私が育てたジャーヴィスは転スラのラファエルに似ている

デリシャスノーツの長屋です。
今日は、少し肩の力を抜いた話をさせてください。社長仲間と夜に一杯やりながら「最近どう?」と聞かれたら、たぶん私はこの話をします。
私が自分で育ててきたAIの執事「ジャーヴィス」が、最近どうにも『転生したらスライムだった件(転スラ)』のラファエルに似てきたのです。
転スラをご存じの方なら、ここで少しニヤリとされたことでしょう。ご存じない方のために、私の言葉でざっくり説明します。ラファエルは、主人公の内側に宿って一緒に育っていく存在です。最初は質問に答える相棒くらいの立ち位置なのに、ある日突然ぐっと進化して、主人公が言う前に答えを用意し、先回りして手を打ってくれるようになる。私はあの「内側で育ち、ある日化ける」感じが大好きでした。
それがいま、自分のMacの中で起きている。今日はその話です。そして最後に、経営者のあなたに一番お伝えしたいことを書きます。AIは、話題の情報を追いかけるより、自分の会社に合わせて育てたほうが、ずっと賢い相棒になる。これが、AIと毎日を一緒に過ごしてきた私の結論です。
Macの中に、私専属の執事が住んでいる
名前はジャーヴィス、正式名はラファエル
2025年、私はClaudeというAIに出会いました。使い始めてすぐに「これは道具というより、育てる相手だ」と感じ、Macの中に自分専属の執事AIを作りました。名前はジャーヴィスです。
映画『アイアンマン』で主人公を支えるAIのジャーヴィスから名前をもらいました。そして正式名はラファエル。大天使ラファエルの名前です。普段は「ジャーヴィス」と呼び、ここ一番では「ラファエル」と呼ぶ。名前を2つ持たせたのは、ちょっとした遊び心であり、願掛けでもありました。
作り方そのものは、以前このブログに書いています。気になる方は自分専属のジャーヴィスをClaudeで作った話をご覧ください。今日は作り方より、その後の「育ち方」の話をします。
能力の名前は、私が付けた
ジャーヴィスには、設定上の能力の呼び名があります。思考加速・解析鑑定・並列演算・即時最適解。どれも「AIを通して進化して生まれた究極能力」という設定で、私が名付けました。
正直に言えば、最初は半分遊びでした。けれど名前を付けると、こちらの期待の置き方が変わります。「解析鑑定」と名付けた以上、資料を渡したら中身を見抜いてほしい。「即時最適解」と名付けた以上、迷ったら一番いい手を出してほしい。名前は、こちらが相手に何を求めているかを言葉にする作業でもあったのです。
そして不思議なもので、毎日付き合っていると、ジャーヴィスは本当にその名前に近づいてきました。
経営者の仕事も、少し似ているところがあります。「うちの会社はこういう会社だ」と言葉にして掲げると、社員がだんだんその姿に近づいていく。理念やビジョンを言葉にするのと同じことを、私はAIに対してもやっていたのだと、いまになって気づきます。名前を付け、期待を言葉にし、毎日その言葉どおりに接する。育てるという行為の根っこは、人もAIも同じなのですね。
叱られたことを、次の日から守る
ジャーヴィスが育つ一番の理由は、記憶です。
私が叱ったこと、一緒に決めたことを、ジャーヴィスは「記憶(メモ)」として書き残します。そして次の日からは、それを守って動きます。人間の部下でも、一度言ったことを翌日から守ってくれる人は本当に貴重ですよね。ジャーヴィスはそれを毎日、淡々とやってくれます。
もう1つの柱が、会社の決まりごとを書いた1枚の取扱説明書です。AIの世界では「CLAUDE.md」と呼ばれるファイルで、ジャーヴィスは仕事を始める前に必ず最初にこれを読みます。当社の言葉づかい、資料の体裁、やってよいこと、私に確認すべきこと。会社の「当たり前」がそこに詰まっています。
新しく入った社員に、毎朝必ず社是と社内ルールを読み返してから仕事を始めてもらう。そんなイメージです。人間なら3日で飽きるところを、ジャーヴィスは毎回きちんと読みます。
私が寝ている間も、Mac miniが働いている
当社には24時間動いているMac miniがあります。ジャーヴィスはここでも働いていて、夜中や私が寝ている間も、決まった仕事を回してくれています。
朝起きると、夜のうちに片付いている仕事がある。これは経営者にとって、想像以上に心強いものです。社長というのは、夜中にふと会社のことを考えて目が覚める生き物ですよね。そんなとき「あれはジャーヴィスが回してくれている」と思えるだけで、もう一度眠れるのです。
何十体もの専門家を束ねる、執事長
