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AIの部下は何人まで? 200人の壁が消え、AI同士が会話を始めた ― ターミナルのClaudeを40版ぶりに更新した話

2026年8月12日の朝、私はいつものようにMacの前に座って、Claudeのデスクトップアプリに出ていた「再起動して更新」というボタンを押しました。

それだけの、なんでもない朝の作業です。コーヒーを淹れている間に終わるやつです。

ところがその日、この一手から芋づる式に、私は自分の仕事道具について二つのことを知ることになりました。ひとつは「今日からAIの使い方が一段変わる」といううれしい話。もうひとつは「私はここ何ヶ月か、その新しい使い方を、気づかないまま取り逃していた」という、少し間の抜けた話です。

経営者の仕事は、だいたい後者のほうが大事です。今日はその両方を、順番にお話しします。


目次

そもそも私が毎日使っているのは「二つのClaude」です

本題に入る前に、言葉の整理をさせてください。ここがぼやけていると、あとの話がまるごとぼやけます。

私が日々使っているClaudeには、実は二つの入り口があります。

ひとつめが、Claudeデスクトップアプリ。 Macの画面にウィンドウが開いて、そこに文章を打ち込むと返事が返ってくる、いわゆる「チャットの画面」です。多くの方が思い浮かべるClaudeはこちらでしょう。

ふたつめが、Claude Code。 こちらはターミナル(黒い画面に文字だけで命令を打ち込む、あの昔ながらの道具)の上で動くClaudeです。チャットと違うのは、こちらは私のMacの中のファイルを直接読んだり、書いたり、コマンドを実行したりできるという点です。原稿を書かせるだけでなく、書いたものをそのままウェブサイトに載せるところまで頼める。だから私は、会社の実作業のほとんどをこちらに任せています。

やっかいなのは、このClaude Codeが二箇所に存在していることです。

  • デスクトップアプリの中に同梱されているClaude Code
  • ターミナルに自分で別途インストールしたClaude Code

同じ名前、同じ機能、でも中身は別物で、更新のタイミングも別々。この構造が、今日の後半の落とし穴につながります。まずは覚えて帰ってください。「二つある」。それだけで十分です。


この日、実際に何が上がったのか

数字は全部、その場でMacの中を実際に見て確かめたものです。憶測は入れていません。

対象 更新前 更新後
Claudeデスクトップアプリ 1.26832.0 1.28929.0(8/12 9:52 完了)
デスクトップアプリに同梱のClaude Code 2.1.222 2.1.227
ターミナルに別途入れているClaude Code 2.1.187 2.1.228(8/12 11:15 手動で更新)

三行目を、もう一度見てください。

デスクトップ側が2.1.227まで来ているのに、ターミナル側は2.1.187。差は40版です。この話は後半でみっちりやります。

ちなみにデスクトップアプリのほうは、Macの中に残っている記録をたどると、1.20186.0 → 1.21459.0 → 1.22209.0 → 1.24012.0 → 1.25927.0 → 1.26832.0 → 1.28929.0 と、こつこつ上がってきていました。こちらは放っておいても勝手に案内が出てくるので、私も素直に押していたわけです。素直に押していたからこそ、押していないほうに気づけなかった、とも言えます。

さて。今回の更新で入った変更のうち、私が思わず「これは大きい」と声に出したものが二つあります。


【驚いた話・その1】AIの部下を、何人でも呼べるようになった

まず「サブエージェント」という言葉を説明させてください

Claude Codeには、サブエージェントという仕組みがあります。日本語にすると「下請けのAI」です。

私が「今月の報告書をまとめて」と本体のClaudeに頼むと、Claudeは自分ひとりで全部やろうとはしません。「調べる係」「書く係」「まちがいを探す係」を、その場で必要なぶんだけ立ち上げて、仕事を割り振ります。人間の会社と同じです。社長がひとりで全部やらないのと一緒。

当社にはこの下請けAIを、役割ごとに何十体も用意してあります。財務を見る係、法務まわりを調べる係、原稿を書く係、できあがったものを検品する係。私はそれを「AI組織」と呼んでいて、統括役が1体と、7つの部門で構成しています。人を増やさずに部門を増やせる、というのが、正直いちばんありがたいところです。

