飲食店にホームページは本当に必要か?グルメサイトとの違いと、独自ドメインという答え

結論から先に
長い記事です。ですが、書いていることは最後まで一つのことしか言っていません。
自分の店のドメインを持つというのは、他人の土俵から降りて、自分の名前で勝負するということです。
その一点を、いろいろな角度から書きました。急いでいる方のために、答えを先に置きます。
- グルメサイトがあるからホームページは要らない、という考えは半分正しい。 新規のお客さまと出会う力は、媒体のほうが確実に強いからです。
- 危ういのは残りの半分。 店名を知った人が検索したとき、受け止める場所がないと、払わなくてよかった手数料まで払い続けることになります。
- そして、ホームページの本体はデザインではありません。「独自ドメインという資産を持つこと」です。 建物(デザイン)は建て替えられますが、土地(ドメイン)は残ります。
- そのドメインが、AI検索での「情報の出どころ」、地図検索での「信用の基準点」、そして採用における「会社としての体裁」の3つを、同時に支えます。
- 結論は併用です。 入口は媒体、受け皿は自社サイト、再来店は予約台帳。媒体は入口として使い、情報の出どころは自分で持つ。
この記事でわかること
- 「グルメサイトがあるからホームページは要らない」と言われる3つの理由と、そのどこが正しくてどこが危ういのか
- ホームページを持つ意味の本体は、デザインではなく 「独自ドメインという資産を持つこと」。それが集客・採用・取引先の信用をまとめて支えるという話
- 掲載料と送客手数料が、売上ではなく「粗利」のどこを削っているのか。その計算の考え方
- AI検索で自店ドメインが「一次情報」として扱われる仕組みと、地図検索で「信用の基準点」になる仕組み
- 逆に、いま作らなくていいお店の条件と、媒体との併用で「いいとこ取り」をする現実的な設計
1. 「うちはグルメサイトでやれてるから」――現場でいちばん多く聞く言葉
私は飲食店専門のウェブ集客を仕事にして、これまで累計1,000店舗以上のお店に関わってきました。カウンターの内側で、仕込みの手を止めずに話を聞いてくださるオーナーさん。営業前の30分だけ、と言って座ってくださる店長さん。そういう場所で、いちばん多く聞いてきた言葉があります。
「うちはグルメサイトでやれてるから、ホームページはいいかな」
この言葉を、私は一度も笑ったことがありません。むしろ、まっとうな経営判断だと思っています。予約が入っている。席が埋まっている。忙しい。目の前で回っているものを、わざわざ疑う必要はありません。経営者の時間は有限で、しかも飲食店の場合、その時間は仕込みと採用とシフトと数字に、すでに使い切られています。
そのうえで、この記事では少しだけ踏み込みます。目の前で回っているものは、誰の土俵の上で回っているのか。 その問いだけは、一度立ち止まって考える価値があると思っているからです。
この記事は、媒体を否定する記事ではありません
先に立場をはっきりさせておきます。当社は各種グルメサイトの更新代行・運用代行を生業のひとつにしています。媒体の力を毎日実感している側の人間です。だからこの記事は、「媒体をやめてホームページにしましょう」という話には一切なりません。
両方を持って、いいとこ取りをする。 それが現場で見てきた、いちばん無理のない形です。
ただ、判断の材料がこの数年で変わりました
私が最近のご相談で強く感じているのは、「要る/要らない」の答えが変わったのではなく、答えを出すための材料が変わったということです。
検索の答えを人ではなく AI が書くようになりました。地図検索は「その店の情報が、どこに、どれだけ整合的に置かれているか」を以前よりずっと見るようになりました。求人に応募してくる若い世代が、会社のメールアドレスを見るようになりました。そして、初期費用として数十万円をまとめて払う、という昔ながらのホームページの持ち方が、唯一の選択肢ではなくなりました。
材料が変われば、答えも変わります。この記事では、その材料を全部並べます。
2. まず、「ホームページはいらない」と言われる3つの理由を認めます
反論から入るつもりはありません。なぜ不要と言われるのかを、先に正面から書きます。3つとも、私は事実だと思っています。
理由① グルメサイトが充実して、そこで予約まで完結するから
いちばん大きい理由です。エリア・人数・日付を入れれば店が並び、写真もメニューも口コミも揃っていて、その場で予約できる。お客さまにとって便利すぎるほど便利です。
しかも、お店側は管理画面に入力すればページができます。ゼロから作る必要がありません。「これで足りているのに、なぜもう1つ作るのか」と思うのは当然です。
理由② SNSで、お店が直接発信できるようになったから
以前は、お店が自分で情報を出す手段がホームページしかありませんでした。いまは、その日の仕入れも、季節の一皿も、スマホ1台でそのまま発信できます。写真も動画も、無料で、その日のうちに届きます。
「更新できるページ」という意味では、SNSのほうが手軽で、しかも反応が返ってきます。 ホームページの更新が止まっているお店ほど、この差は大きく感じられるはずです。
理由③ Googleビジネスプロフィールがあるから
地図で検索すれば、店名・写真・営業時間・電話番号・口コミが出て、経路案内まで出ます。無料で使えて、電話も予約もそこからできます。「ここに情報があるなら、ホームページは重複では」と考えるのも、もっともです。
3つとも事実です。ただ、3つに共通している弱点があります
ここが、この記事のいちばん大事な部分です。3つを並べてみてください。
- グルメサイト = 他社が用意した場所にお借りしている情報
- SNS = 他社が用意した場所にお借りしている情報
- Googleビジネスプロフィール = 他社が用意した場所にお借りしている情報
どれも、あなたのお店が発信していることに違いはありません。ただし、その情報が置かれている場所は、どれもあなたのものではないのです。
ルールが変わることもあれば、サービス自体が変わることもある。掲載をやめれば消える。そして何より、「この店についての正解はここです」と示せる場所が、どこにもないという状態になります。
この弱点を埋めるものが、次の章の話です。
3. そもそも「ホームページを作る」とは、独自ドメインを持つということ
この記事でいちばん読んでいただきたいのが、この章です。ここが腑に落ちれば、あとの話は全部その続きになります。
多くの方が、「デザイン」を買おうとしています
ホームページのご相談をいただくとき、最初に出てくる話題はたいていデザインです。「もう少しおしゃれにしたい」「写真を大きく見せたい」「トップに動画を入れたい」。
もちろん、見た目は大事です。飲食店は世界観を売る商売ですから、雰囲気が伝わらないページには意味がありません。
ただ、デザインは作り直せます。 3年後にリニューアルすれば、新しくなります。作り直しても失われないものは何かというと、ドメインです。