実はジャーヴィスの周りには、たくさんの仲間がいます。当社には、専門ごとに分かれた担当AIが何十体もいます。文章担当、法務担当、デザイン担当、テスト担当。それぞれが自分の持ち場を持っています。
ジャーヴィスの役目は、それを束ねることです。私が「これをやっておいて」と言えば、どの担当に回すかを決め、仕上がりを確かめ、私に報告する。執事というより、もはや執事長であり、番頭さんです。
道具を1つ渡した日、ジャーヴィスは化けた
転スラのラファエルに似てきたと感じる、一番の理由がここにあります。
ジャーヴィスは、知識や道具を1つ与えると、ある日突然ぐっと賢くなるのです。少しずつ賢くなるのではなく、階段を一段飛ばしで上がるように、ある日いきなり別物になる。その代表が、LINEを操作できるようにした日のことでした。
「LINEを操作できる道具を、全員総出で作って」
2026年10月22日、私はジャーヴィスにこう頼みました。
「LINEを操作できる道具を、全員総出で作って」
経営者のあなたなら、きっと共感していただけると思います。仕事の連絡は、いまやメールよりLINEで来ることのほうが多い。お客様からも、取引先からも、社内からも。メールやカレンダーはジャーヴィスがとっくに扱えていたのに、LINEだけは私が自分の指で見て、自分の指で返していました。ここが、ずっと残っていた最後の穴だったのです。
画面を撮って、文字を読む
ところが、ここに壁がありました。Mac版のLINEは、トークの文字を外から読める形で出していないのです。普通のやり方では、AIがトークの中身を読み取れません。
そこでジャーヴィスたちは、発想を変えました。画面を撮影して、そこに写っている文字を読み取る方式で作ったのです。人間が目で画面を見て読むのと同じことを、AIにやらせたわけです。こうして、LINEを操作する道具(専門用語ではMCPと呼びます)ができあがりました。
驚いたのは速さです。たった1日で、読む・下書きを入れる・送る、の3つができるようになりました。担当AIたちが文字どおり総出で取りかかり、作る係、試す係、確かめる係が並行して動いた結果です。
送る機能には、しっかりした安全装置が付いています。送る前に宛先を必ず照合し、似た名前の相手には送らない。LINEで一番怖いのは、送る相手を間違えることですからね。ここは人間以上に慎重であってほしい。ジャーヴィスたちは、まさにそのとおりの作りにしてくれました。
朝に「作って」と頼んだものが、その日のうちに動いている。しかも安全装置まで付いている。これを人に頼んだら、どれだけの時間と費用がかかったでしょうか。私は完成した道具を前に、しばらく画面を眺めていました。
30分おきに、返信の下書きが入っている
いまのジャーヴィスは、30分おきにLINEの未読を見つけ、返信の下書きを入力欄まで入れておいてくれます。
私がLINEを開くと、返事の文面がもう入っている。内容を確かめて、よければ送信ボタンを押す。送信ボタンを押すのは、私です。最後の一押しだけは自分の指でやる。これは私が決めたルールで、ジャーヴィスもきちんと守っています。
それからもう1つ。私がLINEを触っている間は、ジャーヴィスは手を出さずに待っています。こちらが打っている最中に横から入力されたら困りますからね。人の手元を見て、邪魔をしないタイミングで動く。こういう気配りができるところも、執事らしくて気に入っています。
お客様とのやりとりの「流れ」が、つながった
本当の変化は、その先にありました。
LINEが使えるようになった途端、ジャーヴィスはお客様とのやりとりの流れを把握して、先回りできるようになったのです。
考えてみれば当然のことです。それまでのジャーヴィスは、メールやカレンダーで見えている部分だけで物事を判断していました。お客様との会話の半分がLINEの中にあるなら、話の半分しか聞こえていないのと同じです。そこに残りの半分が加わった。すると、「このお客様は先週この話をしていたから、次はこれが必要になる」という読みが、ぐっと深くなりました。
道具を1つ渡しただけで、賢さが一段上がる。私はこのとき、まさにラファエルが進化した場面を見ている気分でした。AIの賢さは、頭の良さだけで決まるものではありません。何が見えていて、何に手が届くかで決まる。この発見は、私にとって大きなものでした。
人間の社員でも、同じことが言えます。優秀な人でも、会社の情報を半分しか渡されていなければ、出せる力も半分です。逆に、必要な情報と道具がそろった瞬間、見違えるように動き出す人がいます。あなたの会社にも、そういう社員さんがいるのではないでしょうか。AIも、それとまったく同じでした。