もうひとつ、セッションという言葉も先に説明しておきます。これは「ひとつの会話のかたまり」のことです。ターミナルでClaudeを立ち上げて、あれこれ頼んで、終わるまで。この一区切りが1セッションです。

「1セッションにつき200体まで」という壁があった

今回の更新に含まれていた、公式の変更履歴(開発元が公開している「どこを直したか」の記録です)の原文はこうです。2.1.224という版で入った変更です。この版番号は、記事の後半でもう一度出てきますので、頭の隅に置いておいてください。

Removed the 200-subagent-per-session spawn cap; long-running sessions no longer refuse new agents (concurrency and depth limits still apply)

私なりに訳すとこうなります。

1セッションあたり下請けAIは200体まで、という上限を撤廃しました。長時間動きつづけているセッションが、新しいAIの立ち上げを断ることはなくなります。ただし「同時に何体まで走らせるか」と「下請けが下請けを呼ぶ深さ」の制限は、これまでどおり残ります。

200体。多いと思われますか。私も最初はそう思いました。ひとつの会話で200体もAIを呼ぶことなんてあるのか、と。

あるんです。 しかも、あっさり。

200体は、思っているより近い

たとえば当社では、ウェブ集客の運用代行をお預かりしている飲食店さま向けに、毎月レポートをお出ししています。これを一晩で一括生成させると、どうなるか。

店舗ごとに「数字を集めてくる係」が1体、「その店の文脈で読み解いて文章にする係」が1体、「出す前に検品する係」が1体。ここまでで1店舗につき3体です。当社にはこれを、お預かりしている店舗の数だけ繰り返してもらう必要があります。

つまり、1店舗3体 × 店舗数。掛け算の右側が二桁後半になった時点で、200という数字は「遠い上限」ではなく「途中で必ずぶつかる壁」に変わります。

そして厄介なのは、ぶつかったときの壊れ方です。エラーで止まるのが最初からなら、まだいい。この壁は作業の途中でやってきます。半分の店舗のレポートができたところで「これ以上AIを立ち上げられません」と拒否され、そこで手が止まる。朝、私が期待して画面を見にいくと、途中まで作られた成果物と、途中で力尽きた報告だけがある。あの脱力感は、経験した方にはわかっていただけると思います。

その壁が、今回なくなりました。

私にとっての意味は、はっきりしています。夜のうちに、終わりの見えない量の仕事を投げっぱなしにできる。 当社は24時間つけっぱなしのMac mini(小さなデスクトップ機です)を作業専用機として置いていて、時間のかかる仕事はそちらに送る運用にしています。ここに「量が読めない仕事」を安心して置けるようになったのは、地味ですが効きます。

正直に書いておきます。無制限ではありません

ただし、ここは誤解されると困るので、はっきり書きます。

撤廃されたのは「累計で200体まで」という上限だけです。「同時に何体走らせるか」の制限は、これまでどおり残っています。つまり、蛇口の総量制限はなくなったけれど、パイプの太さは変わっていない。1,000体呼べるようになったからといって、1,000体が一斉に働きだして仕事が1,000倍速く終わるわけではありません。

「長い仕事が最後まで走りきるようになった」。今回の変更は、そういう性質のものです。速くなったのではなく、途中で諦めなくなった。私はこちらのほうが、実務ではよほどありがたいと思っています。


【驚いた話・その2】AI同士が、機械をまたいで会話を始めた

こちらが、今回いちばん驚いた変更です。

追加されたのは、たった二つの機能

公式の変更履歴から、要点だけ引きます。こちらも2.1.224で入りました。

Added cross-session SendMessage: Claude Code sessions can now message each other, on any of your machines, with ListAgents to discover them (macOS and Linux)

訳すとこうです。

セッションをまたいだ「メッセージ送信」機能を追加しました。Claude Codeのセッション同士が、あなたが持っているどのマシン上にいても、互いにメッセージを送れるようになります。相手を見つけるための「稼働中の一覧表示」機能も追加しました(macOSとLinuxが対象です)。

さらに、その次の版(2.1.225)でこう続きます。

SendMessage can now start a conversation with your Remote Control sessions on other machines by name