ドメインとは、ウェブ上の「住所」であり「表札」です
ここは専門用語なので、丁寧に言い換えます。
ドメインというのは、〇〇〇.com のような、インターネット上の住所のことです。あなたのお店の名前で取得したドメインを 独自ドメイン と呼びます。
これを、店舗物件で考えてみてください。
- 媒体の店舗ページ・SNSのアカウント = ショッピングモールの中にお借りしている区画。集客はモールがしてくれます。ただし内装の決まりも、看板のサイズも、掲示できる内容もモールの規定に従います。契約が終われば、その区画は次のお店のものになります。
- 独自ドメイン = 自分の名義の土地。何を建てるかも、何を書くかも自分で決められます。建物(デザイン)を建て替えても、土地は残ります。
「ホームページを作る」というのは、実は 「自分名義の土地を取得して、そこに建物を建てる」 という行為です。そして経営として本当に効いてくるのは、建物のほうではなく 土地のほう です。
土地を持っていない状態で、いま起きていること
自店のドメインを持っていないお店は、ウェブ上での住所が「他社のビルの一室」しかない、という状態です。ここから、いくつかのことが同時に起こります。
- お客さまが店名で検索したとき、たどり着く先が 他社のサイトの中の1ページ になる
- Googleビジネスプロフィールの「ウェブサイト」欄に入れるURLも、他社のものになる
- AI があなたのお店の情報を探しにきたとき、店自身が発信している場所が見つからない
- 契約が終わったとき、そこに積み上げてきたものは 手元に残らない
- 名刺・ショップカード・求人票に書くURLとメールアドレスも、他社のもの、あるいはフリーメールになる
繰り返しますが、これは媒体が悪いという話ではありません。区画をお借りしている以上、当然そうなります。問題は、借りた土地しか持っていないことのほうです。
これは、技術の話ではなく、姿勢の話です
少し、私の思っていることを書かせてください。
飲食店を開くとき、あなたは物件を決め、内装を決め、皿を選び、看板の書体まで悩んで決めたはずです。暖簾の色ひとつに、意味を持たせたはずです。それは全部、「自分の名前で勝負する」ための決断でした。
ところが、ウェブの世界に来た途端、その決断を他人に預けてしまう。写真の枚数も、紹介文の長さも、隣に誰が並ぶかも、全部よその会社が決めた枠に合わせる。そして、その枠の中で他店と点数を競う。
私は、これがずっと引っかかっていました。
他人の土俵で戦っている限り、勝ち方も、ルールも、自分では決められません。 土俵が変われば、昨日までの積み上げが一瞬で意味を変える。それは、あなたが皿を選んだときの気持ちとは、まるで違う世界の話です。
独自ドメインを持つというのは、要するに 「土俵から降りて、自分の名前で勝負する場所を作る」 ということです。派手な話ではありません。むしろ地味です。ただ、店の名前を〇〇〇.comとして世に置くという行為には、看板を上げたときと同じ種類の意味があると、私は本気で思っています。
媒体の土俵にも上がり続けてください。そこはお客さまと出会える大事な場所です。ただ、自分の土俵を1つも持たないまま20年商売を続けるのは、もったいない。 話の本題はそこです。
当社の月額に、独自ドメインとサーバーが込みで入っている理由
当社の 飲食店のホームページ制作・運用 では、いちばん手前のライトプラン(月額29,800円・税込)にも、独自ドメインとサーバー費用が最初から含まれています。 オプションではありません。
これは値付けの都合ではなく、考え方の問題です。ドメインこそが本体だからです。ページの枚数やデザインの豪華さは後から足せますが、土地がなければ何も始まりません。だから、いちばん安いプランにこそ、それを入れています。
そして独自ドメインは、お店の資産として取得・運用します。制作を頼む会社が変わっても、運用の形が変わっても、ドメインはお店に残る。ここは譲れない部分だと思っています。
以降の章では、この「土地を持つこと」が、お金・世界観・AI検索・地図検索・採用・顧客台帳のそれぞれにどう効いてくるのかを、ひとつずつ見ていきます。
4. グルメサイト・SNS・ホームページ――3つの役割を整理する

議論が噛み合わなくなるのは、たいてい3つを同じ土俵で比べているときです。それぞれ、お客さまの行動のなかで担っている役割が違います。
グルメサイトは「まだ知らない人」に会える場所
「新宿 個室 接待」で探している人は、店名を知りません。この段階のお客さまに会えるのが媒体です。比較検討の材料が揃っていて、その場で予約まで完結する。導線として非常によくできています。
新規のお客さまを連れてくる力は、媒体のほうが圧倒的に強い。 ここは素直に認めるべきところです。
SNSは「思い出してもらう」場所
SNSは、すでにつながっている人に届きます。一度来てくださった方、フォローしてくださっている方の画面に、季節の一皿が流れる。「そういえば、あの店行きたかった」を作るのが仕事です。
ただし、SNSの投稿は流れていきます。半年前の投稿を探し出して、営業時間を確認する人はいません。蓄積して参照される場所ではないという性質を持っています。
自社サイトは「行くかどうかを決める」場所
こういう場面を想像してみてください。
お客さまが友人から「あそこ、よかったよ」と店名を聞いた。会社の上司から「今度あの店で」と言われた。看板を見て気になった。SNSで料理写真を見かけた。――このとき人がやることは、ほぼ一つです。店名で検索する。
この「店名で検索された瞬間」に何が出てくるか。ここが自社サイトの主戦場です。業界では指名検索と呼びますが、要するに 「もう名前を知っている人が、行くかどうかを決める瞬間」 のことです。
3つの役割比較表
| 観点 | グルメサイト(媒体) | SNS | 自社ホームページ(独自ドメイン) |
|---|---|---|---|
| 出会えるお客さま | まだ店名を知らない人 | すでにつながっている人 | 店名を知って調べている人 |
| 得意な場面 | エリア・条件での比較検討 | 思い出してもらう・関係を続ける | 最後のひと押し・行く決断 |
| 情報の残り方 | 媒体の枠内に固定表示 | 流れて埋もれる | 蓄積され、いつでも参照される |
| 情報の見せ方 | 媒体の枠・ルールの範囲内 | 各サービスの仕様の範囲内 | 店が決められる |
| 隣に並ぶもの | 競合店と点数 | 他人の投稿 | 自店の情報のみ |
| 予約の手数料 | 発生する(形態はプランによる) | 原則なし(導線は外部頼み) | 予約システムの利用形態による |
| 顧客情報 | 媒体側に蓄積される部分がある | 基本的に手元に残らない | 自店に蓄積しやすい |
| 情報の出どころ | 同じ内容が多媒体に重複 | 断片的 | 店が公式に出す一次情報 |
| やめたときに残るもの | 残らない | アカウントごと消える | ドメインとページが残る |
| 採用・取引先への効き方 | ほぼ効かない | 雰囲気は伝わる | 会社としての体裁を示せる |