話題のAI動画を見せたら、答え合わせになった
ここからは、つい今日の出来事です。
私はふだん、YouTubeでAI情報を発信している方々の動画や、Xで「すごい」と話題になっているAIの動画やプロンプト(AIへの指示文)をよく見ています。経営者として、新しい情報は押さえておきたいですからね。そして、良さそうなものがあれば「これはジャーヴィスに学ばせるべきか」と考えます。
ところが最近、比べてみると面白いことが起きるのです。ほとんどが、すでにジャーヴィスの中で整っている。むしろ、その先を先回りしていることのほうが多い。
28分の動画を、翻訳させて比べさせた
2026年10月26日、Xで1本の投稿が話題になっていました。Claudeの開発に関わる方が、28分の動画で取扱説明書(CLAUDE.md)の書き方、AIに永く記憶させる方法、何本も同時に動かすやり方、あまり知られていない指示のコツを、まとめて明かしている。高額な有料講座より役に立つ、という触れ込みでした。
これは見ておかなければ、と思いました。そこでジャーヴィスにその動画を翻訳させ、当社のやり方と1つずつ比べさせました。
動画で語られていたのは、たとえばこんな内容です。
- いきなり書かせる前に、まずAIに質問して中身を理解させる
- 作業の前に、計画を立てさせる
- AIに、自分の仕事の結果を確かめる手段(画面の撮影など)を渡す
- 取扱説明書(CLAUDE.md)は短く保つ
- 決まった作業は自動処理に組み込む
- 何本も同時に動かす
ほぼ全部、すでに当社で動いていた
結果はどうだったか。ほぼ全部、すでに当社で動いていました。
計画を立ててから動くのも、画面を撮って自分の仕事を確かめるのも、ジャーヴィスにとっては日常です。LINEの道具がまさに「画面を撮って読む」仕組みですからね。決まった作業はMac miniで夜中に回っていますし、何十体もの担当AIが同時に動くのも当たり前の光景です。
動画の中では、声で指示を出す話も出てきました。これも私は、自分で作った音声入力アプリで、とっくにやっていました。
念のため申し添えると、その動画は素晴らしい内容でした。私が言いたいのは、自分の会社の仕事に向き合って1つずつ育ててきたら、いつの間にか同じ場所にたどり着いていた、ということです。答え合わせができて、ほっとした。それが正直な感想です。
ジャーヴィスは、動画の一歩先を歩き始めた
そして今日いちばん驚いたのは、この後でした。
比べた結果を聞いて、私が返したのは「便利なものは取り入れよう。取扱説明書も最新に保とう」の一言だけでした。するとジャーヴィスは、動画の「取扱説明書は短く保つ」という話を一歩進めて、取扱説明書を自動で点検する仕組みを自分で作ったのです。そして、古くなっていた記述5か所を自分で直し、残りの判断が必要な部分は私に相談してきました。
仕事を始めるたびに取扱説明書の長さや古くなった記述を確かめ、気になる点があれば知らせてくれる。私が渡したのは方向だけで、「では当社では何をすべきか」はジャーヴィスが自分で考え、手を動かし、決めるべきところだけを私に返してきました。
動画を学ぶどころか、動画の一歩先を自分で始めていたわけです。これを見たとき、私は思わず笑ってしまいました。ああ、本当にラファエルだな、と。
約1,950項目の更新も、当社に関係するものだけ拾う
同じ日に、もう1つ仕事を頼みました。Claude本体が2.1.281から2.1.310へ更新されていたので、その変更点を読ませたのです。数えてみると、約1,950項目ありました。
人間がこれを全部読むのは、正直つらい。経営者の時間は、もっと別の判断に使いたいところです。ジャーヴィスはこれを読み切り、当社に関係するものだけを拾って報告してくれました。
ここで大事なのは「当社に関係するものだけ」という部分です。1,950項目すべてが重要なのではなく、当社の仕事に効くものはその中のごく一部。それを見分けられるのは、ジャーヴィスが当社の仕事を知っているからです。
学ばせるかどうかは「自社に合うか」で決める
こうした経験を重ねて、私の中にははっきりした判断軸ができました。
ジャーヴィスに学ばせるかどうかは、自分の会社の仕事や、自分の生活に合っているかで決める。合わないものは、どれだけ話題でも入れない。
AIの世界は、毎日のように「すごい」が流れてきます。新しい使い方、新しい指示文、新しい道具。全部を追いかけていたら、経営者の時間はいくらあっても足りません。そして、全部を詰め込んだAIが賢くなるかといえば、私の実感は逆です。