(メッセージ送信機能で、別のマシンで動いているセッションに対して、こちらから名前を指定して会話を始められるようになりました。相手から話しかけられたあとに返信することしかできない、という制限がなくなります。)

言葉にすると地味です。「メッセージが送れる」。それだけ。

でも、これが何を意味するか、少し考えてみてください。

これまでは「渡す」ができなかった

当社は、私の手元のMacBook Proと、24時間動いているMac mini、この2台体制で仕事をしています。重い仕事、時間のかかる仕事は、手元の機械を占領させたくないのでmini側に置く。これは当社の決めごとです。

問題は、手元で考えた仕事を、どうやってmini側に渡すかでした。

これまでのやり方はこうです。手元のMacからネットワーク越しにminiへログインし、向こう側でClaudeを新しく立ち上げ、あらためて指示を打ち直す。

おわかりでしょうか。これは「渡す」ではありません。「向こうで立て直す」です。

手元のセッションで積み上げてきた文脈──どういう経緯でこの判断になったか、どのファイルを見て、何をやめると決めたか──それは一切引き継がれません。引き継ぎたければ、私が要約して打ち直すしかない。人間の会社でいえば、部下に仕事を渡すときに、経緯を一から口頭で説明し直しているようなものです。しかも毎回。

今回からは、手元のセッションから、mini側で動いているセッションに名前で直接話しかけられます。 文脈を持ったまま、片方がもう片方に仕事を頼める。

私は最初、この一文を読んで「ああ、便利になったな」くらいに思いました。少し経ってから、これは便利さの話ではなく、組織の話だと気づきました。これまで私のAIたちは、1台の機械の中でしか同僚になれなかった。今日から、機械をまたいで同僚になれる。

具体的に、こう使えます

まだ運用に落としきってはいませんが、私が「これはすぐやろう」と考えている使い方を3つ挙げます。

1. 書きながら、別の機械に絵を頼む

私が手元で記事を書いている最中に、mini側で待機している画像生成のセッションへ「この見出しでアイキャッチ画像を1枚」と投げる。私は書く手を止めません。書き終わるころに、向こうから絵が上がってくる。手が止まらない、というのは、書き物をする人間にとっては相当に大きいことです。

2. 詰まったAIのほうから、相談してくる

夜間にmini側で走らせているレポート生成が、途中で詰まったとします。これまでは、朝私が画面を見にいくまで、誰もそれを知りませんでした。これからは、詰まったセッション自身が私の手元のセッションに「この店舗のデータが取れません」と報告を上げてこられます。

報告が上がるということは、朝の私が判断できるということです。夜のうちに全部が止まっていた、ではなく、「ここだけ止まっているので、こう対処しますか」から朝が始まる。これは経営者にとって、まったく別の朝です。

3. 検品役を、実装役から物理的に切り離す

当社には「作った本人に検品させない」という絶対のルールがあります。自分が書いた原稿の誤字は、自分では見つからない。人間でもAIでも同じです。

これまでは、同じセッションの中で検品役を呼ぶしかありませんでした。同じ会話の流れの中にいるので、どうしても「作り手の思い込み」を共有してしまう。これからは、別の機械に検品専門のセッションを常駐させておいて、実装側からそこへ検品を依頼するという形が取れます。作った側の文脈を持たない相手に見てもらう。当社のルールとの相性が、非常にいい。

安全のほうも、ちゃんと考えられています

「AI同士が勝手にメッセージを送り合う」と聞いて、不安になった方もいらっしゃると思います。私も一瞬なりました。

そこも手当てされています。同時に追加された設定によって、権限をゆるめた状態で走っているセッション宛のメッセージは、勝手には届きません。 いったん止まって、私の承認待ちになります。

「権限をゆるめた状態」というのは、いちいち確認を求めずに作業を進めていいよ、と許可を出してあるセッションのことです。当社でも、深夜の定型作業などはこの状態で走らせています。そこへ外から自由にメッセージが届いて、そのまま実行されてしまったら、それは事故のもとです。便利なほうではなく、安全なほうに倒してある。 この設計は信用できます。

もうひとつ、地味ですが私が高く評価している修正があります。

Fixed SendMessage reporting “Message sent” when the write to a teammate’s inbox had actually failed

