AI検索時代の飲食店広報|これマネ京都例会で学んだ3つのこと

2026年9月9日、水曜日の夕方。私は東京から新幹線に乗って、京都の鴨川のほとりにいました。「これマネ京都」の例会に参加するためです。
これマネというのは、一般社団法人「これからの時代の・飲食店マネジメント協会」の通称です。名前が長いので、みんなこう呼びます。代表理事は山川博史さん。私はこの協会が出している「これマネシリーズ」の一冊、『これからの飲食店集客の教科書』を書かせていただいた立場でもあります。
今回の京都の会は、他の地域の会員にも開かれた回でした。だから東京からのこのこ出かけていったわけですが、正直に申し上げます。持ち帰ったのは「京都の話」ではありませんでした。いま、日本中の飲食店に同時に起きていることの話です。

会場は、鴨川のほとりの「まんざら 団栗橋」
会場は、おばんざいと焼き鳥の「まんざら 団栗橋」さん。阪急京都河原町駅からも、京阪祇園四条駅からも歩いて三分ほど。窓の外に鴨川が流れている、あの一等地です。
当日の流れは、こういう組み立てでした。
| 時刻 | 内容 |
|---|---|
| 17:00 | 受付 |
| 17:30 | ミニ講義(広報戦略・補助金) |
| 18:00 | 懇親会 |
| 20:00 | 終了 |
講義三十分、懇親会二時間。学びに来ているのか、飲みに来ているのか。両方です、と胸を張って言えるのが、この会のいいところです。
24歳で創業した会長の、その後の話
会が始まってまず伺ったのが、会場である「まんざら」を運営される株式会社STEPの会長と、社長のお話でした。私はこれを、京都の外食四十年史として聞いていました。
会長が会社を起こされたのは、24歳のとき。当時の京都には、おしゃれな居酒屋というものがまだありませんでした。和食器に盛って、店内にはジャズが流れて、カウンター越しにおばんざいがずらりと並ぶ。いまでこそ当たり前のこの絵は、当時は「創作居酒屋」という新しい業態でした。それが跳ねた。
そして第二次のブームが、町家のリノベーションです。リーマンショックのあと、街からお茶屋さんが次々に撤退していく。放っておけばビルか更地になる。その町家を使って、ご飯を食べてもらう体験をつくった。いまでこそ「町家でごはん」は京都の定番ですが、その先頭を走った会社の話でした。
いまは京都市内で十店舗。社長は「食の総合プロデュース」という言い方をされ、いつか世界へ、と話しておられました。
私が背筋を伸ばしたのは、二度とも「業態」ではなく「体験」を発明しておられることです。料理のジャンルを変えたのではなく、お客さまの一日の過ごし方を変えている。長く続く会社は、こういう当て方をするのだと思いました。
これマネという場所は、いま何をしているのか
続いて、代表理事の山川博史さんから協会のご紹介。
これマネの中心にあるのは、飲食店向けの書籍シリーズと、その目次ごとに学べるようにした「教育DX」という動画のプログラムです。人を採用しても定着しない、育てる時間がない。その悩みに、スマホで学べる仕組みで応えようという取り組みで、いまは専門学校の授業にも入っているそうです。
コミュニティは大きく三つ。専門家が集まるこれマネPRO、独立開業を目指す方のこれマネ開業アカデミー、農家さんや生産者の方々が集うこれマネ生産者。
山川さんが時間を割いて話されたのが「シェアリングコンサル」という考え方でした。自分の専門外の相談が来たとき、断るのではなく、信頼できる仲間に橋を架ける。ただし――と、ここが本題です。
日頃からその人の人間性もスキルもレスポンスの速さも分かっていないと、一緒に仕事なんてできない。自分の信用を賭けるのだから。
だから普段から集まって、飲んで、話す。この日の会そのものが、その仕組みの実演でした。開業される方が変な人につかまらないように、というお話には、業界の先輩としての覚悟がにじんでいました。
「集客」と「広報」は、まったく別の仕事です
そしてこの日の本題。井口卓哉さんによる「京都で取り組む最新広報戦略」です。井口さんは、京都で長く発行されてきた情報誌『Leaf』を出してこられた会社の方。雑誌はすでに休刊し、いまはWebメディア「Leaf KYOTO」や日本酒の事業を手がけておられます。紙の時代の終わりを、当事者として通り抜けてきた方の話でした。
冒頭のスライドに、こうありました。
「知らせる」から「見つけてもらう」へ。
集客と広報は、役割が違う、と井口さんは言います。集客は「今日来てもらう」ための仕事で、広告もクーポンもグルメサイトも、お金を払っている間だけ効きます。止めれば止まる。一方で広報は、選ばれ続けるための土台づくりです。このお店は何のために存在しているのか。どんな人のためにあるのか。それを第三者の目線で言語化して、信頼を積み上げていく。
「Googleビジネスプロフィールもインスタもやっているのに、新規のお客さまが増えない」。この相談がいちばん多いそうです。私も毎日のように聞きます。原因はたいてい、集客の道具を、広報のつもりで使っていないことにあります。
SEO・MEOから、AI検索へ
いちばん重かったのが、ここでした。
これまでお客さまは、グルメサイトやマップで店を「探して」いました。ところがいまは、若い方を中心に、AIに聞く。「子ども連れで行ける京都の和食の店はどこ」と、ずいぶん具体的に聞くのだそうです。そしてAIは、ネット上に載っている情報をもとに答える。そのとき参照される中身を書いているのは、お店です。
井口さんが挙げられた、明日からできる直しどころを整理します。