この表を眺めると、「どれか1つを選ぶ」という設問そのものが成り立っていないことが見えてくると思います。
5. 媒体だけに頼るときの、3つのリスク
役割が違う、という話をもう一歩進めます。媒体「だけ」の状態には、構造的なリスクが3つあります。
リスク① 隣に必ず、競合と点数が並ぶ
媒体のページは、お客さまが比較するために作られています。だからあなたのお店のページの下や横には、必ず他店が並びます。点数や口コミ件数も並びます。
これは媒体の欠陥ではなく、比較サイトとして正しい設計です。比較できなければ、そもそも媒体として機能しません。
ただ、店名で検索してきた人――つまり、もうあなたの店に行くつもりの人――に、わざわざ競合を見せる必要はありません。行くと決めていた人が、隣の店の点数を見て気が変わる。これは、防げたはずの失注です。
リスク② 掲載をやめた瞬間に、積み上げが消える
何年も情報を整え、写真を入れ替え、口コミに返信してきた。その積み重ねは確かに資産です。
ただし、その資産は媒体の中にしか存在しません。 掲載をやめれば、ページも、そこでの見え方も残りません。これは契約の性質としてそういうもので、責める話ではないのですが、経営としては知っておくべき構造です。
さらに、掲載ルールや表示の仕組みは媒体側の判断で変わります。並び方が変わることも、プラン内容が見直されることもある。商売として当然のことです。ただ、自分の集客の土台を、自分で決められないルールの上に100%置いているという状態は、リスクとして数えておいたほうがいい。
リスク③ 店名で検索した人の、受け皿がない
これが、いちばん静かに損をしているところです。
紹介で名前を知った人、看板を見た人、上司に店名を告げられた人。この人たちは すでにあなたの店に行こうとしています。 媒体の力を借りる必要は、本当はありません。
ところが受け皿がないと、この人たちは検索して媒体のページにたどり着き、そこから予約します。結果として、取れたはずの予約に、手数料を払っていることになります。
次の章で、この金額を自分で計算する方法をお伝えします。
6. お金の話――掲載料と送客手数料は、利益のどこを削っているのか
ここがいちばん切実なところだと思うので、丁寧に書きます。
前置きとして、具体的な手数料の数字はこの記事では書きません。 媒体によって、契約プランによって、時期によって条件が違い、断定して書くと誰かの実態と必ずずれるからです。代わりに、ご自身の請求書の数字を当てはめれば答えが出る「考え方」 をお渡しします。
見るべきは売上ではなく「粗利」
まず、送客手数料を「売上の何%」で考えるのをやめてください。飲食店の利益は売上のうちのごく一部です。原価と人件費を引いた残りから、手数料が引かれます。
たとえば原価率が3割のお店で、1人5,000円のコースが1件出たとします。食材原価で1,500円。ここに人件費、家賃、水道光熱費が乗ります。手元に残るのは、売上の数字を見たときの印象よりずっと小さい。手数料は、その小さくなった残りから引かれます。 だから「売上の数%」に見えるものが、「利益の十数%」に化けることがあるのです。
これは媒体が悪いという話ではありません。評価する土俵を間違えると、判断を間違えるという話です。
費用構造の比較
| 項目 | グルメサイト(媒体) | 自社ホームページ(独自ドメイン) |
|---|---|---|
| 固定費 | 掲載料(月額) | 制作・運用費(初期一括型/月額型) |
| 変動費 | 送客手数料(予約が増えるほど増える) | 原則、予約が増えても増えない |
| 費用と成果の関係 | 売れるほど支払いも増える | 売れるほど1件あたりの負担は下がる |
| やめたときに残るもの | ページも見え方も残らない | ドメイン・ページ・顧客情報が残る |
| 効き始めるまで | 掲載開始から比較的早い | 数ヶ月かけて育つ(予約導線の改善は公開直後から) |
| 向いている役割 | 新規の入口 | 受け皿・再来店・指名検索の受け止め |
いちばん大事なのは3行目と4行目です。媒体費用は「売れるほど増える変動費」、自社サイトは「売れても増えにくい固定費」。 性格がまったく違います。そして、支払いをやめたときに手元に残るものが、片方には無く、片方にはある。それがドメインです。
損益分岐の考え方(数字はご自身のものに置き換えてください)
紙とペンでできる計算をお伝えします。以下の数字はすべて例です。必ずご自身の請求書に置き換えてください。
- 直近3ヶ月の、媒体経由の予約1件あたりの手数料額を出す。請求書の手数料合計 ÷ 送客件数、で構いません。
- それを 「1組あたりいくら払っているか」 という感覚に翻訳する。パーセントのままだと痛みが分かりません。
- 自社サイトの月額費用を、その1組あたりの金額で割る。「月に何組が自社経由に置き換われば、費用が相殺されるか」 が出ます。
- その組数が、あなたの店の月間予約件数から見て現実的かどうかを判断する。
たとえば1組あたり1,500円相当を払っている感覚で、自社サイトの月額が29,800円なら、月20組が自社経由に置き換われば、計算上は釣り合うことになります。1日1組もありません。この「1日1組」という単位まで落とすと、判断がぐっと具体的になります。
(※ この1,500円という数字は計算の説明のための仮の値です。実際の条件はご契約により異なります。費用相場そのものの考え方は 飲食店ホームページの費用相場 で詳しく整理しています。)
誤解しないでいただきたいこと
「手数料がもったいないから媒体をやめる」は、多くの場合、悪手です。
その予約は、媒体がなければ そもそも発生していなかった予約かもしれない からです。存在しなかった売上に対して払う手数料は、コストではなく仕入れです。やめれば手数料はゼロになりますが、売上もゼロになります。
正しい問いはこちらです。「本来なら手数料を払わずに取れたはずの予約に、手数料を払っていないか」。 ここを自社側に取り戻すのが、独自ドメインを持つことの経済的な意味になります。
7. 情報量とデザインの自由度――媒体では、店の世界観をそのまま出せない
お金の次は、もう少し情緒的だけれど、経営としては同じくらい重い話です。
写真の枚数も、文字数も、載せられる項目も、店が決められない
媒体のページには、必ず枠があります。掲載できる写真の枚数、紹介文の文字数、載せられる項目、表示される順番。これらは媒体が決めています。
これも媒体の落ち度ではありません。何万店も並ぶページを、お客さまが比較しやすい状態に保つには、共通のフォーマットが必要だからです。フォーマットがなければ、比較サイトとして機能しません。
ただ、その結果として何が起きるか。あなたのお店が、他の何万店と同じ形に整えられるということです。同じ枠、同じ並び、同じ項目。差がつくのは、写真の質と点数だけという状態に近づきます。
「うちの店の言葉」で語れる場所が、どこかに1つ要る
- なぜこの土地でやっているのか
- 誰から仕入れているのか、その人とどう出会ったのか