送信に失敗しているのに「送信しました」と報告してしまう不具合が、直りました。

これ、機能追加より大事だと思っています。当社では「できていないことを、できたと報告しない」を全AIの鉄則にしています。届いていないのに届いたと言う道具は、便利どころか危険です。失敗を失敗として報告するようになった。私はこの一行に安心しました。

なお、その後の版で「インストール直後や更新直後の最初の一回だけ、受信箱が用意されないままメッセージ機能が始まってしまう」不具合と、「届いたメッセージが1行に畳まれて誰から何が来たのか見えにくい」問題も直っています。使い始めるなら、更新してからのほうがいいです。


【間の抜けた話】ここまで紹介した2つの機能、私はまだ使えていませんでした

ここからが、今日いちばんお伝えしたい話です。

そして、白状しなければならないことがあります。ここまで2つの新機能を熱っぽくご紹介してきましたが、この記事を書く朝まで、私はそのどちらも使えていませんでした。

40版、遅れていました

冒頭の表を、もう一度お出しします。

  • デスクトップアプリ同梱のClaude Code:2.1.227
  • ターミナルに別途入れたClaude Code:2.1.187

私は毎回、デスクトップアプリに「更新があります」と出るたび、素直に再起動していました。ちゃんとやっているつもりでした。

でも、デスクトップアプリをいくら更新しても、ターミナルに自分で入れたほうは、1ミリも上がりません。

冒頭で「Claude Codeは二箇所にある」と申し上げたのは、このためです。同じ名前で、同じ顔をしていて、更新経路がまったく別。片方だけ更新して、両方更新した気になっていた。それが40版ぶんです。

番号を並べると、間の抜け具合がはっきりします

ここで、この記事に出てきた版番号を並べてみます。

機能 入った版
下請けAIの200体上限の撤廃 2.1.224
セッション同士のメッセージ送信 2.1.224
別のマシンのセッションに名前で話しかける 2.1.225
(私のターミナルに入っていた版) 2.1.187

見ていただいたとおりです。どちらの機能も、私のターミナルにはまだ届いていませんでした。

会社の実作業を任せているのは、ターミナル側のClaude Codeのほうです。つまり、いちばん働かせている場所に、いちばん欲しかった機能が来ていなかった。

いちばん困るのは「動かない理由がわからない」こと

この状態の何がやっかいか、少し具体的にお話しします。

新しい機能の話は、耳には入ってくるわけです。「セッション同士がメッセージを送れるようになったらしい」と。それで、デスクトップアプリのほうで試してみると、ちゃんと動く。「なるほど、これは便利だ」と思う。

そこで本番、ターミナルで同じことをやろうとします。動かない。

このとき人間が最初に疑うのは、道具の版ではありません。自分のやり方です。コマンドの綴りが違うのか、書き方が違うのか、設定がどこかで足りないのか、そもそも自分は機能を誤解しているんじゃないか。私は調べます。時間を使います。

そして結論は、「そこにその機能が、まだ無かっただけ」

いちばん報われない時間の使い方です。使い方を間違えていたのなら学びになりますが、これは何も残らない。私が今回いちばん悔しかったのは、40版遅れていたこと自体よりも、この構図のほうです。

しかも、この取り逃しは静かに進行します。デスクトップアプリは「新しくなりました」と自分から言ってきます。一方のターミナル側は、黙って古いまま、これまでどおり普通に動き続けていました。普通に動いてしまうから、気づけない。 壊れてくれたほうが、まだ親切なくらいです。

なぜ止まっていたのか、原因を調べました

ここは誤解されると困るので、はっきり書いておきます。

ターミナルのClaude Codeは、本来、放っておいても自動で新しくなる作りです。 「ターミナルに入れたものは手で更新しないといけない道具だ」という話ではありません。私も一瞬そう思い込みかけましたが、違いました。道具のせいではないのです。

では、なぜ当社のMacだけ止まっていたのか。設定を書いてあるファイル(~/.claude.json というファイルです)を開いて確かめたところ、原因は一行で見つかりました。