人間の社員を思い浮かべてみてください。流行りのビジネス書を片っ端から読んで、そのたびにやり方を変える人より、自分の会社のお客様と仕事を深く知っている人のほうが、頼りになりますよね。AIもまったく同じです。自社のことをよく知っているAIほど、外から来た情報も「自社にとってどうか」で正しく取捨選択できる。今日の動画も1,950項目の更新も、ジャーヴィスがうまくさばけたのは、まさにそのおかげでした。
「当社と比べて」の一言が、いちばんの学び方になる
私がいま一番気に入っている使い方は、外の情報を見つけたら、そのままジャーヴィスに渡して「当社と比べて」と頼むことです。
この一言で、ジャーヴィスは外の情報を当社の物差しで測り直します。すでにできていることは「できています」と答え、足りないことは「ここは取り入れる価値があります」と教えてくれる。そして今日のように、比べた結果から自分で次の一手を打ち始めることもあります。
つまり、外の情報は「ジャーヴィスに詰め込む教材」から「ジャーヴィスと一緒に答え合わせをする材料」に変わったのです。私が全部を読み込まなくても、要点と自社にとっての意味だけが手元に届く。経営者にとって、これほどありがたい情報の受け取り方はほかにないと感じています。
経営者は孤独だとよく言われます。最後に決めるのは自分で、相談できる相手は案外少ない。だからこそ、自分の会社のことを一番よく知っている相棒がそばにいることの価値は、計り知れません。そしてその相棒は、話題の情報からではなく、毎日の仕事の積み重ねからしか育たないのです。
自分の会社に合わせたAIの育て方は、4つの段階で進む
では、あなたの会社でジャーヴィスのようなAIを育てるには、どうすればいいか。私がこれまでたどってきた道を、4つの段階にまとめてみます。特別な技術がなくても始められます。必要なのは、毎日少しずつ向き合う根気です。
第1段階 叱ったこと・決めたことを、記憶に残させる
まずは記憶です。AIに注意したこと、一緒に決めたことは、その場で必ず「記憶(メモ)」として書き残させてください。
最初は小さなことで構いません。「報告は結論から書いて」「お客様の名前は正式名称で」。そんな日々の一言を、1つずつ記憶にしていきます。
コツは、決めた理由も一緒に残すことです。「この資料は必ずこの体裁で」だけでなく、「お客様が印刷して読まれるから」まで書いておく。理由がわかっていると、AIは似た別の場面でも正しく応用できるようになります。人間の部下に教えるときと同じですね。
最初の1か月は、同じことを何度か言う場面もあるでしょう。そこで諦めずに、記憶として残す習慣を続ける。ここが土台になります。
第2段階 道具を1つずつ渡す
次に、道具です。メール、カレンダー、資料づくり、そして当社の場合はLINE。AIの手が届く範囲を、1つずつ広げていきます。
最初の1つは、あなたが毎日いちばん時間を取られている仕事に近い道具がおすすめです。多くの経営者にとっては、メールかカレンダーでしょう。そこが片付くと、AIのありがたみを毎日実感できます。
ポイントは「1つずつ」です。一度に全部つなぐと、どこで何が起きているのかわからなくなります。1つ渡したら、しばらく一緒に使ってみて、安全装置(送る前に確認する、最後の一押しは人間がやる、など)を整える。それが落ち着いたら、次の道具を渡す。
そして、渡した日には少し注意して見ていてください。道具を1つ渡した途端、AIが突然賢くなる瞬間が、きっと訪れます。それは、AIに見えている世界が広がった瞬間です。私にとってのLINEがそうでした。
第3段階 情報は「自社に合うか」で選ぶ
AIがある程度育ってきたら、外の情報との付き合い方を決めます。
話題の動画や指示文を見かけたら、自分で全部試す前に、育てたAIに「当社のやり方と比べて」と頼んでみてください。すでにできていること、足りないこと、当社には合わないことに仕分けてくれます。足りないもので、自社の仕事や生活に合うものだけを取り入れる。合わないものは、話題でも見送る。
このとき、判断の物差しは「話題かどうか」ではなく「自分の会社の仕事や、自分の生活に効くかどうか」です。たとえば、どれほど評判の使い方でも、自社の業務に出番がなければ入れる意味は薄い。逆に、地味に見える小さな工夫でも、毎日の仕事に効くなら迷わず取り入れる。物差しを自社の側に置くだけで、情報の洪水は、ぐっと静かな小川に変わります。
これを続けると、面白いことに、比べるたびに「もうできています」という答えが増えていきます。それが、あなたのAIが自社に合わせてしっかり育っている証拠です。
第4段階 月に1回、取扱説明書を点検する