- どんな時間を過ごしてほしくて、この席数にしたのか
- 大将が20年やってきて、何を変えて、何を変えなかったのか
こういう話は、決まった枠の中には収まりません。そして、単価が高い店ほど、この部分が予約の決め手になります。
接待で使う店を探している人、記念日の店を選んでいる人、常連を連れていく店を決めている人は、「安いから」では選びません。外さない確信が欲しくて調べているのです。その確信をつくれるのは、比較用に整えられたページではなく、店が自分の言葉で書いたページです。
自由度は「見た目」だけの話ではありません
デザインの自由度というと見た目の話に聞こえますが、実際にはもっと実務的です。
- 忘年会プランの詳細を、6ページ分書いてもいい
- 貸切のレイアウト図を載せてもいい
- アレルギー対応の方針を、正確に長く説明してもいい
- 個室の写真を、角度を変えて10枚載せてもいい
「載せる情報の量を、店が決められる」 ということです。宴会・貸切・接待といった、単価が高くて検討が慎重になる需要ほど、この情報量が効いてきます。
8. ホームページが果たす3つの役割
ここまでの話を、役割として整理します。自社サイトが担うのは、大きく3つです。
役割① 指名検索の受け皿になる
店名で検索した人を、競合の並ぶページではなく、自分の店の情報だけがある場所で受け止める。手数料を払わずに済む予約を、取りこぼさないための役割です。
役割② 単価の高い需要の受け皿になる
宴会、貸切、接待、記念日、法事、ロケーション利用。問い合わせの前に、じっくり読まれる需要です。
このとき見られるのは、雰囲気だけではありません。何名から貸切にできるのか、持ち込みは可能か、支払い方法は何が使えるか、領収書の宛名はどうなるか、キャンセルの規定はどうか。幹事さんが上司に説明するための材料が要ります。媒体の枠には収まりきらない部分です。
役割③ 採用と、取引先からの信用を支える
これが、意外なほど見落とされている役割です。しかも、いま飲食店にとっていちばん切実な問題――人が採れない――に直結しています。
次の章で、独立して書きます。
9. 独自ドメインのメールアドレスは、採用の土台です
集客の話をずっとしてきましたが、ここだけは少し違う角度の話をさせてください。私が経営者として、いちばん強く思っていることでもあります。そして、この章のためにこの記事を書いたと言ってもいいくらいの話です。
いま、飲食店のいちばんの経営課題は、集客ではありません。人です。募集をかけても来ない、来ても続かない。どれだけ予約が埋まっても、回す人がいなければ店は開きません。そのことは、この記事を読んでくださっているあなたが、いちばんよくご存じのはずです。
その「人」の話に、ドメインは効いてきます。
従業員に、フリーメールしか渡せない会社
考えてみてください。従業員や社員のメールに、無料のメールアドレスしか渡せない会社に、いまの若い世代の子たちが入社したいと思うでしょうか。
厳しい言い方に聞こえたら申し訳ありません。フリーメールを使っているお店を見下しているわけではまったくないのです。単に、知られていないだけだと思っています。独自ドメインでメールアドレスが作れること、しかもそれがホームページと同じ1本のドメインで実現できることを、そもそも聞いたことがない。それだけの話です。
私自身、この話をご説明すると「え、そんなことができるんですか」と驚かれることが本当に多い。だから、はっきり書いておきます。
求人票のメールアドレスを、応募者は見ています
いまの求職者は、応募する前に会社を調べます。求人サイトの情報だけでは判断しません。会社名で検索し、ホームページを見て、SNSを見て、口コミを見ます。面接の連絡が届いたメールアドレスも、当然見ています。
- 求人票に書かれた連絡先が、無料のメールアドレス
- 面接日程の連絡が、店長個人の携帯のアドレスから届く
- 会社のホームページが検索しても出てこない
このとき応募者が感じるのは、「この会社、大丈夫かな」という漠然とした不安です。料理の腕とも、働きやすさとも、まったく関係がないところで不安を持たれる。 これが、いちばんもったいないと思います。
逆に、saiyo@あなたの店.com のようなアドレスから連絡が届き、そのドメインのホームページに理念や店舗情報がきちんと載っている。それだけで、「ちゃんとした会社だ」という前提から面接が始まります。同じ内容の面接でも、始まる位置が違います。
取引先・銀行から見た景色も、同じです
これはお客さまの目線ではありません。あなたのお店を支える人たちの目線です。
新しい仕入先に取引をお願いするとき。物件の相談をするとき。設備投資の融資を銀行に相談するとき。相手は必ず、会社を調べます。そのときに、自社のドメインで運営されているホームページがあり、そのドメインのメールアドレスでやり取りしているという状態は、それだけで説明の手間を減らします。
繰り返しますが、フリーメールで商売をしている立派なお店はいくらでもあります。ただ、「調べられたときに、疑問を持たれない」というのは、無料で手に入るものではないというだけの話です。
ドメイン1本が、サイトとメールの両方を支えます
ここが、この記事全体でお伝えしたかったことの核心です。
独自ドメインを1本取得すると、そのドメインでできることは2つあります。
- そのドメインでホームページを公開する
- そのドメインのメールアドレスを、スタッフ一人ひとりに配る(Google Workspace などのサービスを使います)
店長にも、料理長にも、新しく入ったスタッフにも、お店のドメインのメールアドレスを渡せる。 名刺に書けるアドレスが持てる。採用の窓口も、予約の窓口も、仕入れの窓口も、同じドメインで揃う。
土地を1つ持つと、その上に建つのはホームページだけではないということです。
そして、これは検索や地図の信用ともつながっています
第11章で改めて書きますが、Google 自身が、事業者に対して独自ドメインの取得や、そのドメインでのメールアドレスの利用を勧めるようになってきています。
つまり、同じ1本のドメインが、採用における信用と、検索・地図における信用の両方を同時に支えているのです。別々の投資ではありません。1つの資産が、店の外側にいる全員――お客さま、応募者、取引先、銀行、そして検索エンジンとAI――に対して、同じ「うちはここにいます」という表明になります。
「採用できる」とは言いません。「土台に立てる」と言います
念のため、はっきり書いておきます。独自ドメインのメールアドレスを配れば人が採れる、という話ではありません。 採用は、待遇も、労働環境も、店の空気も、全部が関わる総合的なものです。
私が申し上げているのは、土台の話です。飲食店を軸にした会社を作ろうと思っているのであれば、取引業者だけでなく、銀行や、これからあなたのお店を手伝いたいと思って入ってくる新入社員や未来のスタッフたちに対して、ちゃんとしたホームページがあり、お店オリジナルの独自ドメインを使ったメールアドレスを社員一人ひとりに渡せる会社になって、はじめて採用の土台に立てる。