"autoUpdates": false

自動更新が、切ってありました。

いつ、誰が、何のために切ったのか。わかりません。 記録が残っていないので、ここは正直にわからないと書きます。推測で犯人を作るのはやめておきます。

わかっているのは、止まっていた時期のほうです。使う版を指し示している近道ファイル(本体の置き場所へのショートカットのようなものです)の日付が、6月24日で止まっていました。つまり6月下旬から8月12日の朝まで、当社のターミナル側のClaude Codeは 2.1.187 のまま、ひと月半以上じっと座っていたことになります。

切ってあったこと自体は、悪いことではありません

念のため申し上げますが、自動更新を切るという判断そのものを、私は間違いだとは思っていません。

道具の版が知らないうちに変わると、昨日まで動いていた手順が、今日は動かないということが起こります。当社のように毎日の実作業を任せていれば、なおさらです。朝いちばんに「昨日と同じことを頼んだのに結果が違う」となったとき、原因が自分の指示なのか道具の版なのかを切り分けるだけで、半日が飛びます。更新のタイミングは自分で握りたい。仕事道具に対する態度として、これはむしろまっとうです。

問題は、切ったことではありません。

切ったまま、その代わりに手で上げるという約束を、どこにも決めていなかったことです。

自動をやめるというのは、その分の仕事を自分で引き受けるということです。引き受けたつもりで、引き受けていなかった。だから静かに40版ぶんの差が開きました。私が反省しているのは、まさにここです。

考えてみれば、6月下旬からのひと月半、私は「長い作業が途中で止まる」たびに、仕事の投げ方のほうを工夫していました。分割して投げたり、翌朝に回したり。工夫していたつもりで、実は新しい版に上げるだけで済んだ話だったかもしれません。もったいない、という言葉がこれほど似合う状況もありません。

直し方は、拍子抜けするほど簡単です

ここが、この話のいちばん悔しいところです。対処は難しくありません。ターミナルを開いて、これを打つだけです。

claude update

以上です。当社の場合、これ一発で 2.1.187 から 2.1.228 まで上がりました。所要時間は数十秒。

難しくないんです。ただ、誰も教えてくれないだけなんです。 40版ぶんの取り逃しと、それを埋めるのにかかった数十秒。この落差が、今日の記事のすべてと言ってもいいくらいです。

いま自分がどの版を使っているか確かめたいときは、これです。

claude --version

デスクトップアプリのほうの版を確認したいときは、Macのメニューから「Claude」→「Claudeについて」で見られます。この二つの数字を並べてみて、後ろの数字が大きく離れていたら、それが今日の私です。

ターミナルという黒い画面が苦手な方へ。 無理に覚える必要はありません。Macの「アプリケーション」フォルダから「ターミナル」を開いて、claude update と打ってエンターを押す。それだけです。何かを壊す種類のコマンドではありませんし、うまくいけば数十秒で終わります。それでも不安なら、社内でパソコンに詳しい方に「月に一度これを打ってほしい」とお願いするだけでも十分です。大事なのは、誰かが定期的にやる状態を作ることであって、あなた自身が打つことではありません。

おまけ:古い版は、自動では消えません

更新すると新しい版が入りますが、古い版の実体はMacの中に残り続けます。 1版あたり205〜206MB。当社のMacには古い版が3つ、居座っていました。

削除して、616MB回収しました。1GBに迫る量が、二度と使わないファイルで埋まっていたわけです。更新のたびに200MBずつ積み上がっていくと考えると、これも年に一度は見てやったほうがいい場所です。


ついでに直っていた、細かいけれど無視できないこと

大きな2つの陰に隠れていますが、今回の40版の中には、実務で効く修正がいくつも入っていました。当社に関係のあるものだけ拾います。

記憶フォルダの中身が消えることがあった不具合の修正。 使い終わったセッションの後片付けをする処理が、プロジェクトの「記憶フォルダ」の中身まで巻き込んでしまうことがあった、というものです。当社はこの記憶フォルダを全AIの土台にしています。「過去にこういう失敗をしたので、次はこうする」を全部ここに書き溜めてある。会社としての学習が溜まっている場所です。当社で消えた形跡はありませんが、ここが守られる作りになったのは、素直にありがたい。

長いフォルダ名で、別のプロジェクトの会話を掴んでしまう不具合の修正。 200文字を超える長さのフォルダ名を使っていると、別プロジェクトのセッションを引っ張ってきてしまうことがあったそうです。「A社の作業をしていたはずが、B社の文脈が混ざる」。お客様の仕事を並行でお預かりしている当社としては、笑えない類です。