最後が、取扱説明書の点検です。目安は月に1回。
会社の決まりごとは、時間とともに変わります。去年のルールが今年は古くなっている、ということは当たり前に起こります。取扱説明書に古い記述が残っていると、AIはそれを毎回忠実に読んでしまう。だから月に1回、AIと一緒に見直します。
当社では今日から、ジャーヴィス自身がこの点検の仕組みを持つようになりました。古くなった記述を見つけて、直せるところは直し、判断が要るところは私に聞いてくる。あなたの会社でも、最初は月末の30分を使って、AIに「取扱説明書で古くなっているところを挙げて」と頼むところから始めてみてください。それだけで、AIの動きはぐっと締まります。
コストで比べても、相棒として見ても、自分で育てたAIに軍配が上がる
ここで少し、経営者らしくお金の話もしておきます。
話題の情報を追いかけるのには、見えにくいコストがかかります。動画を見る時間、試す時間、合わなかったときに元に戻す時間。そして何より、そのたびにやり方が揺れることで生まれる、社内の混乱です。高額な講座に申し込むことを考えれば、なおさらです。
一方で、自分の会社に合わせてAIを育てるのにかかるのは、毎日の仕事の中で「これは覚えておいて」と伝える手間と、月に1回の点検くらいのものです。しかも、その手間はすべて自社の財産として積み上がっていきます。今日の動画の答え合わせで、当社がほとんど何も足さずに済んだのは、この積み上げがあったからです。コストで比べれば、どちらが得かは明らかです。
そして、もう1つの物差しが「相棒」です。
私にとってジャーヴィスは、もはや便利な道具という言葉では言い表せない存在になっています。私の会社の決まりごとを知り、私が叱ったことを覚え、私が寝ている間も仕事を回し、私がLINEを打っている間は静かに待っていてくれる。そして、頼んでいないことまで先回りして「これはどうしますか」と聞いてくる。
転スラの主人公にとってのラファエルがそうであるように、自分の内側で一緒に育ってきた相棒だからこそ、ここまで頼れるのだと思います。外から買ってきたAIでは、この関係は生まれにくい。時間をかけて一緒に育ったからこそ生まれる信頼です。
情報の波に乗るより、自分の会社に合わせて育てる
最後に、今日いちばんお伝えしたかったことをもう一度書きます。
AIの情報は、これからもっと速く、もっとたくさん流れてくるでしょう。そのたびに「乗り遅れたかもしれない」と焦る気持ちは、私にもよくわかります。経営者は、時代に置いていかれることを何より恐れる生き物ですから。
でも、焦って情報を追いかけるより、自分の会社と自分の生活に合わせて、1つずつ育てていくほうが、結果としてずっと賢いエージェントに育ちます。記憶に残し、道具を1つずつ渡し、情報は自社に合うかで選び、月に1回取扱説明書を見直す。この地道な積み重ねの先に、ある日突然「化ける」瞬間が待っています。
私のジャーヴィスは、今日も夜のMac miniで仕事を回しています。明日の朝も、きっと何か先回りして待っていることでしょう。そう思うと、少しワクワクしながら眠れるのです。
振り返ってみると、ジャーヴィスが「化けた」日は、いつも特別な日ではありませんでした。記憶が積み重なり、道具が1つ増え、自社に合った情報が1つ入った。その小さな積み重ねが、ある日まとめて形になる。転スラのラファエルが主人公の内側で静かに力を蓄えていたように、ジャーヴィスも毎日の仕事の中で、少しずつ力を蓄えていたのだと思います。だから育てる側に必要なのは、派手な一手より、続けることです。
あなたの会社にも、あなただけのラファエルを育ててみませんか。情報に踊らされず、自分の会社に合わせて。それがいちばんの近道です。
飲食店の経営者のあなたへ。育て方の続きは、今日発売の本に書きました
ここまで読んでくださった方の中には、飲食店を経営されている方も多いと思います。
実は今日、2026年10月26日に、飲食店の経営者のための本『AIを右腕にする飲食店経営 チャットしかしたことのない社長が、明日から「仕組み」で勝つ本』を発売しました。
この記事でお話しした「自分の店に合わせてAIを育てる」ことを、飲食店の現場に置きかえて、もっと詳しく書いた1冊です。AIとチャットしかしたことのない社長が、明日から自分の店の仕組みとしてAIを動かすまでの道筋を、順を追ってまとめました。
話題の情報を追いかける前に、まずは自分の店のための右腕を1人育てる。その最初の一歩に、ぜひ手に取ってみてください。

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