土台に立ってからが勝負です。ただ、土台に立っていないと、勝負が始まりません。
10. AI検索の時代――AIは「一次情報」を探しており、それは自店ドメインにしかない

ここが、私がこの数年でいちばん強く変わったと感じている部分です。そして、「グルメサイトがあるから要らない」という判断が危うくなった最大の理由でもあります。
検索の答えを、人より先に AI が書くようになった
以前は、検索すると青いリンクが並び、人がそれをクリックして読んでいました。今は違います。検索結果の上に、AI が要約した「答え」がいきなり出てきます。 会話型の AI に「銀座で接待に使える和食の店を教えて」と聞く人も、確実に増えました。
このとき何が起きているか。AI は、答えを書くために情報源を読みにいっています。 そして、その情報源として何を信用するかという判断が、そこには入っています。
一次情報と二次情報――ここが決定的です
少し言葉を整理させてください。
- 一次情報 = そのことを決めている本人が、自分で出している情報。営業時間を決めているのは店です。コース内容を決めているのも店です。だから 店が自分のドメインで公開している情報が、一次情報 にあたります。
- 二次情報 = 誰かから受け取った情報を、別の場所が転載・整形して載せているもの。媒体の店舗ページは、構造としてこちら側です。
ここで思い出していただきたいのが、飲食店の情報が置かれている場所の多さです。グルメサイト、地図サービス、予約サイト、まとめサイト、地域情報サイト……同じ営業時間、同じ電話番号、同じコース名が、何十か所にも重複して存在しています。
AI から見ると、この状態は「同じ内容がたくさんあるが、どれが出どころなのか分からない」というふうに見えます。しかも、どこか1か所が古い情報のまま止まっていれば、内容が食い違います。食い違ったとき、AI はどれを正としてよいか判断できません。
そこに 店自身のドメインで公開された情報 があると、話が変わります。「決めている本人が、自分の場所で、こう言っている」 という基準点ができるからです。
自店ドメインを持たないお店に、いま起きていること
正確に表現すると、こうなります。
自店のドメインを持っていないお店は、AI に対して「自分の言葉で自己紹介する手段」を持っていません。 人づてに伝わった情報だけで語られている状態です。その伝言が正確ならいいのですが、どこか1か所で更新が止まっていれば、そのまま間違いとして広まります。
「AI に営業時間を聞いたら、去年やめたはずのランチ営業を答えられた」――こういう事故は、この構造から起きます。しかも厄介なのは、お店側からは見えないということです。誰かが AI に聞いて、間違った答えを受け取って、来店をやめた。その失客は、数字にすら現れません。
AI に正しく答えてもらうために、自店ドメインに置いておきたいもの
難しく考える必要はありません。以下が、そのまま揃っているかどうかです。
| 置くべき一次情報 | よくある不足 |
|---|---|
| 正式な店名(読み仮名も) | 表記ゆれがある |
| 住所・電話番号 | 媒体と表記が違う |
| 営業時間・定休日・ラストオーダー | 更新が止まっている |
| コース内容と価格(税込表記) | 価格改定が反映されていない |
| 席数・個室の有無・貸切可否 | どこにも書いていない |
| 支払い方法・キャッシュレス対応 | 記載なし |
| 予約方法(電話/ネット/予約ページ) | 導線が分かりにくい |
| アクセス(最寄駅からの経路) | 地図画像だけで、文字の説明がない |
これは検索対策のテクニックというより、「聞かれたことに、店が自分で答えている状態」を作る作業です。AI であれ人であれ、答えのない質問には答えられません。
今のうちに整えると効く理由
念のため、はっきり書いておきます。独自ドメインを持てば検索順位が上がる、という話ではありません。 検索順位が何で決まるかを Google は公表していませんし、約束できることでもありません。
私が申し上げているのは、もっと手前の話です。情報の出どころとして扱われやすくなる。 食い違いが起きたときの基準点ができる。 ――受け皿がなければ、そもそも拾われようがない、ということです。
そして検索やAIの世界での評価は、公開した翌日に変わるものではありません。数ヶ月かけて育っていくものです。AI検索が完全に当たり前になってから慌てて始めると、育つのを待つ時間だけ後ろにずれます。逆に、いま土地を持っておけば、その分だけ先に立ち上がります。
11. 地図検索――Googleビジネスプロフィールの「ウェブサイト」欄に、何を入れていますか

AI検索と並んで、独自ドメインが効いてくるのが地図検索です。こちらは今日、5分で確認できます。そして、驚くほど多くのお店が、ここでもったいないことをしています。
地図検索で見られているのは、名前より「整合性」
Googleマップでお店を探すと、店名・写真・口コミ・営業時間、そして 「ウェブサイト」ボタン が出ます。この情報を管理しているのが Googleビジネスプロフィールです。
Google は、そのお店が実在して、きちんと営業していて、情報が信用できるかどうかを判断しています。判断材料のひとつが、あちこちに散らばっている情報が互いに食い違っていないかです。
飲食店の場合、店名・住所・電話番号の3点が、いくつもの場所に載っています。そしてこの3点は、驚くほど簡単にバラつきます。
- ビル名が入っている住所と、入っていない住所
- 「〇〇 銀座店」と「〇〇銀座店」(スペースの有無)
- 固定電話の番号と、あとから作った予約専用番号
- 移転前の住所が、どこかに残ったまま
どれも小さな話に見えますが、機械から見ると「別の店かもしれない」 という揺らぎになります。
独自ドメインは「正解はここ」という基準点になります
ここで独自ドメインが効いてきます。
自店ドメインの公式サイトに、店名・住所・電話番号が正しく書かれていて、それが Googleビジネスプロフィールの内容と一致している。この状態は、「正解はここです」と店自身が宣言していることにあたります。ほかの場所の表記が多少ばらついていても、基準点があれば、どれが正しいかを突き合わせられます。
逆に、公式サイトが存在しないと、どこにも基準点がありません。 媒体Aと媒体Bで営業時間が違っていたとき、どちらが正しいかを示すものがない、ということです。
「ウェブサイト」欄に媒体のURLを入れているお店は、まだ多い
自社サイトがないお店は、この欄に媒体のページのURLを入れることになります。空欄よりはずっといい。ただ、そこに入るのは 「他社サイトの中の1ページ」 です。
自店ドメインが入っていれば、Google から見て「このお店には、自分で情報を発信している公式の場所がある」という状態になります。さらに、その公式サイト側の住所・電話番号・営業時間がプロフィールと一致していれば、情報同士が互いを裏付ける関係になります。