コードの見直しを頼むコマンドの整理。 似た役割の命令が2つあったものが、ひとつに統合されました。細かさの指定を省くと、前回指定したのと同じ細かさを引き継いでくれます。毎回同じ指定を打ち直さなくてよくなった、ということです。

利用プランについての誤った案内が出る問題の修正。 上位プランを契約しているのに「追加の従量課金を有効にしてください」と促されてしまう、という周辺の不具合が直っています。言われるままに設定していたら余計な費用が出ていたかもしれない類なので、これは地味に効きます。

コマンド一覧の表示崩れの修正。 絵文字やアクセント記号の入った名前を並べたときに、表示が崩れなくなりました。細かいですが、毎日見る画面です。

画面が固まって描き直されなくなる不具合の修正ファイル書き込みのルールが編集時のルールと統一された、といったあたりも入っています。


まとめ:月に一度、明示的に「更新して」と言う運用にします

長くなりました。今日の話を、3行にします。

  1. AIの下請けを呼べる数の上限(1セッション200体)がなくなった。 長い仕事が途中で止まらなくなった。ただし同時に走る数の制限は残っているので、速くなったわけではありません。
  2. セッション同士がメッセージを送れるようになった。 別の機械で動いているAIにも、名前で話しかけられる。文脈を持ったまま仕事を渡せる。私のAIたちは、今日から機械をまたいで同僚になりました。
  3. デスクトップアプリを更新しても、ターミナルのClaudeは上がらない。 更新の窓口は2つあって、片方を押しても、もう片方は動きません。当社は40版遅れていて、上の1と2、つまりこの記事の主役だった2つの機能を、届いていないまま取り逃していました。

そして、今日から当社で決めたことを書きます。

月に一度、明示的に claude update を指示する運用にします。

「気づいたときに」ではありません。「定期的に」でもありません。月に一度、日を決めて、明示的に指示を出す。

当社は自動更新を切ってあります。そして、切ってある状態を続けると決めました。版が勝手に変わって朝の作業が崩れるほうが、当社にとっては困るからです。自動を切ると決めたのなら、手で上げる日を決めるのは当然の帰結です。 止めた分は、自分で埋める。それだけの話でした。

具体的には、毎月の初めにこれを点検項目として入れました。やることは3行です。

claude --version    # いま何版か
claude update       # 上げる
claude --version    # ちゃんと上がったか

最後の1行を入れているのは、当社に「やったつもりを、やった証拠にしない」というルールがあるからです。更新コマンドを打ったこと自体は、更新できた証明になりません。数字が変わったのを目で見て、はじめて完了です。

私が今回いちばん反省したのは、40版遅れていたことそのものよりも、遅れていることに気づく仕組みを持っていなかったことです。デスクトップアプリは自分から知らせてくれる。だから更新できていた。ターミナル側は、自動更新を切った時点で「誰かが手で上げる」以外に新しくなる道がなくなっていた。その誰かを決めていなかったので、ひと月半、誰も上げませんでした。

これは、AIの話ではありません。知らせてくれるものは対応でき、黙っているものは放置される。 会社の中の、あらゆることがそうではないでしょうか。文句を言ってくれるお客様には対応できて、黙って離れていくお客様には気づけない。声の大きいスタッフの不満は届いて、黙って辞めていく人の理由はわからない。

黙っているものを見にいく仕組みを、自分で作っておくしかない。今回は、月に一度のコマンド3行が、その仕組みです。

もしあなたが、ターミナルでClaudeを使っていらっしゃるなら。この記事を読み終わったら、いますぐ claude --version だけ打ってみてください。1秒で終わります。

そこに出てきた数字が、あなたが思っているより小さかったら──今日の私と同じです。お互い、月に一度の習慣にしましょう。


㈱デリシャスノーツでは、社長・経営者さま向けに「自社の業務に合わせたAIの導入設計と運用ルールづくり」のご相談もお受けしています。「AIを入れてはみたものの、社内の誰も更新も点検もしていない」「どこから任せて、どこから人がやるのか線引きしたい」といったご相談は、お問い合わせフォームよりお寄せください。

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