- 店名表記を統一する。 Google、SNS、ホームページ、グルメサイト、メディア。すべてで一文字も違わないこと。英語なのか、カタカナなのか、漢字なのか。ここがばらけているお店が、本当に多い。一文字違うだけで、AIにも検索にも弾かれます。
- これから開業する方は、店名を簡単で分かりやすくする。 凝った長い横文字は、この時代には不利に働きます。
- 最新情報を更新し続ける。 AIは「この店はいま動いているのか」を、かなりシビアに見ています。
- 口コミの返信を具体的に書く。 「ご来店ありがとうございました」で終わらせない。「ご家族で、個室でのお誕生日にご利用いただき」と具体的に書く。その返信の中身が、次にAIが答えるときの材料になります。
要は、来店前に知りたいことが、ウェブ上のどこを見ても分かる状態をつくる。それだけですが、できているお店は驚くほど少ない。
Instagramは「本日も営業します」では届かない
Instagramも同じ流れの中にあります。以前は場所とエリアの案内が中心でしたが、いまはインスタの投稿もAIに拾われる。
だから「本日も営業します。ご来店お待ちしております」という投稿は、残念ながら意味が薄い。求められているのは、店舗情報の具体性と、そこでできる体験です。そして井口さんはこう言い切られました。写真や動画よりも、文章が大事になってきています。
誰に来てほしいのかを決めて、その人の言葉で書く。デートで使ってほしいなら、個室があること、コースがあること、予算はいくらか。そこまで書いて初めて、AIにも人にも引っかかります。
リール動画は「6カット」から始める
「リールって、何を撮ったらいいんですか」。これも、私がよく受ける質問です。井口さんの答えは、拍子抜けするほど具体的でした。
初心者はこの6カットから始めればいい、と。
- いちばん美味しそうな一皿
- 外観
- 店内
- 調理風景
- スタッフ
- 食事風景
1カット2〜3秒で、合計15〜20秒。そして店名は最後に置く。 いきなり店名から始める動画がとても多いけれど、それでは指が止まりません。最初の一文字目がいちばん重要で、「京都・四条河原町から徒歩◯分」「京都でデートに使える」といった、その人が気になる言葉を先に出す。
これ、明日できます。スマホ一台で足ります。
明日から始める、3つ
講義の締めくくりは、この3つでした。
- 情報を更新する
- 楽しく動画を撮る
- 口コミに返信する
私はこの「楽しく」の二文字が好きです。続かないものは、意味がありませんから。
補助金は、まず「種類の違い」から
もうひと方、奥田謙一さんによる「最新の補助金・施策情報」。ただ、開始時刻には皆さんのグラスがすっかり乾いておりまして、「先に乾杯しましょう」ということになりました。こういうところが、この会らしい。
奥田さんのお話は、制度の整理から始まりました。補助金、助成金、給付金・協力金、融資や税制優遇。 国の支援策はこれだけ種類があって、性格がまるで違うのに、多くの経営者がひとまとめにして考えてしまっている、と。
ここは私も同感です。返さなくていいのか、後払いなのか、審査があるのか。その違いを知らないまま「補助金が出るらしい」という噂だけで動くと、たいてい間に合いません。制度名や金額は、正式な要件を確かめてから改めて共有します。
懇親会。京都の皆さん、ありがとうございました
18時からの懇親会は、二時間があっという間でした。京都で店をやっておられる方、これから開業される方、生産者の方、専門家の方。名刺を交換しながら、気づけばみんな「うちの店では」という話をしている。
飲食店の経営者の仕事は、基本的に孤独です。最終的に決めるのはいつも自分ひとりで、その決断が正しかったかどうかは、数か月経たないと分かりません。だからこそ、こういう夜が要るのだと思います。他所の街の同業と話すと、自分の店の輪郭が見えてきます。
冒頭の集合写真は、そのお開き前の一枚です。全員が笑っている写真を撮れる会というのは、それだけでいい会だと思いませんか。
お声がけくださった京都のメンバーの皆さん、会場を貸してくださった「まんざら 団栗橋」の皆さん、本当にありがとうございました。
帰りの新幹線で、考えていたこと
私の会社は、飲食店さんのGoogleビジネスプロフィールやSNSを、毎日お預かりして運用しています。だからこの日の井口さんの話は、耳の痛いところも含めて、ぜんぶ現場の話でした。
店名の表記ゆれ。半年前で止まった「最新情報」。コピーして貼り付けたような口コミ返信。どれも、忙しさの中で誰も悪くないまま起きます。 けれど、その一つひとつが、いまはAIの答えの中身になっている。検索エンジンに読まれる時代から、AIに要約されて人に手渡される時代へ、静かに変わりました。
やることは、実は増えていません。店名をそろえる。更新する。返信を具体的に書く。 昔から言われてきた基本が、効き方だけ変わったのです。
今日、あなたのお店の名前を、Google、Instagram、ホームページ、グルメサイトの四つで並べて見比べてみてください。一文字も違わずに書けているお店は、そう多くありません。そこがスタートです。
㈱デリシャスノーツでは、飲食店さま向けにGoogleビジネスプロフィールやSNSの運用代行・集客のご相談をお受けしています。「店名の表記がバラバラで、どこから直せばいいか分からない」「口コミの返信を、うちの言葉で書けるようにしたい」といったご相談も、ぜひお寄せください。
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