繰り返しますが、順位を約束できる話ではありません。ただ、信用の材料が1つ多い状態と、少ない状態のどちらがいいかという問いなら、答えははっきりしていると思います。
プラットフォームの側が、「自分のドメインを持て」と言い始めています
これは、私が独自ドメインをおすすめするうえで、いちばん大きな裏づけだと思っている変化です。
Google 自身が、ビジネスプロフィールの完成度を高めていく流れのなかで、事業者に対して独自ドメインの取得や、そのドメインでのメールアドレス(Google Workspace)の利用を勧めるようになってきています。
つまり、「媒体のページがあるから十分でしょう」という前提が、媒体を評価する側であるプラットフォーム自身の動きによって、静かに変わりつつあるということです。
考えてみれば当然の流れかもしれません。地図に載っているお店が本物かどうか、情報が最新かどうかを判断したいとき、そのお店自身が管理している場所があるかどうかは、非常に分かりやすい手がかりになります。フリーメールのアドレスしか連絡先がない事業者と、自分のドメインのメールアドレスを持っている事業者。どちらがきちんと運営されていそうかは、人間が見ても同じ判断になると思います。
そして、前の章で書いた採用の話と、ここでつながります。同じ1本のドメインが、応募者に対する信用と、検索・地図に対する信用の、両方を支えている。 別々の話ではないのです。
今日できる確認手順
- スマホで自分のお店の名前を検索する
- 右側(スマホなら上部)に出るお店の情報の「ウェブサイト」を見る
- そこが 自店のドメインか、媒体のページか を確認する
- 営業時間・電話番号・住所が、いま実際に運用しているものと一致しているか確認する
- 一致していなければ、その場で直す
4と5だけでも、やる価値があります。古い営業時間で「閉まってる」と判断されて帰られるのは、いちばんもったいない失客です。
12. 自社予約が積み上がると、それは「顧客台帳」という資産になる
ここは、いますぐの売上ではなく、3年後に効いてくる話です。
予約1件の裏にある、情報の差
媒体経由の予約でも、来店してくださるお客さまはお客さまです。そこに違いはありません。
ただ、予約という出来事が、店側にどれだけの情報として残るかは変わります。自社の予約システムを通った予約は、来店履歴として自店側に積み上がっていきます。いつ来たか、何人で来たか、どのコースだったか、何回目か。この積み重ねが顧客台帳です。
台帳があると、閑散期の打ち手が変わる
台帳があると、暇な火曜日にできることが変わります。
- 昨年の同じ時期に来てくださった方に、季節のご案内を出す
- 忘年会シーズンの前に、去年幹事をしてくださった方へ先にお声がけする
- 記念日で使ってくださった方に、1年後にご連絡する
台帳がないお店の閑散期対策は、「新規のお客さまを、お金を払って連れてくる」しかありません。 台帳があるお店は、すでに一度来てくださった方に声をかけるという選択肢を持てます。どちらが安く、どちらが確実かは、説明するまでもないと思います。
資産は「やめた瞬間」に差が出る
媒体の掲載をやめると、そのページも、そこで積み上げた見え方も、手元には残りません。
一方、自店のドメインで公開したページと、そこに積み上がった予約履歴は、制作会社を変えても、運用の形が変わっても、店に残ります。 ドメインが自店名義であることが大事なのは、このためです。
(当社の場合も、独自ドメインは お店の資産として取得・運用する という考え方でやっています。サーバー費用も月額に含めているので、別途のお手続きや支払いはありません。詳しくは 飲食店のホームページ制作・運用 のページに書いています。)
ただし、お客さまの情報は「預かりもの」です
念のため書いておきます。顧客情報は資産であると同時に、お客さまからの預かりものです。取得の目的を明示する、必要以上に集めない、案内を送るなら停止の手段を用意する。ここを雑に扱うと、資産どころか一瞬で信用を失います。台帳を持つということは、その責任も持つということです。
13. 自社ホームページを持つ4つのメリット(ここまでの整理)


長くなったので、ここで一度まとめます。自社サイト――正確には独自ドメイン――を持つ意味は、大きく4つです。
メリット① 差別化できる
媒体では、同じ枠・同じ項目・同じ並びの中で戦うことになります。自分の場所なら、写真の枚数も、語る長さも、順番も、店が決められます。 単価の高い需要ほど、ここが決め手になります。
メリット② 正確な情報を、自分で保証できる
営業時間もコース内容も、決めているのは店です。その店が自分の場所で書いた情報が、いちばん正確なのは当然です。AI検索でも地図検索でも、この「正解はここ」という基準点があるかどうかで扱いが変わります。
メリット③ 情報が資産としてストックされる
SNSの投稿は流れます。媒体のページは掲載をやめれば消えます。自分のドメインに書いたものは、消えずに積み上がります。 ブログでも、お知らせでも、宴会プランの説明でも、書いた分だけ蓄積します。
メリット④ 信頼の土台になる(お客さまだけでなく)
お客さまに対してだけではありません。応募者・取引先・銀行に対しても同じです。ドメインのメールアドレスをスタッフに配れる会社かどうかは、調べられたときに必ず見られます。
この4つは、どれも 「土地を持っているかどうか」 から派生しています。ここが、この記事全体の背骨です。
14. 正直に書きます。ホームページが「今は要らない」お店もあります
ここまで読むと、私が全店にホームページを勧めているように見えるかもしれません。違います。急がなくていいお店は、確実にあります。
優先順位が低いケース
1. 常連さんだけで席が埋まっていて、新規を増やす予定がないお店
10席のカウンター、予約は電話だけ、それで毎日埋まっている。この状態で、無理にウェブの受け皿を広げる必要はありません。むしろ 席数以上の集客は、常連さんを追い出すことになりかねません。
2. 開業前後で、まだ商品が固まっていないお店
コースの内容も価格も、あと3ヶ月で変わるかもしれない。この段階でページを作り込むと、作った端から古くなります。先にやるべきは、Googleビジネスプロフィールの整備と、媒体での立ち上がりです。
3. 業態的に「調べてから行く」場所ではないお店
駅前の立ち飲み、朝の定食屋、オフィス街のランチ専門店。通りかかって入る業態です。ここは看板と口コミと立地が主戦場で、ウェブの優先順位は下がります(ただし地図検索の情報整備は、この業態でも効きます)。
4. 更新する体制が、社内にも外にもまったくないお店
これがいちばん大事です。作ったきり2年間更新されていないホームページは、無いより悪い場合があります。 古い営業時間、終わったフェア、消えたコース。それを見たお客さまは「この店、やっているのかな」と思います。更新できないなら、作らないほうがましです。
「今は要らない」と「一生持たない」は違います
