見ていただいてから注ぐ。それだけで、その一杯は「今年しか飲めないもの」に変わります。飲食店の価値づくりって、結局こういう細部の積み重ねです。

まとめ——1本の缶に、1年分の物語がある

トマトジュースは、アメリカのホテルの間に合わせから生まれ、日本では1933年にカゴメの手で世に出て、90年以上かけて日本の食卓に居場所を作ってきた飲みものです。

その延長線上に、1996年生まれの「夏しぼり」がある。30年、農家さんと一緒に育てて、つぶさずにしぼって、缶に閉じ込めてきた。私が去年感動した「もぎたての香り」の正体は、技術というより、この積み重ねそのものだったのだと思います。

今年の夏も、ちゃんと来ました。あなたも、もし来年の夏に見かけたら、ぜひ1本だけでも手に取ってみてください。冷蔵庫にこの缶が並んでいる夏は、ちょっといい夏です。


㈱デリシャスノーツでは、飲食店さまのメニュー開発・商品の見せ方・Web集客のご相談を承っています。「うちの看板商品を、もっとちゃんと伝えたい」というご相談は、お問い合わせフォームよりお寄せください。

カゴメ「夏しぼり2026」記事のアイキャッチ画像

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

是非シェアしてもらえると嬉しいです!
  • URLをコピーしました!
目次