ただし、上の1〜3に当てはまるお店でも、Googleビジネスプロフィールの整備と、店名で検索されたときに出る情報の整合性は、やっておいて損がありません。ここは費用がほとんどかからず、それでいて失客に直結する部分だからです。
そしてもうひとつ。ドメインだけは、早めに押さえておく価値があります。 土地と同じで、いい名前は早い者勝ちです。お店の名前で取れるドメインが、数年後も空いているとは限りません。建物を建てるのは後でいい。ただ、土地の名義だけは先に押さえておく、という考え方はあります。
4に当てはまるお店は、「更新まで誰かがやってくれる形かどうか」 でだけ判断すればいいと思います。作る話ではなく、続けられる形かどうかの話です。
15. ホームページだけでは足りない――併用が現実解である理由
ここまで自社サイトの話を厚めに書いてきたので、逆側もきちんと書きます。ホームページを作っただけでは、お客さまは来ません。
作っただけでは、誰にも見つからない
新しく公開したページは、最初は誰にも知られていません。検索で見つけてもらえるようになるまでには時間がかかります。 ここを理解せずに、「作ったのに問い合わせが来ない」と落胆されるケースを、私は何度も見てきました。
この「作ったのに来ない」の中身は、原因がいくつかに分かれます。詳しくは ホームページで集客できない理由 にまとめました。
だからこそ、その時間を稼いでくれる媒体が要るのです。媒体は入口として即効性があります。自社サイトは受け皿として時間をかけて育ちます。この2つは、対立ではなく 時間差の補完関係 にあります。
併用の設計図
私がお店にご説明するときは、いつもこの3層で整理します。
| 層 | 役割 | 主に担うもの |
|---|---|---|
| 入口 | まだ知らない人と出会う | 各種グルメサイト、Googleマップ、SNS |
| 受け皿 | 店名で調べた人に決めてもらう | 自社ホームページ(独自ドメイン) |
| 再来店 | もう一度来ていただく | 予約台帳・お知らせ・口コミへの返信 |
入口だけがあって受け皿がないお店は、手数料を払わなくてよかった予約にまで手数料を払っています。
受け皿だけがあって入口がないお店は、いいページを作ったのに誰にも見られていません。
再来店の仕組みがないお店は、毎月ゼロから新規を集め続けることになります。
3つとも要る、というのが私の結論です。媒体は集客の入口として有効。ただし、情報の出どころは自分で持つ。 この一行に尽きます。
順番でいうと
- 最初の3ヶ月:独自ドメインの取得と公開、Googleビジネスプロフィールの整備、媒体情報の最新化、予約導線の設置
- 3〜6ヶ月:店の言葉で書いたページを増やす(コースの背景、個室の使われ方、季節の食材)、口コミへの返信を習慣化
- 6〜12ヶ月:媒体経由と自社経由の比率を見ながら、費用配分を調整する
いきなり媒体を減らさないでください。 自社経由が実際に積み上がってきたことを数字で確認してから、少しずつ配分を変える。これが安全な順序です。具体的な作り方の手順は 飲食店ホームページの作り方 に書きました。
16. 「うちの店には必要?」チェックリスト
判断するための問いを置きます。紙に書き出してみてください。
7つの問い
- 自分の店の名前で取ったドメインを、いま持っているか
- 店名で検索したとき、いちばん上に出てくるのは自分の店の情報か、媒体のページか
- Googleビジネスプロフィールの「ウェブサイト」欄は、自店のドメインになっているか
- 直近3ヶ月で払った送客手数料を、1組あたりの金額に直すといくらか
- その予約は、媒体がなければ発生しなかったものか。それとも、指名で来るはずだった人か
- 求人票や面接連絡に使っているメールアドレスは、お店のドメインのものか
- 去年来てくださったお客さまに、いま連絡を取る手段があるか
判定の目安
- 1が「ない」 なら、まずここです。土地がなければ、ほかの施策も積み上がりません。
- 2と3が「媒体のページ」 なら、指名検索の受け皿と、情報の基準点がない状態です。優先度が高い領域です。
- 4が想像より大きかった なら、変動費と固定費の配分を見直すタイミングかもしれません。
- 5が「指名で来るはずだった人」寄り なら、取り戻せる余地があります。
- 6が「フリーメール」 なら、採用の土台がまだ整っていません。人を増やす計画があるなら、優先度は高いです。
- 7が「ない」 なら、閑散期の打ち手が新規集客しかない状態です。台帳を持ち始める価値があります。
- 逆に、すべてに問題を感じない なら、いま急いで動く必要はありません。それも立派な結論です。
17. 費用はどのくらいかかるのか
「必要なのは分かるけど、まとまった金額が出せない」。この一言で止まっているお店を、本当にたくさん見てきました。
飲食店のホームページは、制作会社に依頼すると 初期費用として数十万円、さらに別途で月々の保守費用 がかかるのが一般的です。この初期のかたまりが、判断を何年も止めてしまう。しかも止めている間に、検索も地図もAIも、どんどん先に進んでいきます。
当社の場合
当社では、この構造そのものを変えました。制作費を月額に含めることで、初期費用0円にしています。
- ライトプラン:月額29,800円(税込)
- 初期費用0円
- 独自ドメイン・サーバー費用込み(別途のお手続きや支払いは不要です)
- スマホ最適化、予約導線の設定まで含みます
- 初期費用0円のため、最低契約期間は24ヶ月とさせていただいています
上位プランでは、Googleビジネスプロフィールの運用や複数プラットフォームへの情報一元配信、ブログ・お知らせの定期更新、プロカメラマンの撮影なども含みます。プランごとの内容は 飲食店のホームページ制作・運用 のページに全部書いてあります。
24ヶ月という条件を、隠さず書く理由
初期費用0円は、費用が消えたわけではありません。制作にかかる分を月額に分散してお預かりしているので、最低契約期間を24ヶ月とさせていただいています。ここを小さい字で書く会社にはなりたくないので、はっきり書きます。
そのうえで申し上げると、ホームページは2年かけて育てるものです。公開した月に結果が出るものではなく、更新を重ねて、情報が整って、検索や地図に評価されていく。24ヶ月というのは、私たちにとっては「そのくらいは伴走させてください」という期間でもあります。
第6章でお伝えした計算に戻れば、月額29,800円は「1日1組が自社経由に置き換われば釣り合うかどうか」という規模の話です。ご自身の請求書の数字で、一度計算してみてください。金額の相場観そのものは 飲食店ホームページの費用相場 に整理しています。
18. よくあるご質問
Q. グルメサイトの掲載は、やめたほうがいいですか?
やめないでください。 少なくとも、いきなりは。媒体は「まだ店名を知らない人」と出会える貴重な場所で、その力は自社サイトでは代替できません。自社経由の予約が実際に積み上がってきたことを数字で確認してから、配分を少しずつ変える。これが安全な順序です。当社も各種グルメサイトの更新代行をしており、併用を前提に設計しています。
Q. SNSをやっていれば、ホームページは要らないのでは?
SNSは「思い出してもらう」ことにとても強いのですが、投稿は流れていきます。半年前の投稿から営業時間を確認する人はいません。流す場所と、置いておく場所は役割が違います。 SNSで興味を持った人が最後に確認しにくる場所として、自分のドメインがあると効きます。
Q. Googleビジネスプロフィールだけでは足りませんか?
とても重要ですし、まず最初に整えるべきものです。ただ、あそこは項目が決まった枠です。宴会プランの詳細も、店の考え方も、書ききれません。そして「ウェブサイト」欄に入れるURLが自店ドメインかどうかで、信用の材料の数が変わります。両方あって、初めて噛み合います。
Q. 無料でホームページが作れるサービスもありますが?
作ること自体はできます。ただ、多くの場合、URLがそのサービスの名前を含んだものになります。それは「自分の土地」ではなく、また区画を借りている状態です。この記事でお伝えしたかったのは、ページを持つことではなく、ドメインを持つことの価値でした。そこだけは確認してからお選びください。
Q. どのくらいで効果が出ますか?
検索やGoogleマップでの見え方は、数ヶ月かけて育っていきます。 一方で、予約導線の分かりやすさや、宴会の問い合わせのしやすさは、公開直後から変わります。すぐ効くところと、時間がかかるところがある、と考えてください。
Q. パソコンが苦手なのですが、更新できますか?
当社の場合、原稿作成も写真の選定も更新作業もこちらで代行します。オーナー様は「これを載せたい」とご連絡いただくだけです。大事なのは自分で作れるかどうかではなく、更新が止まらない形かどうかです。
Q. すでにホームページがありますが、何年も更新していません。
その状態は、正直に申し上げると危ういです。古い営業時間や終わったフェアが載ったままのページは、見た方に不安を与えます。ただ、ドメインをすでにお持ちなら、いちばん大事なものは持っています。 建物を建て直せば済む話です。ドメインを引き継いだままの作り替えもできます。
Q. 地方の小さな店ですが、意味はありますか?
あります。むしろ地方のほうが、店名で検索される割合が高い傾向があります。地域で名前が知られているお店ほど、指名検索の受け皿がないことの損失は大きくなります。打ち合わせも制作もオンラインで完結するので、全国どちらでも対応しています。
19. まとめ――問いは「ホームページが要るか」ではなく「自分の土地を持つか」
最後に、要点をもう一度置きます。
- 「グルメサイトがあるから要らない」は半分正しい。 新規と出会う力は媒体のほうが強く、そこは素直に使うべきです。
- 不要と言われる3つの理由(媒体・SNS・Googleビジネスプロフィール)は、どれも事実。 ただし3つとも「他人の場所を借りている」という同じ弱点を持っています。
- 危ういのは残りの半分。 店名で調べた人の受け皿がないと、払わなくてよかった手数料を払い続けることになります。
- ホームページの本体は、デザインではなく独自ドメイン。 建物は建て替えられますが、土地は残ります。
- 費用は、売上ではなく粗利で見る。 変動費(媒体)と固定費(自社)の配分の話として考えると、判断がぶれません。
- 媒体には掲載ルールという枠がある。 情報量を店が決められる場所が、どこかに1つ必要です。
- AI は一次情報を探している。 何十媒体に重複した情報ではなく、店自身が公式に出している場所――つまり自店ドメインが、その一次情報にあたります。
- 地図検索では、情報の整合性が信用になる。 自店ドメインは「正解はここ」という基準点になります。
- 同じ1本のドメインが、採用の土台にもなる。 スタッフ一人ひとりにお店のメールアドレスを渡せて、はじめて採用の土台に立てます。Google 自身が事業者に独自ドメインとそのドメインでのメール利用を勧め始めているのも、同じ方向の変化です。
- 今は要らないお店もある。 特に、更新する体制がないなら作らないほうがいい。ただしドメインだけは早めに押さえる価値があります。
- 結論は併用。 入口は媒体、受け皿は自社サイト、再来店は台帳。媒体は入口として使い、情報の出どころは自分で持つ。
飲食店の集客は、どこか一箇所が正解という時代ではなくなりました。媒体も、地図も、SNSも、AIも、それぞれの場所でお客さまがお店を探しています。全部に出ていくのは大変です。だからこそ、自分の土地を1つ持っておいて、そこから各所に情報を配っていくという形が、いちばん無理がないと私は思っています。
その土地の名前が、独自ドメインです。
最後に、今日やれることを3つだけ
読み終わって「なるほど」で終わってしまうのが、いちばんもったいない。5分でできることだけ置いておきます。
- スマホで、自分の店の名前を検索してください。 いちばん上に出てくるのは、あなたの店の言葉ですか。それとも、他社のページですか。
- Googleビジネスプロフィールの「ウェブサイト」欄を見てください。 そこに入っているURLは、あなたの店のものですか。営業時間は、今のものですか。
- お店の名前でドメインが空いているか、調べてみてください。 建てるのは後でいい。土地の名義だけは、早い者勝ちです。
3つとも、お金はかかりません。かかるのは5分だけです。
そして、いちばん言いたかったこと
あなたは、物件を決めるときに悩みました。皿を選ぶときに悩みました。看板の書体で悩んだかもしれません。全部、自分の名前で勝負するための決断でした。
ウェブでも、同じことをしていいはずです。
〇〇〇.com という、たった一行の住所。そこにお店の名前が入るだけで、お客さまも、AIも、Googleも、応募してくる若い子も、取引先も、銀行も、全員が同じ場所を見に来るようになります。 そこに書いてあることが、あなたの店の「正解」になります。
他人の土俵の上で、点数を競い続けるのも一つの戦い方です。私はそれを否定しません。当社はその土俵での戦い方も代行しています。
ただ、自分の名前を掲げた土俵を、1つは持っていてほしい。 20年やってきたお店なら、なおさらです。その20年を、あなた自身の言葉で語れる場所が、まだどこにもないのだとしたら、それはあまりにもったいない。
暖簾を上げたときのことを、思い出してみてください。あのとき決めたのは、「自分の名前で勝負する」ということだったはずです。ウェブの上にも、その暖簾を上げましょう。
㈱デリシャスノーツでは、飲食店専門のウェブ集客支援として、累計1,000店舗以上のお店に携わってきました。独自ドメインでのホームページの制作・運用から、各種グルメサイトの更新代行、Googleビジネスプロフィールの運用まで、窓口ひとつでご相談いただけます。
「うちの店の場合はどうなのか、一度見てほしい」というご相談は、お問い合わせフォームよりお寄せください。現在のページや検索での見え方を拝見したうえで、優先順位をご提案します。ご相談は無料です。「今のホームページを見てほしい」だけでも歓迎します。
サービスの詳細は 飲食店のホームページ制作・運用 をご覧ください。
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